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41話 乱暴者と書いてあばれものと読む


長髪の男が俺の一撃で沈んだ。


「てめぇ!!」


浅黒い男が殺気立って剣を抜き、俺に突進してくる。


俺は馬車の屋根のひさしに手を掛け、クルリと逆上がりをする要領で馬車の上に跳ね上がり、その切っ先を躱す。


そのまま、屋根の上から飛び降りつつ浅黒い男の頭部に足蹴りを喰らわす。浅黒い男は一瞬で意識を失い、地面にどさりと倒れ込んだ。


俺は倒れた男の横に着地する。


残る一人の髭面の男は何が起きたか分からなかったのか、一瞬でやられた仲間二人を蒼白な顔で眺めていたが、ゆらりと立ち上がった俺に気付くと慌てて土下座をした。


「す、すまん! 調子に乗っちまった!! ゆ、許してくれ!!」


「許さねー」


俺はそう呟いて、驚愕する髭面の男の顔面に蹴りを入れようとした瞬間。


「やめろ!!」


と、また別の声が横やりを入れてきた……が、俺はお構いなしに髭の男を蹴り上げた。


髭の男は驚愕の表情を張り付けたままぶっ飛んでいき、木にぶつかってぐったりと地面に倒れ込んだ。


「やめろと言っただろうが! おい、こいつらを連行しろ!」


イラつきが治まり俺が振り返ると、そこには検問の兵士が10人ほど集まってきており、ルビーが困った顔をして立っていた。


――やべ、やり過ぎたかも……。



・・・・


・・・・




「おまえ達、商人だったのか……。目的地は?」


騒ぎを起こし、別室に連行された俺とルビーは検問の兵士に詰問されていた。


が、ルビーの提出したハッティルト帝国商人ギルド発行の売買許可証を見ると、目に見えて詰問の勢いが弱まった。


「はい。東のイスカムル領で商売をさせて頂こうと思っております」


ルビーの答えを聞いて、兵士はもう一度許可証に視線を落とす。


そして許可証を見るふりをしながら、時々ルビーの深淵にチラチラと視線を向けている様子が俺の場所からよく見えた……ああ、深淵に覗かれてしまった者がここにも一人……。


俺がジローっと兵士を見ていると、うっかり兵士と目が合う。兵士はスミマセンと言わんばかりに気まずそうな顔をして、再度許可証に視線を落として言った。


「う、うむ……許可証も問題ないようだし。元々あいつらがお前たちに絡んでたそうだからな。今回は不問にする。このまま通っていいが、帝国内に入ったらさっきみたいな騒ぎは起こすんじゃないぞ」



兵士はそう言うと、思いの外あっさりと俺達を通した。許可証の効果がデカかったのかな? いや、ルビーの深淵かな? それとも厄介払いかな?


まあ、いいか。それよりも……


「……お前、あんな許可証どうやって取ったんだ?」


俺は小声でルビーに話し掛ける。こんなに信用のありそうな証書を一日で取得できるわけなくない?


「ええ、少しお金を積みました」


ルビーがニッコリ笑って答える。誰に? どうやって? 裏ルート的な? 色々思う所はあったが、俺はなんだか怖くなったのでそれ以上詮索するのをやめた。


そしてまたルビーは軽快に馬車を走らせ始めた。




――しばらく馬車を走らせた後、ルビーが突如思い詰めた様に口を開いた。


「アダマント様……あの……ご相談がございまして……」


「なんだ?」


俺が返事をすると、ルビーは恐る恐ると言った感じで話し始める。


「その……ハッティルト帝国学院に潜入するにあたって……その……あの……」


なんだ?


「いいから言ってみろ」


俺はルビーを促す。コイツ、必要以上に俺を恐れているみたいで時々めんどくさいな。まあ、ぶっきらぼうにしか話せない俺も悪いんだろうが……。


「その、アダマント様のお名前についてなのですが……。帝国内でさすがにそのお名前を名乗るのは、余り宜しくないかと思いまして……大変恐縮なのですが、別の名を使われた方が宜しいかと……」


ムム……確かに!! 滅ぼされた国の名前の転校生なんて、めっちゃ目付けられちゃうじゃんか! 悪目立ち待ったなしだな。うーむ、お気に入りの名だが仕方あるまい。



「……それもそうだな。俺の事は……アダ……ム。アダムと呼んでもらおう」


よし! 元の名をちょっと残しつつ、『人類最初の男』の名前をつけるという厨二病的名付けの離れ業を秒速でやってのけたぜ。そこに痺れる! あこがれ……略)


ちなみに……『アダム』とは、ヘブライ語で「土」「人間」の2つの意味を持つ言葉に由来しており……(BY Wikipedia)。結構それっぽいっしょ? ヘブライ語とかちょーカッコいい。クール!


「は! 承知いたしました。アダム様」


ルビーは真面目な顔で答えたが、この名前の素晴らしさを本当に分かってんのかね? 小一時間問い詰めたいところだが、まあ良い。それについてはおいおい説明してやろう……。


俺は自分の名付けに満足して気分が良いので、それ以上は何も言わなかった。











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