表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/176

67話 親友と学食で恋バナ?

 

 大食堂はいわゆるシッティング・ビュッフェ形式だ。


 俺は料理が並べられたテーブルへ向かい、適当な料理を取って空いている席に座る。少し遅れてトルティッサも俺の向かいに座って口を開く。


「実は、大食堂で食べるのは初めてなんだ。なんだか新鮮な気持ちになれるね」


「……そうか? 良かったな」


 俺は早く食事を終わらせてしまおうと、トルティッサに短く答えて、パクパクと食事を口に運ぶ。


 それにしても、なんだかいつもよりも妙に周りから視線を感じる。ルビーと食べてるときは、視線が気になる……なんてことはなかったのだが。


 食べる速度を緩めて、少し周囲の様子を探る……って言うか、ぶっちゃけ周りの会話を盗み聞きする。


「見て。トルティッサ様が大食堂にいらっしゃるなんて……」


「ああ……やっぱり素敵ねぇ。大食堂にいらっしゃっても目立つわねぇ」


 ――ああ、なんだ。トルティッサのファンが騒いでるのか。


 と、思ったのも束の間、


「まあ! 見て! 一緒にお食事されている方、アダム様じゃない!?」


「やだ! あのお二人が? いつの間にそんなご関係に?」


「え!? 本当だわ。どうして? アダム様、今日はあの女と一緒じゃないの?」


「ねぇ……もしかして別れたんじゃないかしら?」



 奔放に繰り広げられる女子会トークに一瞬思考がついていかない。……何を話しているんだ? こいつらは?


「おい、トルティッサ。お前、やっぱりあっちに行け。お前といると女子に観察されて食事がし辛い」


 俺はトルティッサに薄情な言葉を投げ掛ける。


「おやおや、アダム君。君は何を言っているのかな? 女子に見られるなんて名誉じゃないか」


 トルティッサが全く本気にせずに微笑む。……まったく、コイツの鈍感力はすげーな。


「そんなこと思うの、お前だけだろ?」


 俺がそう言うと、トルティッサが何かを思いついた様にポンと手を叩いた。


「ああ、そう言えば君はいつもルビー嬢に守られていたからね。もしかすると、こういう視線に慣れていないのかい?」


「はぁ?」


 俺がいつルビーに守ってもらったってんだ? むしろ俺が守ってやる方が多いぞ。


 俺が怪訝な顔をしたのを見て、トルティッサが楽しそうに笑った。


「はっはっはっ、気付いていなかったのかい? キミに女子が近づこうとする度に、ルビー嬢はいつも周囲を威圧していただろうに」


 ――は? マジで? 知らんぞ、そんなこと。


 まだ怪訝な顔をしている俺にトルティッサが楽しそうに話す。


「イスカムル家の御令息に興味がない貴族の女子など居ないだろう? ましてやその容姿だ。キミに熱を上げている女子も多いと聞いているが? ルビー嬢もご苦労なことだ」


 ……ほほぅ。てーことは、あれか? もしかすると彼女を作ろうと思えば作れる環境ってことなの? ついに彼女いない歴に終止符?



 ――いやいや、違う! 冷静になれ! 俺! 


 学院に恋愛するために来たわけじゃねーだろが。


 学院に来た目的は「神の情報を集めること」「学院に保管されている魔石を見つけること」だ。この目的の達成に励まねばならぬ!


 ――いや、でも目的の魔石は学院内では無かったけど1個見つけたじゃん……。ちょっとは学院生活をエンジョイしてもいいんじゃないか?


 ――いやいや、まだ神の情報なんて少しも集まってないではないか! 一つ達成したからって油断は禁物だ!


 俺の中の悪魔的な俺と天使的な俺が喧嘩をし始める。


「ふむ。何か悩みがあるなら聞こうか? アダム君?」


 難しい顔で何かを考え込み始めた俺を見て、トルティッサが言う。


 ――いや、トルティッサと恋バナとかって……ねーわ。


「……何でもない」


 俺はそれだけ言うと、とりあえず考えるのを止めて急いで冷めかけた食事を口に運ぶ。



 ちょうどその時、落ち着いた低音ボイスが俺達に話し掛けてきた。


「隣、空いているかな?」







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ