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155話 延々と独り言を言っている星



 ちょっと奥さん、聞きました? 今度のラノベは星が主人公なんですってー。


 はぁ? 何言ってんだい(天体)。惑星だけに。なんつって。……やべー。全然面白くねー上に、苦し過ぎるな。44億年の間に、俺も腕が落ちたもんだ。



 さてと、改めて整理しよう。


 俺の認知した情報によると、俺の体はどうやら星になってしまっているようだ。しかも、さっきまで自分が住んでいた星に、だ。なんでこんなことになっちゃったのかは俺も分からん。



『文明の発達や、宗教の発達も問題ない。この後、人間が魔石の力を利用することが無いように注意さえすれば、科学の発達も見られるだろう……。そうすれば必ず地球と同じ発展を遂げるはずだ……。大丈夫。順調に進んでいる……』



 で、あとはこれも謎の現象。さっきからブツブツと聞こえてくるデトリの独り言?的な声。しかも、俺から話し掛けても向こうには聞こえないっぽい。


 ちなみに、もしかすると独り言とは言わないかもしれない。なぜならよく聞くと、聞こえてくる声が多人数っぽいから。え? 分かり辛い? うーん。つまり、大勢のデトリが一斉に同時に同じ言葉を呟いているような感じって言えばいいのかな?

 

 けど、大人数の声が重なっている割には、すごく小さな声だ。しかも寂しそう。デトリのくせに。憂いを帯びたその声はさっきよりも切実さを増していて、俺の心に静かに染み渡るように響く。(しずかさ)さや岩にしみ入るデトリの声……って、ああ、俺もう石じゃなかったわ。いや? ある意味、石か?

 

 と、んなこと言ってる場合じゃねーわ。デトリは一体何をブツブツと言ってやがるんだ? カラッとしたように見せかけて、案外ネチッコイタイプか、奴は? 


 ……いや、考えて見れば俺にしつこくストーキングしてる辺り、案外じゃなくかなりネチッコイ性格なんだろうな……。



『ハッティルト帝国の拡大は、恐らくローマ帝国の様な大国の発生に繋がっていくに違いない。そうすれば今のバラバラな文化も統合されて、より進んだ文化が生まれてくるだろう……』



 ふむ。つまりデトリはこの星を地球と同じように発展させたいってことか? ……なんで?



『今の状況からいけば……長くてもあと2~3千年程のはずだ。あと少し待てば……』


 

 ふむふむ。2~3千年後? 何があるの?? 



『……きっと、この世界でも(あや)が生まれてくる……』



 ……?



 【アヤ】ってなんだ? 生まれてくるってことは生き物? それとも何かの比喩?



 ……うーん。【アヤ】なんて、俺の弟の婚約者の名前でくらいしか聞いたことないぞ?




 ……え? 




 ……いやいや……




 ……いやぁ、まさかね?





 ……





 ……





 ……





『おい!!! デトリ!!! 返事しろ!!! ちょっと聞きたいことが!!! おい!!!』



 ……


 ……


 ……



 くっそー。ダメだ。やっぱりデトリに俺の声が届かない……!


 いや、冷静になれ。俺。まさかそんなことある訳ねーだろ? 大体、あいつは死んで無い筈……。いや、まあ生きている所を確認した訳でもないけど……。いやでもそうだとしても、同じ場所に転生するなんてそんな偶然……。


 ――ってか、そもそも【偶然】とか、【まさか】とかいった言葉が使える状況じゃないよな。よく考えてみれば。


 同じタイミングで同じように死んだんなら、むしろ同じ場所に転生するのも【当然】と考えるべきなのかもしれん。



 よし。オチツケ……オチツケ……オチツケ。俺。だんだん分かってきたはずだ。


 まずは状況を整理。


 デトリの声がたくさん聞こえてくるのは、おそらくシャルの細胞内に共生しているデトリのクローンたちが一斉に呟いているからだ……。


 どうやら俺の回線?は現在デトリのクローンとだけ繋がっているようだ。クローンは恐らくデトリの思考を呟いているだけなのだろう。


 しかし穴に落ちる前まで会話の回線が繋がっていたのは確かにデトリ本人だったはずだ。つまり、デトリの本体は俺が穴に落ちてる間に、シャルの体から抜けてどっかにいっちまったってことか? 


 実際、シャルの様子を探ってみるとどうやらシャルは穴の近くで倒れているようだった。一瞬、焦ったが、特に苦しそうな様子は見られずただただ寝ているだけのようだった。周りには聖騎士やトルティッサ達が集まり介抱している姿も見える。


 よし、とりあえずシャルは大丈夫そうだ。


 安心した俺は、新しい体の使い方を練習するつもりでちょっと実験をしてみる。


 よーし!! ……集中して……顕微鏡のピントを合わせる感覚で……近くに転がっている魔石のルビーに……フォーカス!!



『……おい。ルビー聞こえるか?』


『!? ア、アダマント様!?』


 ――よし、繋がった!!


『アダマント様!! ご無事だったのですね!!』


『おー。幸いにも死んではいないみたいだ』


『しかし、アダマント様のお声はどこから!? ……いえ。それよりも!! 申し訳ございません!! アダマント様の四天王と言う名誉を賜ったにも拘らず、このような無様な醜態をさらしてしまいました……。かくなる上は私もあの穴に飛び込んで……』


 急に謝り始めたルビーが面倒くさいことを言い出したので、ひとまず話はここまでにする。


『……あー分かった、分かった。分かったから、とりあえずルビーはそのままココに居ろ』


『し、しかし、アダマントさ……』


 まだ何かを言い募るルビーとの通信を切る。よっしゃ。実験成功。思ったよりもめっちゃ簡単!! お話ししたい相手の姿をイメージで捉えて、話し掛けるだけ。


 ……ついに俺専用SNS的な能力を手に入れてしまった。


 しかも、石の時の意思疎通方法よりも格段に便利になってるのだ。相手が俺に触れていれば、って前提は変わってなさそうだが、任意に会話の接続と切断が出来るようになっとる!! これまでみたいに考えていることが延々と駄々洩れる心配なし! 


 よし、そうと分かれば、デトリの本体を探すぞ!! アイツを探して、直接問い詰めてやる!!


 俺は体中の感覚を研ぎ澄まし、デトリの本体の気配を探した。




 ……

 


 ……



 ……



 ……居た!? これか!?



 デトリの気配を感じたのは、どうやら海のような場所からだった。まあ、海のような場所っつっても、そこももはや俺の体の一部なんだけどね。今では。


 たくさんの生き物の気配がする場所よりも更に深い場所にデトリは居るようだった。


 よっしゃ!!



 ……集中して……顕微鏡のピントを合わせる感覚で……海の深くに潜っている小さなデトリの本体に……フォーカス!!


 


『……おい、デトリ!! 聞こえるか!?』




『……アダマント……?』




 ――よし! 繋がった。




 そのまま、俺はドキドキしながらも、もう自分でもびっくりするぐらい単刀直入に質問を投げかけた。




『……お前、もしかして祐紀じゃないのか?』









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― 新着の感想 ―
[一言] ちょっと聞きました奥さん。今度の主人公は石から星ですってこりゃ大変だねー(白目) はい、てなわけでまた面白くなってきたましたw これからも頑張ってください!
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