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6話 流れ流れて……生命との邂逅

 


 気付くと俺はそれまで認知したことがないほどの大量の水に囲まれた場所まで流されてきていた。


 役に立つか分らん前世知識に当てはめて考えてみると、おそらくここは海なのだろうとは思う。


 ――周囲はかなりの範囲が全て水で占められていた。


 そして、なによりも驚いたのは地上では見られなかった、あの虫達とは違う現実感のある多様な生物たちが水中を泳ぎまわっている様子であった。


 海の中にはこんなに生物がいたのか……


 俺は新しい観察対象に心が躍った。これでまたしばらくは退屈せずに済む。一体どれだけの種類の生物がこの海の中に居るのだろう。


 この世界の地上は生物の住めない場所なのかもしれない。けれども、海の中ではこんなにも生物が繁栄していたとは。やっぱりここは俺の居た世界とは違う世界のようだ。


 こうなってくると、地上ではなく海の中に人間的な知的生物が居るのだろうか? と気になってくる。もし居るならばいつか出会ってみたいもんだなぁ……


 俺はキラキラと輝く海面を見上げながら、しばらくは生物たちの乱舞に心を奪われていた。


 どのくらいそうしていただろうか、既に時間感覚という概念すら忘れそうになった頃、海面が随分近くまで来ていることにふと気が付いた。


 気が付いてからはあっという間だった。そのまま水位はどんどん下がり続け、俺はまた地上に帰ってきていた。


 いや、歩いたりしたわけじゃないよ。海面が下がった結果、俺のいる場所が陸地になったってことね。


 まーた地上に戻ってきちゃったなぁ。と少しがっかりする。



 だって、海の中の方が生物がたくさんいて退屈しないんだもん。地上は生物って言ったらあの虫みたいなもんしかいないし……なぁ……。



 ……なんて、考えていた俺の前をトカゲのような生物が悠然と横切っていた――。


 のっしのっしと四本の足で地面を歩く姿は、まさにトカゲだ。トカゲ以外の何物でもない。



 何コイツ!? 初めて見たわ!! 地上にも虫以外の生物がいるんじゃん!! 


 俺は新しい生物の登場に一気にテンションを上げた。


 そしてトカゲはそんな俺に気付く素振りも無く、ゆっくりと俺のいる場所から離れていこうとしていた。……マズい!! 逃がしてなるものか!!


 俺はトカゲが少しでもこの場に留まってくれないか、ダメ元で体を光らせてみた。


 強く、強く、強く、強く、強く、光ってから、弱く、弱く、弱く。また強く、強く、強く……。


 トカゲがどうやら俺の光に気付いたようだ。ふと、こちらを見て足を止め、その後ゆっくりと近付いてくる。


 おお! もしかして上手くいった!?


 トカゲは俺の近くに来ると、しばらく光る俺を観察するとおもむろに俺の傍らに体を横たえた。


 おお? なんかよく分からんが、気に入ってくれたのかな? もしかしてここに住んでくれるのかな??


 俺は初めて生き物と意思疎通ができたような気がして、嬉しさで小躍りしそうだった。いや、石だから小躍りとかできないんだけどね。


 しかし、これでしばらくはこのトカゲの観察で暇を持て余すことはないだろう!! ひゃっほい。



 ……なーんて、思っていた時期が私にもありました。



 俺の期待の高まりとは裏腹に、トカゲはしばらくするとおもむろに立ち上がり、あっさりと俺の前から姿を消したのだった。


 ……うう、トカゲ……カムバーーック!!!



 ……また退屈な生活が始まると思うと嫌になる。俺は溜息を付いて俯いた。いや、比喩だよ比喩。実際にはそのようなイメージで俺は自分の認知方向を足元に向けたってワケ。



 その時、俺の目に(比喩だってば)何やら白い丸みを帯びた物体が映った(比喩だってば)。



 ……なんだ、これ? ……たまご?



 !!



 卵だ! 卵!! あのトカゲのか!? 俺の足元に卵産んでいきやがったのか!?



 うおー。なんだろう、この暖かな気持ち……。無事生まれてくれるといいなぁ。俺はワクワクしながら、卵の観察を始めたのだった――。











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