19話 『魔石の巫女』って響きは素敵だよね
新しい神殿が完成するまでの間は、俺はこれまで通り村の中央の神殿に置かれることになっていた。
俺がうっかり放ってしまった風の魔法でブチ開けた天井の穴は、簡易的にだが修理をされほぼこれまでと変わらない生活が再び始まった。
いや、変化はあったな。シャルが俺の側付きとして、この神殿で寝起きをするようになったのだ。
それに、一つ想定外の事もあった。
「おい、アダマント。変わりはないか?」
乱暴な言葉づかいで、俺の安置されている部屋に入ってきたのはズルズルと長い衣の裾を引き摺って歩くシャルだった。
ボッサボサだった髪は整えられ、泥だらけ・垢だらけだった顔も小綺麗になり、村の女性が作ってくれた白い衣を着た姿はまるで純真無垢な少女のようだった。――しゃべらなければな。
ってか、聞いてくれ。……シャルは女だったんだ。
――何を言っているのかわからねーと思うが(ry
ありえねー、と思うだろ? うん、俺も思った。 デュオルとリムシュも口には出さなかったが絶対そう思ってたはずだ。
「お前まだ、俺が女だったことに驚いてんの? いい加減しつこくない?」
いつの間にか俺に手を置いていたシャルが俺に話し掛ける。
『ちょ……! こっそり触るのやめろよ!! プライバシーの侵害だぞ!!』
せっかく話が出来る相手が見つかったのは良いものの、実はそれも痛し痒しだった。
なんと、俺が頭の中で思ったことが全部言葉としてシャルに聞かれてしまうらしく、シャル限定では嘘のつけない状態になってしまうことが分かったのだ。
「プライバシーってなんだ?」
シャルはキョトンとして俺を見る。
ち、プライバシーも知らん奴に考えを駄々読みされるとは、ある意味生き地獄……。恥ずかしいことを考えようもんならすぐにシャルに読み取られる。それどんなサト〇レ?
そんな俺の戸惑いとは裏腹に、シャルは村の生活をエンジョイしているようだった。ま、それはそれで良いことだけどさ。それに……
「アダマントの相棒になったおかげだな! ありがとな!」
そう言って笑うシャルに、俺は色々とやり辛い所はあるものの、文句はあまり言えなくなってしまうのだった。
数か月後、村の奥に新しい神殿が完成し、俺達はそこに移動することになった。
その頃にはシャルもすっかり村の生活に慣れ、村人には魔石の巫女様と呼ばれるようになっていた。
うーん、シャルが巫女ねぇ。そんなタマじゃないと思うんだけどなぁ。
俺は解せない思いを抱えつつ、けれどもそんなシャルという話し相手がいることで、以前よりは退屈しない生活を送ることが出来ていた。
ちなみにあんまり話したがらないのでよくは分からないが、シャルも昔はどこかの村に家族で住んでいたらしい。
例のばあちゃんもシャルが子供のころに一緒に住んでいて、その時に精霊のこととか、魔法のこととか色々と教えてもらったそうだ。
シャルの家系には時々精霊を見ることのできる子供が生まれてきたそうで、そういった子は長じて占い師として村人たちを助けていたらしい。
ただ、そのばあちゃんもシャルが小さい頃に亡くなり、その後、村も盗賊に襲われるか何かしてシャルだけ焼け出されたらしい。
そのままさ迷い続けて例の盗賊団に出会い、死ぬよりはと思って仲間に入れて欲しいと頼み込んだそうだ。
まだ子供なのになかなかヘビーな人生を歩んでるもんだ。俺の相棒は。
俺は部屋を掃除しているシャルを見る。この村で生活するようになって荒んだ目つきは随分和らいだように思う。
ま、こいつが楽しく暮らしていられれば、とりあえずなんでもいいか。
俺と相棒との生活は穏やかに流れていった――。




