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39話 進撃の肉食系女子


俺達はそのまますごい勢いで歩き続け、クーデターで混乱するハズル国をあっさり縦断し、ハッティルト帝国との国境に近づいていた。


国境に到着する手前の大きめの街についた時、ルビーがまた提案をした。


「ハッティルト帝国内は警備が厳重になります。怪しまれぬよう、この町で商人に変装して参りましょう」


確かに、俺達はアダマント国から出てきた時のままの姿をしており、薄汚れた布を巻き付けた即興の服とちぐはぐなブーツっぽい靴を履いたあからさまに怪しい風体ではあった。


「……変装するったって、服を買う金もねーだろ?」


俺がそう言うと、ルビーがおもむろに腰にぶら下げた大袋を持ち上げた。


「戦の後始末の時に、ハッティルト軍の軍資金を一部持って参りました。これである程度は買い揃えられるかと」


マジで!? いつの間にそんなの持ってきてたの!? ルビー恐ろしい子!!(白目)


「……よくやった」


それしか言えない。マジで。


「は! お褒め頂き光栄です」


ルビーが嬉しそうに頭を下げる。ちょ、だから! その体勢ダメって! 深淵が……略)


その後、ルビーは宿屋に部屋を取り、その一室に俺を入れて


「アダマント様はこちらでどうぞお寛ぎください」


と言うと、すぐに必要物資の買い出しに出掛けてしまった。 俺もお買い物に行きたい……と言う暇も無かった。



――残された俺は何をするでもなく、ちょこんと椅子に座る。


こういう時、何をしたらいいか分からないの……ずっと石だったしね。


俺がそのまままんじりともせず椅子に座っていると、突如“コンコン”と部屋の扉をノックする音が聞こえた。


――ルビーが帰ってきたのかな?


俺は少し緊張しながら、扉を開ける。


――扉の前に立っていたのはルビーではなかった。


「あらぁ! あらあら! まぁまぁ! やだぁ! あらあら!」


扉の前に立っていたのは、あらあらを繰り返す派手めな化粧のお姉さんだった。 


あれ? 俺デリ〇ルでも頼んだっけ? と思うほどの派手なお姉さん。それかキャバ嬢。夜の蝶的なアレ。絶対に肉食系女子。


お姉さんはあらあらまぁまぁを繰り返しながら、俺の姿を頭のてっぺんからつま先まで舐める様な目線でガン見する。


「……あの?」


俺が訝し気に呼び掛けると、お姉さんはウフフと笑って言った。


「あらまあ、ヤダわ! 私ったら! お客さんが想像以上に素敵だったから見惚れてしまったわ」


「……はぁ」


見惚れるってこういう感じだっけ!? と心の中がザワつく。


いや、褒めてもらったと思うんだけど、お姉さんの視線が強烈過ぎて素直に喜べない……。見惚れるって言うか……視姦! そう! まさに視姦! すげー威力だ! おらワクワク……しねーわ。


「えっと、私はネルロイド衣料品店のエルと言います。ルビーさんって方に頼まれて、あなたの服作りのために採寸をしに来ました……うふふ」


「採寸!?」


そして衣料品店!! まさかのカタギ!! デリ〇ル嬢じゃなかった!!


バカ! ルビーのバカ!! なんでこんな性的倒錯者みたいな人を俺のお部屋に派遣するの!? うふふが怖い!! ヤバいヤバい、チェンジ!!


「……ええと、結構で……」


「そうはいきませんわ!! もう前金を頂いてしまいましたし!!」


俺が閉めようとした扉に、すかさずエルねーさんがつま先を挟み込み、扉の隙間からグリグリと体を滑り込ませてくる。うぉ! 強制入室! 


「とにかく、採寸させていただきます」


部屋に入り込まれた俺はもう追い出すことは諦めた。こうなったらやることやって早く帰ってもらおう……。


「さ、その服を脱いでいただけますか?」


エルねーさんはニコニコしながら、自ら脱げと鬼畜の様な事を言ってくる。


いや、これ脱いだら全裸になっちゃうんですけど……。俺が躊躇しているとエルねーさんが追い打ちをかける。


「あら? お手伝いしましょうか?」


「いや、大丈夫です」


俺はなぜか敬語でお返事をし、急ぎつつも慎重に上だけ布を外し、余った部分を腰にギュッと巻き付け下半身の守りを強化する。いや、なんとなく。


「あらぁ、……やっぱり良い体してるわねぇ」


エルねーさんはそんなことを言いながら、俺の胸や肩を艶めかしく触りながらじっくりと採寸をしていく。


「やっぱり若い男の体はいいわぁ」


恍惚の表情を浮かべながら、ほぅと溜息を付いてエルねーさんが呟く。


……いや、本人の前で言う? それ。 



俺はその後30分ほど採寸をされた後、エルねーさんを見送ってベットに倒れ込んだ。


怖え! 肉食系女子! 魂喰われた気がする。 女っ気ない生活を送ってきた俺にはハードルが高すぎる……!! 


俺が精神的ダメージでぐったりしているところにルビーが大荷物を抱えて帰ってきた。


「アダマント様。ただいま戻りました!」


「……ああ」


俺はベットに突っ伏したまま答える。


「い、いかがいたしましたか!?」


ルビーが慌てて、俺の倒れ込むベッドの脇に駆け寄り、俺の様子を覗き込む。ぐお! 腕に乳が当たっとる! そして深淵が目の前に!! 


ヤバい。なんか前の人生よりも女の人に密着されることが多い気がする……。既に俺の前世の女性接触率を越えた予感……注:母親は除く。 


なぜ? WHY? 


なんだかますます眩暈を感じて、俺はしばらく起き上がれなかった――。








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