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4話 突然の引っ越し


それは本当に突然だったのだ――。


どのくらい時間が経ったのかは分からないが、その日も俺はずーっとウニャウニャの吸収を続けていた。もうほとんど意識しなくてもどんどんウニャウニャを吸収することが出来るようになっていた。もはやウニャウニャ吸収のプロである。


そして思った通り、ウニャウニャを吸収すればするほど、より広い範囲を知覚することが出来るようになっていた。やはりウニャウニャは何らかのチート成分なのであろう。俺はもはや適当に結論付ける。


そして前述したように、意識をしなくてもウニャウニャを吸い込めるようになったので、今度は広がった認知範囲内を探ったりしていた。いや、あまりにも暇なので。


しかしこの探索は結局、暇つぶしにもならなかった。いくら探っても俺の探れる範囲内は、自分がいる環境とあまり変わり映えのしない環境が広がっているだけのようだったから。


土の様なものと、所々にマグマの様なものと、所々に岩石の様なものと。俺は恐らく地中に居るのだろうと確信できたこと以外は取り立てて特筆すべきところも無かったのだ。


なので、いつしか周辺の探索にも飽きてしまった。


俺は、ほとんど眠っているような半覚醒状態……というか、簡単に言えば、ただぼーっとしばらく過ごしていた。


あまりに暇過ぎて、人間の頃に馬車馬のように働いていたことが嘘みたいだなぁ……なんて過去の思い出に浸ったりしていたのだった。



――突然の出来事は、俺がそんな哀愁に駆られているときに起こったのだった。


何の前触れもなく、爆音がして俺は下から突き上げられるような感覚を感じた。


ホワッツ!? 突然の衝撃に慌てて周辺の様子を探る……と、その時既にすごい勢いで上へ上へと持ち上げられていることが分かった――。



……あ、これ。もしかして、噴火か? 


足元の様子を知覚して、すぐにそう思う。石に足元があるのかは謎だが。


蠢くマグマがものすごい勢いで俺を押し上げている。……おぅ、よくよく見ると、足元だけでなく俺の体全体がマグマにがっつり浸かっているやんけ。けど、心配していたように特に溶けている様子もなく無事なようだ。


まあ、今の状況が無事と言えるのかどうなのかは謎だが……。とにかくすごい勢いで上昇し続けている。


そして、爆音。もう、爆音としか言いようがない。鼓膜があったら速攻破れていることうけあい。


……ってか、爆音? あれ? もしかして? 音が聞こえるようになっとる!!?? 聴覚GET???


ウェーイwww


場違いにハシャぐ俺を乗せて、マグマは超速で上昇を続けていた。


――そして、俺を乗せたマグマは遂に地表まで到達した。


大噴火……だったのだろう。恐らく。


知覚できたイメージがぐっちゃぐっちゃ過ぎてよく分からなかったが、地表に出たと思った瞬間、俺は空高く打ち上げられた。ホント、比喩でもなんでもなく、打ち上げられたのだ。


それまでと全然違った風景が頭の中に怒涛のように流れ込んでくる。


噴火する山、マグマが流れる地表、赤茶けた大地、黒い雲に覆われた空。石になって初めて見た地上世界は全く潤いの無い場所だった。


うおー!! 殺伐!! 


殺伐としか言いようがないよ、この世界!! ぜってー生き物なんか居ないわ。そもそも酸素とかないでしょ? うっわ、石で良かったー。


――なんて思っている間に、空高く打ち上げられた俺は重力によって落下していく。


ひょー、スカイダイビングなんて初めて経験したわ。どっちかってーとインドア派ですから。ワタクシ。


なんて悠長なことを考えている合間に地面に着地。……って言うか激突。


地面に叩きつけられた俺の上には、一緒に地中から噴出されたマグマやら岩石やらなんやらかんやらがバラバラと降り注いできた。


俺の体は半分以上また地中に埋まる。


しかし、地表に来たことは間違いない。石になってからの生まれて初めてのお引越しだ。


マグマでは自分の体が溶けないことも分かったし、いきなりでちょっとびっくりしたけど、新生活の期待に胸が膨らむぜ――。











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