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64話 石に外に出ろと説得する石

 

「すみません……やはり嫌だと言っています……」


 お友達のキューちゃんの説得でも『夜の雫』は首を縦に振らなかった。石だから首はねーけどな!! ……ああ、久しぶりに比喩を使いたくなったんだ。すまん。


「はぁ。そうか……」


 俺は溜息をついて答えた。


 魔石が皆、俺みたいに人化して自由に動き回れることに魅力を感じるって訳ではないってことか……。


 なんでだろうなぁ……。いや、俺だってそんな外で遊ぶの大好きウェーイってなパリピでは無いけどさ。


 こんな暗い所で(あ、キューちゃんの家を悪くいってしまった。すまん、キューちゃん)じっとしているよりは、自分の意志で自由に動けた方が良いと思うんだけどなあ。


 まあ、考え方は人それぞれ……いや、石それぞれなのか。


 そこまで考えたところで、ハッとあることに気付く。


「……なぁ、ルビー。もしかしてお前も本当は人化なんてしたくなかったのか?」


 そういえばルビーは俺が怒りに任せて、無理やり人化したようなもんだった……。本人(いや本石か?)としては決して望んで人化した訳ではない。


「え?」


 急に話を振られてルビーが少し驚いたような顔をした。


「……それは……その……はじめは戸惑いましたが……」


 ルビーがしどろもどろに答える。


 ああ、やっぱり嫌だったのか……。


「……そっか。すまなかった」


 俺は素直に謝る。


 するとルビーが、ハッとした顔をして言い直した。


「いえ! 違いますよ? むしろ今は感謝しています! 人間の言いなりになってただ殺戮を繰り返すだけだった私に、アダマント様は『自由』と『新しい生き方』を教えてくださいましたから!!」


 ルビーは力強くそう言い切った。


 そんな風に言い切られて、俺もハッとしてルビーを見つめる。……こいつ、そんな風に思っててくれたんだ。


 俺に見つめられていると気付いたルビーは、急にカァっと頬を赤くして俯いた――。


 あれ? なんか……かわいいとこあるじゃん。


 俺はそんなことを思いながら、口を開いた。


「……そっか。それが聞けて良かったよ。ありがとな、ルビー」


 俺の言葉にルビーはますます顔を赤くした。っつーか、石も赤面するんだな。


「……いえ。恐縮です……」


 消えそうなくらいの小さな声でルビーが呟いた。


「ま、コイツは明確に嫌だって言ってるし、無理強いするのも気が進まないしなぁ。コイツを人化させるのは諦めるかな」


 俺は気を取り直して、キューちゃんとルビーにそう伝える。


 せっかく仲間が増えると思ったんだがな……。残念だが、仕方ねーか。


「すみません……」


 キューちゃんは尻尾をキュルンと垂らして、申し訳なさそうに言った。



「アダマント様……。最後に私が『夜の雫』を説得してみてもよろしいでしょうか? せっかく人化できるチャンスなのですから、似た様な立場として私からもあの石に話してあげたいです」


 それまで俯いていたルビーが急に顔を上げて、熱っぽくそう言った。俺を見つめる目は真剣だった。


「……ああ、別に構わないけど」


『夜の雫』は頑なそうだから、ルビーが説得しても無理だろうと思う。が、ダメ元で最後に任せてみるのもアリかとも思い、俺はルビーに許可を出す。


「ありがとうございます」


 ルビーは一礼すると、すぐに『夜の雫』の近くへ行き、その青い魔石に静かに手を置いた。青い魔石が心なしか少し戸惑うように光を明滅させたように見えた。


 暗い洞窟の中で、ルビーの赤い髪と赤い瞳が青い石の発するほのかな光に照らされて、幻想的に輝いている。


 俺はその美しい情景に目を奪われ、思わず息をのんだ――。








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