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17話 虫の正体

 

 その昔、大気中に充満していたエーテルから、火・水・風・土の4種の元素が生まれた。それぞれの元素は長い時を経て形質を変え、その内に意思を持つものが現れた。それを精霊と呼び、元素と区別するために、サラマ(火の精霊)・ウンディ(水の精霊)・シフ(風の精霊)・ノム(土の精霊)と呼ぶことにした。


 これがシャルがばーちゃんから教えてもらった精霊知識だそうだ。


「ばーちゃんは精霊の動きを見て占いをする占い師だったんだ」


『へー』


 ほっほう……しかし、なにやら色々と心当たりがあるぞ。


 俺はシャルの話を聞きながら昔のことを思い出す。


 確かにあの虫は4種類いたっけ……あれは属性で形が違ってたのか。そんできっと、ウニャウニャしてたやつがエーテルってやつだったんだ。俺はずーっとエーテルを吸収してたってことか。


 キタんじゃね? コレ? なにやら、チートに繋がる予感……。


 んで、ウニャウニャから生まれたから、あの虫たちはウニャウニャに雰囲気が似てたんだな。と、腑に落ちる。




 その時、神殿の中に避難してきた村人を引き連れて、リムシュが戻ってきた。


 リムシュは壊れた天井と、床に落ちている天井の残骸を見てサッと顔色を変え、シャルの許へ足早に近づいた。


「シャル! 大丈夫かい!? まさかもう盗賊団の攻撃が……」


 シャルはリムシュの声に振り返り、思わずと言った感じで口を開く。


「……いや、これはアダマントの仕業……」


 うぉい! 俺のこと売りやがったな! もっと柔らかい言い方ってもんがあるだろーが!!


 しかし、シャルの手は振り返った時に既に俺から離れているので、今の俺の叫びはヤツには聞こえない。


「どういうことだい?」


 リムシュはシャルの言葉の意味を分かりかねて聞き返す。そりゃそーだ。


「アダマントは魔法が使えるみたいなんだ! この天井もアダマントが風の魔法を撃ったからで……アダマントの力を上手く使えれば、盗賊をやっつけられるかも!」


「……ちょっと待って、シャル。それは、本当かい?」


 リムシュは少し不審そうな顔をしつつも、興奮して捲し立てるシャルを落ち着かせて確認する。


 ま、そうだよな。イキナリ魔法が使えるったって、信じられねーよな。


「本当だよ! ……けど、アダマントはまだ魔法を上手くコントロールできないみたいなんだ。だから、天井を壊しちゃって」


 グヌヌ……人をポンコツみたいに……おのれ、シャル今に見てろ。


 ――あ、ヤバい。こんなことしてる間に特攻隊の奴らがもう近くまで来てる!!


 俺はまた激しく光を明滅させる――。エマージャンシー! エマージャンシー!


「こ、今度はどうしたんだ!?」


 リムシュの声に、シャルがハッとして俺の方を振り返り、俺に手を置く。


『おい、特攻隊の奴らが近くまで来たぞ。……魔法が上手く使えるかは分からんが、とりあえず俺を神殿の外……いや、村の外に運び出すようにリムシュに伝えてくれ!』


 リムシュはシャルの話を聞き、すぐに人を集めて俺を村の外に運び出してくれた。


『最悪の場合は、盗賊団に俺を持って行かせろ。俺が手に入れば盗賊団は手を引くかもしれないからな……もしも問答無用で襲ってきた時は徹底抗戦だけどな!』


 俺はそうシャルに告げて、俺だけを村の外に残して、他の皆は村の中に避難しているように告げた。



 ……それにしても――


 ――ずいぶん久しぶりに外に出たなぁ。


 俺は呑気に空を見上げる。空はどこまでも青く、白い雲が爽やかに浮かんでいる。今から盗賊が攻めてくるとは思えないほど、穏やかな天気だ。


 チチチッ……と鳥の鳴き声が空に響いた。


 初めて見た時の殺伐とした地上とはまるで別世界みたいだなぁ。俺はしみじみと思う。一体、あれからどのくらいの時間が経っていたのだろうか……。



 さっき、シャルの精霊の話を聞いて何となく感覚的に分かったことがあった。どういう仕組みかは知らんが、魔法とは精霊の力を利用しているのだろうということ。


 だから俺が無意識に魔法を使った時、精霊達が変な動きをしていたんだ。地震の時はノム(土)が、激流を起こすときはウンディ(水)が、さっきも風の魔法を使ったからシフ(風)が寄ってきたんだろう。


 大きな地震や激流は、俺が魔法の力を集めたのに、方向を決めなかったから暴発したとかそういうことなのだろうと、なんとなく思う。


 ……ってことはだ。



 俺はゆっくりと体を光らせる。


 ウニョウニョと集まり始めた、小さな赤みを帯びた虫……いや、サラマ(火の精霊)を眺める。


 長年の虫の観察で培ったスキルを見せてやろう。暇人を舐めるなよ。


 ……俺は自分の意図する虫を選んで集めることが出来るようになっていたのだ。


 更に……。


 俺はサラマ達に右に行くようイメージを送る。


 すると、サラマ達は操られるようにスー……と右に動く。


 ハイ次、左。


 サラマ達はスー……と左に動く。


 つまり、魔法を使うってことは精霊を操るってことだろ……。俺の指示通りに動く精霊をニマニマと眺めながら呟く。


 ……これで勝つる!!




 その時、俺の真正面の草原に土煙が見え始めた。


 ――あれが特攻隊か。俺は探知スキルを使って、盗賊団の人数を再度確認する。


 今、こちらに走ってきている騎馬の男たち、特攻隊が10人……。で、その少し後方にこちらも馬に乗った男たちが40人強が、ゆっくりとこちらに馬を進めている。


 一気に村を殲滅させる気だな……。んな事させるかよ。


 俺は特攻隊の上げる土煙がだんだん近づいてくるのを確認しながら、サラマをいーーっぱい集める……。


 サラマは今までどこに隠れていたのかと思うほど、ウジャウジャと集まってきていた――。


















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