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23話 対ツオル国 開戦

 

「見ろよ。ツオル国の軍隊の前線に居るのは、ツオルに敗れた他のクニの兵隊だ」


 デュオルが主戦場となる大草原を見回しながら、対峙するツオル軍の編成を分析する。


「……酷いな」


 シャルの言葉にデュオルは頷きつつ、言葉を続ける


「しかし、非常に効率的だ。自軍の被害を最小限にして勢力を広げていくには有効な手段だ。あの王もただの俗物、という訳でも無いらしい」


 デュオルがそんなことを言うもんだから、シャルは不安げな表情でデュオルに訊ねる。


「デュオルも戦に勝ったら、ツオルの人たちをああいう風に使うのか?」


 虚を衝かれた様にデュオルはシャルを見つめ、返事をした。


「……いや。そんなことにならないようにするのが俺の役目だと思っている」


 デュオルの言葉を聞いて、シャルは安心したように「良かった」と呟いた。



「そろそろ準備を始めるが、アダマントの調子はどうだ?」


 デュオルが俺の方を見て訊ねる。


『ああ、いつも通りだ』


「いつも通りだって」


 シャルの言葉を聞いて、デュオルは微笑む。


「そうか、それは何よりだ。では、アダマント。ツオル王の居場所は分かるか?」


 俺は探知範囲を探り、ツオル王の気配を探す。――おう、居た。居た。相変わらずあの大臣も近くにいるな。


『前線の更に後ろ側がツオルの本隊かな? ツオル王はそこの中心部にいるな』


 シャルが俺の言葉をデュオルに伝える。


「ピンポイントでツオル王だけ殺せないか?」


 デュオルが物騒なことを聞いてくる。


『いやー、さすがに厳しいな。周りも巻き込んじゃうよ、絶対』


 実際、俺もあの盗賊消炭事件があってから、魔法の威力を調整する練習をしたけど中々難しいんだよな。ある程度はコントロールできるようにはなったが、ピンポイントはさすがに無理。


 コントロールできるのはせいぜい10mくらいだ。……え? 全然コントロールできてないって? うっさい。精霊達は制御するのが難しいのだ。


 シャルが引き攣りながら通訳する。


「そうか、では仕方ないな。ちょっと遠回しだが、一度脅しをかけて降伏させる方向にしよう」


 ――なんだよ、その物騒な方向性は。


 俺はデュオルの言葉にツッコム。


 デュオルはニカッと悪そうに笑うと、俺に言った。


「魔石の力、ちょっと借りるぜ。アダマント」



 ◇


 それから俺達は軽く作戦を打ち合わせて、それぞれの持ち場へ着いた。


 俺とシャルは草原を見渡せる少し小高い丘に陣取っていた。ここからなら対峙するツオル軍が一望できる。


 俺達の準備が終わってしばらく経つと、アダマント軍の中から数騎の騎兵がツオル軍へ向けて走り出した。その中の一騎はデュオルだ。


 さっきデュオルに聞いた話だと、戦の前にはお互いの将が開戦の口上を述べあうのが通例らしい。


 すると、ツオル軍の中からも数騎の騎兵が前へ進み出た。いかにも『勇猛』と言う言葉が似合う髭面のオッサンがツオルの将軍の様だ。ま、出てきたのはツオル王でないところがまた、あの王様の器の小ささを見事に表しているようで失笑してしまう。


「ツオル軍に告ぐ! 我々はアダマント国として、貴国の宣戦布告を受けることとした。しかし、我々は寛大な心も併せ持つ。貴国が降伏を選択するのであればいつでも受ける用意をしておる。無駄な被害を出したくなければ、王を説得して我が国に降るがよい!」


 朗々としたデュオルの声が草原に響き渡る。


「立ち上がったばかりの小国が笑わせる! 我々ツオルは百戦百勝! お主らもすぐに我が陣営の前衛に加えてやるぞ! 覚悟せよ!!」


 ツオルの将軍が返答する。ま、いきなり降伏なんてする訳がないよな。


 将軍の言葉が終わった時、デュオルが俺達が居る丘の上にチラッと視線を投げ、俺達が待機していることを確認する。そして再びツオル軍の方を向き直ると右手を高く掲げた。


「仕方ない。……では、開戦だ!」


 デュオルの声が草原に響き渡った――。














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