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60話 再会

 

 ……まさか、キューちゃん?


 ドラコーヌは俺の姿を追いかけて、後ろを振り向く。


 俺はまじまじとそのドラコーヌの顔や体を眺める。


 ……いや、しかし。あの頃のかわいいキューちゃんの面影がどこにも無いんだけど……。


 あの丸くてかわいいつぶらな瞳がこの凶悪そうな真紅の眼光鋭い目になっちゃったの? あの滑らかですべすべした皮膚もこんなにゴツゴツのギザギザになっちゃったの?


 やっぱり、別人……いや別トカゲだろうか?


 余りの見た目の違いに、俺は自分の直感にイマイチ自信が持てない。


 俺が何も攻撃せずジロジロ見ているからだろうか? ドラコーヌは少し戸惑ったように少しずつ後ずさる。


 あ! そうだ、アレをやってみよう!! 俺はふと閃いて、ドラコーヌに見え易いように頭上に高く手を掲げた。



 ドラコーヌは少しピクっとすると、警戒するような態勢を取って更に後ずさっていく。


 俺は掌にサラマを少し呼び寄せて小さな炎を作った。


 そして、掌を閉じたり開いたりして光の合図を送ってみる。


『開くー閉じる開くー閉じる開く閉じる開くー閉じる開くー閉じる開く』と一定のリズムで掌を開いたり閉じたりを繰り返す。



『ピカー・ピカー・ピカ・ピカー・ピカー・ピカ』

『ピカー・ピカー・ピカ・ピカー・ピカー・ピカ』

『ピカー・ピカー・ピカ・ピカー・ピカー・ピカ』


 キューちゃんだったら……何の合図か分かるだろ? 俺は祈る様にドラコーヌを見つめる。



 すると、ドラコーヌが後ずさりを止めて俺の掌をじっと見つめた。



『ピカー・ピカー・ピカ・ピカー・ピカー・ピカ(こっちにおいで)』

『ピカー・ピカー・ピカ・ピカー・ピカー・ピカ(こっちにおいで)』

『ピカー・ピカー・ピカ・ピカー・ピカー・ピカ(こっちにおいで)』



 ……前も言ったかもしれんが、ピカ〇ュウじゃないぞ。




 その時、ドラコーヌが「ハッ」と何かに気付いたような顔をして、ゆっくりと俺の側へ近寄ってきた。


 ――やっぱり!! 


「……キューちゃん!! やっぱりお前、キューちゃんなのか!?」


 俺は嬉しくて思わず大声で叫んでしまった。


 ドラコーヌが俺の目の前に首を下げて、俺の顔を覗き込む。


「キュー……とお答えしたいところですが、実は私も言葉が話せまして……」


 ドラコーヌが突然流暢な人間の言葉で話しかけてきた。



「お、おお。立派になったな、キューちゃん……」


 俺は想定外なキューちゃんの対応に、一瞬戸惑いつつ答える。するとキューちゃんも戸惑うように瞳を揺らして口を開いた。


「……もしかすると、あなたは……父上なのでしょうか? ……黒い石の……」


 キューちゃんがジィっと俺をその真紅の瞳で見つめながら訊いてくる。


「あ、ああ! そっか。俺もだいぶ姿が変わってるからな……。そうだよ! 俺はお前と一緒にいた黒い石だよ!」


 俺がそう言った途端、キューちゃんが前足の膝を折る様に俺の前に座り込み、真紅の瞳をウルウルさせながら、口を開く。


「や、やはり……!! ようやく……ようやく父上に再会できました……!! 父上とはぐれてしまってからずっと……ずっとお探ししていたのです!! まさか、人のお姿になっておられるとは!!」


 あ……そっか。ドラコーヌが魔石を集めてたって話は、もしかしてキューちゃんが俺を探してくれてたってことなのか……。


「ハハ……信じられねー。最高に嬉しいよ……生きててくれたんだな!! キューちゃん!!」


 不覚にも目頭が熱くなる。俺は、ぎゅうっとキューちゃんの顔を抱き締めた。


「父上とは気づかず、攻撃をしてしまうとは!! 申し訳ございませんでした……」


 キューちゃんが俺に頭を擦りつけるように謝る。


「いや、俺だって。気付かないでキューちゃんの事傷つけちゃうところだったよ……。お互い様だ」


 俺はキューちゃんの頭を優しく撫でる。人の姿になったおかげで、ちゃんとキューちゃんをかわいがることが出来る!! 俺は嬉しくて嬉しくて悶絶しそうだった。


「……ところで、その。改めてお伺いしたいのですが、キューちゃんというのは……やはり私の事なのでしょうか?」


 キューちゃんが少しして、ちょっとモジモジしながら俺に聞いてきた。


「ん? ああ、そうか! 俺が勝手に心の中で呼んでいただけだから、キューちゃんは知らないに決まっているよな……。 そうそう、お前が小さい頃、ずっとお前の事キューちゃんって呼んでいたんだ」


「そう……なのですか」


 キューちゃんが震える声で呟いた。


「あれ? この名前、嫌か?」


 俺が心配になって聞き返すと、キューちゃんはぶんぶんと首を振った。


「いえ! 違うんです! 父上が、あの頃の私に名前まで付けてくれていたんだと思ったら、なんだかとても嬉しくなってきてしまいまして……」


 キューちゃんが、赤い瞳をパチパチと瞬かせた――。











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