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3話 延々と独り言を言っている石


 ちょっと奥さん、聞きました? 今度のラノベは石が主人公なんですってー。


 あらー、それはないわ(岩)ー。岩石だけに。なんつって。……やべー、全然面白くねーな。



 俺の認知した情報によると、俺の体はどうやら石になってしまっているらしい。石になってしまったという言い方があっているかも分からないが。


 体が石に変化してしまったのか、石に意識が入ってしまったのか、石として生成されたのか。なぜ石なのかは全く分からんが、とにかく石なのだ。



 それにしても石かー。転生でも転移でもなんでもいいんだけどさー。もっと他に色々あるだろ……。


植物人間じゃなかったと思ったら、石って……。むしろ、もう二度と動けないこと確定じゃん! もっとダメじゃん。


そもそも石って意識あるもんなの? 俺だけなの? それとも周りの石も同じように意思を持ってるの? 石だけに。なんつって。……ああ、何度もスマン。面白くないことは分かっている。 けど冗談でも言ってないとやってらんないワケ。


しかし、この状況を真面目に考え始めると、何か色々と自分が壊れてしまいそうなので、なるべく前向きに考えてみることにする。


これは現代で石になってしまったと考えるのではなく、『きっと異世界転生をしているのだ』と考えよう。そう、前前回に考えた説②を採用してみる。


石の俺に意識があるのはココが元の世界ではなく不思議な異世界だから、ということにしておけば、何とか絶望せずにいられるような気がする。……いや、石であることには変わりないけどさ。


そして、このウニャウニャは何かの力を秘めた成分なのだ、きっと。吸収し続けていればチートキャラになれるんだ、いつか!



……


……とか、設定を考えてみたけど。やっぱ、納得できん!!! よしんばチートキャラになったとしても、石じゃなんにも話が続かねーだろが!?



おーい!! 神様~!! 普通、転生するなら赤子とかじゃないの? もうこの際だから、種族は何でもいいよ。とにかく赤子。赤子になりたかった。もしくは百歩譲って動物。ああ、もう百歩譲って魔物でもいいや。とにかく動けるものになりたいんだけど!


え? モノの転生モノもある? ああ、あるだろーさ。そりゃ、知ってるけどさ、無機物転生なんてキワモノだろーが。


……


……


……


なんて自分の境遇に毒づき始めて、もうどれくらい時間が経っただろうか。


もはや時間感覚など無い。


俺は取り留めのないことを考えながら、他にやることも無いので体の周りに感じるウニャウニャを吸収し続けていた。


どうやら、ウニャウニャは気体のようなものらしく、特に何もしなくても、少しずつ俺の体の中に吸収されているようなのだ。呼吸をしているようなもんなのかなー? そして更に意識すれば、そのウニャウニャがよりスピーディに体の中に摂りこまれていくようだった。


特筆すべき点としては、ウニャウニャを摂りこめば摂り込むほど、知覚が鋭敏になっていくような気がするところか。


……いや、もしかして……やっぱ、さっき考えた『ウニャウニャでチート設定』も当たらずとも遠からずなんじゃねーの? これはワンチャンあるやもしれん。


ウニャウニャを吸収し続けたためだと思うのだが、いつのまにか自分の体の周辺だけではなく、少し離れた場所の様子も何となく分かるようになってきた。……目も無いのに。はい、ここ、大事な所だから先生何回も言いますよー。


この『目も無いのに分かる感覚』と言うのは何とも説明が難しい。簡単に言ってしまえば頭の中に周囲の映像のイメージが浮かび上がる感じだろうか。石に頭があるのか分からんが。


ちなみに俺が今まさに知覚しているイメージは、近くにドロドロとしたモノが蠢いている様子だ。しかも心なしか少しづつ近づいてきているような……。


うーん。これ、なんとなくわかるぞ……。もしかして……いや、もしかしなくてもマグマだよね? 


ははーん。もっと近くまでマグマが来たら、俺も溶けちゃうって感じ? 始まろうとした物語が、うっかり終わっちゃう的な? イキナリ最終回。まさかの。『俺達の戦いはこれからだ』ですらない。始まる前に終わっちゃうとか。どんなクソラノベだよ。


いやー、ないっしょ。それはさすがにない。ダメ。


けど、実際まだ何にも始まってないのに、いきなりの危機。動いてもいないのに危機。この事実だけは変えられない。


とにかく逃げられないし、ギュッと身を縮こめて少しでもマグマから身を守れるように準備する。まあ、いくら準備したって実際にマグマに飲まれちゃったらもはや……であろうが。


幸い―なのかどうなのかは分からんが―今の所は、熱いとか痛いとかそういう苦痛系の感覚はない。


しかし、近くにマグマがあるってことは、俺はずいぶん過酷な環境に身を置いていると思われる。高温高圧的なカンジ?


いやー、これ急に全感覚が解放されたら、軽く死ねそうだなー。今の所、知覚としては視覚情報だけに留まっているのが有難いというかなんというか。


ま、どうせ死ぬときは死ぬだろうし。やることも無いから、とにかくウニャウニャを吸収し続けてみよう。また何か俺の体に変化が出るかもしれないしな。




……そして、変化は突然現れた。 思ってもみないところから……。











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