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5話 石だから基本暇なのは否めない

 


 ――ええ。まあ実際? 地中に居た時よりも観察できるものは増えましたよ。



 火山が噴火する様子も見られるし、マグマがすげー勢いで流れていくのも見られるし、雲が動いているところも見られるし。ああ、そう言えば、時々隕石らしきモノが空から降ってくるのも見ることが出来た。


 見るっつっても、あれだよ。例の頭に浮かぶイメージを便宜的に『見る』と言ってるんだからね。


 なんか上野の国立科〇博物館とかで見たことあるなぁ、こういう映像。うろ覚えだけど。まさかライブで見られるなんて、人生、いや石生何が起きるか分らんね。


 ……ああ、でもね。そんな刺激的な映像も、ずーーーーーっと見続けていると、飽きるんだわ、これが。もう既にね、びっくりするぐらい飽きてますから。俺。



 もう飽き過ぎて何もやることないから、唐突ですが高速貧乏ゆすりに挑戦してます。



 え? なんでかって? いやー実は人間の時も癖だったんだよね。なんか、落ち着くじゃん。貧乏ゆすり。


 って言うのは、半分本当で半分冗談なんだけど……。


 実は無意識にいつもの癖で、貧乏ゆすりをするみたいなイメージで体を震わせていたみたいなんだわ、俺。ここはホント。


 いや、石だから貧乏ゆすりになってんのかは分からないけど。何となく体を震わすイメージ的な? 


 そしたらなんと! ぼやーっと俺の体が光を発し始めたのだ。


 おや? と思って、一度貧乏ゆすりを止めてみる。すると、光はすぅっと消えていく。


 まさか! と思って、もう一度貧乏ゆすりをしてみる。すると、ぼやーっと俺の体が発光する。


 ほら、絶対貧乏ゆすりで光ってるでしょ? 大発見! 自家発電、すごい。そして高速で震わすほど、光も強い。キタコレ。原理はよく分からん。自己励起的な?


 俺は貧乏ゆすりで光を発する遊びで、しばらく暇を持て余すことはなくなった。


 そして更に! そんな感じで光ったり光らなかったりして遊んでいると、ある時から変な虫のようなモノが光る俺の周りに集まってくるようになった。半透明の虫たちがウニャウニャと俺の周りに漂うように、集まってくる。


 なんだろ、コレ? 動き方は何となく俺が吸い込んでいるウニャウニャに似ているが、確実に意思を持って俺の周りに集まってきているような気がする……。その証拠に周りを見回しても、俺の周辺にだけこの虫が密集している。


 どうやら光り方を強くするとより多く集まってくるようだ。何なんだろ? 街灯に蛾が集まるようなもんか? これもまたよく分からんが、一応そいつらを観察するのも暇つぶしになるので、時々集めてみることにした。


 いや、けどね。それもずーっとやってると飽きるんだよね。また俺、飽きてます。もう光るのも飽きたし、虫を集めるのも飽きたし……。


 いつの間にか周囲の風景も変化していた。隕石があまり見られなくなり、雲が晴れ太陽が顔を出すようになった。


 そしてしばらくすると今度は雪が降り始め、周囲が氷に覆われ始めた。おお、この世界にも季節があるんだなぁ……なんて、考えながら俺は退屈な生活を送り続けていた。


 相変わらず、俺が光を出すと虫が寄ってきていたが、この虫たちもなんだか種類を増やして現在確認できるだけで4種類ぐらい寄ってくるようになっていた。4種類って言っても微妙に形が違うだけだけどね。


 ぼーっと虫を観察する生活を続けていたが、ある時ふと思いついてどのくらい光を強く光らせられるかをなんとなく試してみたくなった。


 思い立ったらすぐやってみる。なぜなら暇だから。


 俺は全身を震わすように体に力を入れる。いつものように俺の体が光り出し、虫たちがワラワラと寄ってきた。


 いつもならある程度光らせたら、この辺で飽きて光るのをやめるのだが、今日はどこまで光れるのかより一層力を込めて体を震わせ続ける。


 光量の増加とともに俺の周りには夥しい数の虫たちが集まってきていた。ウジャウジャしてる。割と気持ち悪い。


 しかしまだまだいけそうなので、更に光を強めていく。


 虫たちも今までどこに居たのかと思うほど、膨大な数がいつの間にか集まってきていた。


 うへー、キモイ。


 俺がそんなことを思っていた矢先のことだ。


 ――ビキッ!


 と、何かが軋む音が聞こえ、俺の体がフワッと持ち上がったような気がした。……いや、持ち上がったかと思ったのは一瞬だった。



 ――バキバキバキ!!!!



 激しい音が響き渡り、俺が居た地面が抉れて大地が大きく揺れた。



 地震か!?



 と思う間もなく、俺が居た場所に大量の水が流れ込んできた。俺はその激しい水流に巻き込まれてそのまま何処へともなく流されて……いや、転がされていった。



 それはあっという間の出来事だった――。











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