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挿話 今際の際に見る夢~リムシュ~

なるほど、死ぬ前はこのように過去の記憶を思い出すものなのですね。


私は冷静に自分の状態を確認する。もう身体的な感覚は何もない。先ほどからずーっと過去の夢を見ている。


デュオルやシャル、それにアダマントといる記憶が多いですね……。自分の思い出を流れるように見続けながらクスリと笑う。まぁまぁ、楽しい人生ではあったようです。


……しかし、まだやり残していることがあります――。



『君もずいぶん魔石と縁を強く結んでしまったものだね……』


憂いを帯びた様な声が意識の中に入ってきた。


――来ましたね! 予想通りです!


私は内心飛び上がらんばかりに喜ぶ。


『この因果律の破れを修正するのには時間がかかりそうだ……』


憂いを帯びた声は、更に低く沈んだ声でそう言った。


「なぜ修正する必要があるのでしょうか?」


私は尋ねる。純粋に疑問に思うからだ。


『君も私に質問してくるのだね……。まあ、良いけど。――いいかい、世界には決められた未来というものがある。そこからずれる事は許されないんだよ』


「しかし、ずれるということ自体が決められた未来など無いという証左なのではないでしょうか?」


『詭弁はいらないよ。私の目指す未来こそが、本当の未来なんだから』


「……それはあなたが『神』であるからですか?」


私の言葉に謎の声はふふ……と笑った。


『神……か。そうだな。生命を司るという意味では私は『神』ということになるだろうな』


やはりそういう存在なのか。この『神』の目指す未来とはどういうものなのだろうか。死にかけているはずの私の意識の中に知りたいという欲求がむくむくと湧いてくる。


「あなたの目指す未来とはどういうものなのでしょうか?」


私の問いに謎の声は答える。


『それは君が生まれ変わりを続けていけば、いずれ見られるよ。だから、次の人生では魔石に関わらないで生きてくれ。さあ、まずはゆっくり休むといい……』


フワッと暖かい何かに包まれる。


まだまだ知りたいことはたくさんあるんですがねぇ……。私はふうっと溜息を付く。


この年まで生きてきて、色々なことを調べてきましたが知れば知るほど更に知りたいことが増えていくのには困ったものですね……。


それにしても生まれ変わったら、また一からやり直しになってしまうではないですか。それは全然ありがたくないですね。


それに魔石という、あんなに楽しい研究対象に関わらないで生きろなんて、そんなことできる訳がありませんね。


――神なんていたとしてもそいつは使えねー奴だ。きっと。


消えゆく記憶の中でそんなセリフがこだました。あれはシャルに伝えてもらったアダマントの言葉ですね。まったくアダマントの言う通りかも。


私は、その瞬間に考えるにして随分と呑気なことを考えて、ふふ……と笑う。



あ、きたきた……。


消えゆく私の魂の前に、一匹のシフが現れた。


『よお、リムシュ。神の存在は証明できたか?』


ほう、これがアダマントの声ですか。思ったよりも軽い感じでしたね。もっと重厚な声を予想していたのですが。まあ、シャルとのやりとりを思い出せば、こっちの方がしっくりきますが……。


また余計なことを考えつつ、消えゆく記憶を魂の欠片に乗せてシフに託す。


――これをアダマントに届けてくださいね……。それと残った魂の欠片は私の書斎に置いてある書きかけの本の中へ運んでください。


シフに2つの願いを託して、リムシュの魂は静かに消えていった――。










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