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55話 ヤジリカヤのドラコーヌ伝説

 

 まだ人間が火を知らなかった、むかしむかしのお話です。


 ヤジリカヤ山の中腹にある洞窟に、一匹のドラコーヌが住んでいました。


 ドラコーヌは大きな翼を持っており、その翼で世界中に至る所へ飛んでいくことが出来ました。


 ドラコーヌはいつも大きな翼を広げて、ヤジリカヤ山から色々な所へ飛んでいきました。


 そしてヤジリカヤ山へ帰ってくるときには必ず、綺麗な石を抱えて戻って来るのでした


 ドラコーヌの住む洞窟には、そうやって長い年月をかけてドラコーヌが世界中から集めてきた綺麗な石がたくさん貯め込まれていました。


 そんなある日のことです。


 ヤジリカヤ山の麓の村に住むみなしごの少女が、山に薬草を取りに行きました。村の人に薬草と食べ物を交換してもらおうと思ったのです。


 しかしその日、少女はなかなか薬草を集めることが出来ず、いつもは行かないような山の奥まで入り込んでしまいました。


 そして、気付いた時には山の中で迷子になってしまったのです。


 少女は日の暮れかけた山道を途方に暮れながら歩いていました。……しかし、ふと前を見ると、遠く離れた場所に明るく輝く光が見えました。


 お月様の光だろうか? それともお星様の光? 不思議に思った少女は光の方向へ歩いていきました。


 光の許へと辿り着いた少女が見たのは、月の光でも星の光でもありませんでした。それは洞窟の中に積み重なったたくさんの綺麗な石が発する光でした。


 少女は不思議な石の光に魅入られるように、洞窟へ足を踏み入れました。


 ――その時、空から大きなドラコーヌが洞窟に舞い降りてきたのです。


 少女は初めて見るドラコーヌに驚きましたが、ドラコーヌも初めて見る少女に驚いていました。


 少女とドラコーヌはしばらくお互いを見つめあっていましたが、少女がふとドラコーヌの足元を見ると、ドラコーヌが怪我をしていることに気が付きました。


 心優しい少女は、一生懸命集めた薬草をすべて使ってドラコーヌの傷の手当てをしてあげました。


 そして、ドラコーヌも言葉は通じませんでしたが、少女が傷の手当てをしてくれたことを理解しました。


 こうして二人は友達になったのでした。


 ドラコーヌは少女のためにどこかから食べ物を運んで来てくれるようになりました。少女はお礼にドラコーヌに人間の言葉を教えてあげました。


 少女はしばらくドラコーヌの洞窟に寝泊まりしながら、薬草を集めました。薬草が駕籠いっぱいになる頃、少女はドラコーヌに村へ戻ることを告げました。


 ドラコーヌは少女と友達になった証に、綺麗な石を一つ少女にプレゼントしました。そして更にその石から『火』を取り出す方法を教えたのです。


 少女はドラコーヌにお礼を言って、ドラコーヌに教えてもらった通りに山を下り村に帰りました。


 しかし少女が村に帰ってみると、村の様子は大きく変わり、少女の知っている村人も誰一人居なくなっていました。


 少女がヤジリカヤ山のドラコーヌの洞窟に居る間に、地上では何十年も経ってしまっていたのです。


 村人たちは少女の話を聞いて驚きましたが、少女の持ってきた綺麗な石と、綺麗な石から取り出せる『火』を見て、少女の話を信じました。


『火』の力のお陰で少女の村は周りの村を従え、どんどん大きくなりました。



 大きくなった村の村人たちは『火』を出せる綺麗な石がもっと欲しくなりました。


 ある日ついに、少女が止めるのも聞かずに大勢の村人がヤジリカヤ山のドラコーヌの洞窟に向かいました。


 そして村人達は、ドラコーヌを殺して綺麗な石を全て手に入れようと、ドラコーヌの洞窟に矢を打ち込みました。


 ドラコーヌは少女に習った人間の言葉で村人を説得しようとしましたが、村人の放った矢が一本、ドラコーヌの背中の逆鱗に触れてしまいました。


 逆鱗に触れられたドラコーヌは我を失い、ヤジリカヤ山に入ってきた村人を全員殺してしまいました。


 そしてドラコーヌの激しい怒りによってヤジリカヤ山は噴火し、洞窟は壊れ、麓の村は溶岩に飲まれてしまいました。


 そしてすべてを壊したドラコーヌはヤジリカヤ山の中腹から飛び立ち、頂上に雲を呼んで姿を隠してしまいました。


 それ以来、ヤジリカヤ山の頂上はいつも雲に隠されるようになったのでした。



 ~おわり~






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