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61話 収集がつかないぜ! 任せたキューちゃん!

 


「……あの。アダム様? これは一体、どういうことなのでしょうか……」


 ルビーが恐る恐る、といった感じで俺に話し掛けてきた。


「ああ、えっと。長くなるからあとから説明するけど、この子はキューちゃんって言うんだ。昔、俺と一緒に生活してたんだ」


「なるほど、同居人……ですか?」


「うーん。どっちかって言うと子供、かな?」


「はい!」


 キューちゃんが俺の言葉に嬉しそうに返事をする。ルビーは面食らったように呟いた。


「……ドラコーヌが、子供?」



 しかし、ルビーはすぐに気を取り直してキューちゃんに挨拶をする。さすが俺の部下だ。切り替えが早い。


「お初にお目に掛かります。キューチャン様。わたくしはアダマント様の部下でルビーと申します」


 おお、ルビー。キューちゃんの『ちゃん』は名前じゃないぞ……敬称だぞ。その呼び方ではまるで『さかなクンさん』状態じゃねーか……と、俺は思ったが、まあ面倒くさいからそのままでいいか。


 キューちゃんはルビーの近くに顔を寄せて言った。


「ええ、こちらこそよろしくお願いいたします。あなたも父上と同じように魔石から人の姿になっているのですね」


「え、ええ。どうしてわかるのでしょうか?」


 ルビーが驚いた様にキューちゃんに尋ねた。


「……何となくです。自分でもよく分かりませんが」


 その時、また別の声が会話に割って入った。



「アダム君……取り込み中にすまないが……」



 トルティッサの声だ。



 ――あ。


 俺とルビーは硬直する。


 ……やべー。こいつらが居たことすっかり忘れてた。




「……君、一体何者なのかな?」



 振り返ると、トルティッサとともに、魔石クラブの面々が怯えた様な顔で俺を見つめていた。


 ――や、やばい。この状況をどう誤魔化したらいいんだ……。


 そして魔の悪いコトに、更に森の方から声がする。


「た、隊長! この動物がなぜか我々を助けて、盗賊を全滅させてくれまして……」


 森の中から、ぞろぞろと警備兵達がやってきた。……ヴァナルカンドと一緒に。


 ヴァナルカンドは俺の許に駆け寄ってくると、しっぽを振りながら「くーん……くーん……」と巨体に似合わぬ甘えた声で、俺に体を摺り寄せてきた。


 ――ヴァナルカンド! 皆に見つかるなと言ったのに。 ……いや。今の俺が言えるコトじゃないか。やべーなコレ。


 俺は肩を竦めて、ヴァナルカンドを撫でてやった。


「そ、その……犬?は……アダム君の飼い犬?なのかい?」


 トルティッサが狼狽したように疑問形がやけに多い質問をしてくる。


「うーん……困ったな」


 俺がボソリと呟くと、キューちゃんが俺に顔を寄せて言った。


「父上……お困りなのですか? 宜しければ、この者達を皆殺しにしましょうか?」


 ――キューちゃん……。


「いや、殺しちゃダメだ。――参ったな。どこまで聞かれてしまったんだ?」


「恐らく、ほぼ……。不手際でした……申し訳ございません」


 俺のぼやきを聞いてルビーが謝る。


「なるほど。では、記憶操作をいたしましょうか?」


 さらっとキューちゃんが言った言葉に俺はピクリと反応する。


「……んなことできるのか?」


「ええ。私の存在を忘れさせて前後の記憶を改竄するだけですが。それで宜しければ」


 なるほど。まあ、他に誤魔化す方法もないしな……。


「よし。それで頼む! キューちゃん」


 俺はキューちゃんにそう言ってから、魔石クラブメンバーたちに向かって謝る。


「すみません。先生、先輩方。……あと、トルティッサも。皆さんの記憶少し変えさせていただきます」


「ア、アダム君? それは一体どういう……」


 アルヌ先生がそう言いかけた途端、急にぼんやりした表情になり言葉が止まった。よく見れば、そこにいる魔石クラブメンバー、警備兵達が全員同じような表情になっていた。


「キューちゃんが何かやっているのか?」


 俺は不思議に思って、キューちゃんの方を振り向く。


「はい」


 返事をしたキューちゃんの真紅の瞳が、赤い光を帯びていた。


 人間達は皆、魅入られた様にキューちゃんの瞳を見つめている。……おお、なんか催眠術みたいなもんか?



 ふっと、キューちゃんの瞳の光が消えた。その途端、人間達はパタリとその場に倒れ込んだ。


「うぉい。大丈夫かよ……コレ?」


 俺が思わず呟くと、キューちゃんが答えた。


「大丈夫です。記憶を弄った後は、皆このように睡眠状態になるのです」


「ふーん」


 次にルビーが口を開いた。


「あの、キューチャン様。今のは何なのでしょうか? 精霊が動いていないところを見ると魔法ではないようですが……」


「ふーむ。考えたことも無いので、そう聞かれると困りますが……特技、みたいなものでしょうか? いつの間にか出来るようになっていました」


 ――特技、ね。……さすが、伝説のドラコーヌだ。なんて都合のいい能力……ゲフンゲフン。



 ……いや、それよりも。本当に立派になったな、キューちゃん。あのセリフ言ってもいいかな? いいよね? 俺には言う資格があるはず……。




 ――キューちゃんはワシが育てた。キリッ







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