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148話 研究発表


 魔王の間では『神』とルビー、エメラルドの戦いが激しさを増していた。 


「エメラルド! デトリの動きを止めてちょうだい!」


「りょーかい! いっけー、ノムちゃん達!!」


 ルビーの合図で、エメラルドが大量のノムを動員する。すると、一瞬で鋭利な岩が槍衾のように隙間なくデトリの周りを囲い込んだ。


「……邪魔だ!!」


 デトリが持っていた剣で、鋭利な岩の壁をたたき斬ったかと思うと、そのまま自分の背後に剣を投擲する。


「な!!」


 エメラルドの魔法発動のタイミングで、デトリの背後にまわっていたルビーが突然飛んできた剣の切先を紙一重で避ける。


「なんだ。外れちゃったか、残念」


 軽い調子でそう言って、デトリが首を竦める。


「よそ見してると、その首貰っちゃうんだからぁ!!」


 直後にエメラルドがデトリの間合いに入り込み、鋭利な岩を槍のように持ってデトリに突き刺した――と思った瞬間、デトリの姿がその場から消えた。


「エメラルド!! 上よ!!」


 ルビーの声でエメラルドはハッとして上を見る。そしてニヤリと笑った。


「ばーか!! 上空に逃げたらこれは避けられないでしょ!!??」


 そう言ってエメラルドが両手をデトリに向けて掲げた。その動きに連動するようにエメラルドの足元から無数の礫岩が浮かび上がり、弾丸のように一斉にデトリへ向かって飛んでいく。


 そして同時にルビーも炎の塊を上空に跳んだデトリに向けて放つ。


 ――魔王の間に大きな爆発音が轟いた。




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 ルビー達の戦いで大地震のように魔王の間が揺れた。しかし、幸か不幸か俺の張った結界の強度が強すぎて、リムシュは爆発があったことにすら気付かぬ様子で話を続けていた。



『……おや、そうでしたか? アダマントの生成年代については、もちろん4~5万年の誤差はありますが、私の開発したエーテル年代測定法によって明らかになっている事実なのですが? 皆さん、ご存じない? なるほど……帝国は魔石研究が進んでいると聞いておりましたので、てっきり……』


 いやいやいや、俺の研究を専門でやってんのなんかリムシュだけだろ!? 多分お前が最先端だよ? ってか、俺が44億歳って言うのは仮説とかじゃないの? 確定事項なの? その上、誤差が4~5万年なの!? これまた色々ツッコみたいけど、面倒くさいことになりそうなので黙っておく。


 するとリムシュが今度はまた別の質問をしてくる。


『ではひょっとすると、アダマントの内部のエーテルが他の魔石とは多少異なっている……(すなわ)ち古代エーテルである、という事も皆さんご存じないのですかな?』


『知らん』


 俺はリムシュの質問を一刀両断する。確認してないけど断言できるわ。誰も知らんに決まってる。って言うか、そもそもリムシュが何を言っているのかが分からない。


『まさかそんなことが!? という事は、測定方法の定義からお話しせねばなりませんな……。これは、説明が長くなりそうですね……』


 リムシュは驚愕しているような声を出している……が、内心自分の研究成果を存分に話せると思ってワクワクしているに違いない、絶対。昔っからこいつはそうだった。ちょっとそんな感じの雰囲気が言葉の端々に感じられるし。


 こういうエンジンが入った時のリムシュの話は、マジでとてつもなく長い。一応、分かり易く話してくれるのだが、とにかく長い。


 シャルもヤバい! という顔をしている。リムシュの研究発表に付き合わされるのはいつもシャルだった。そしていつも俺の部屋で話すから、もれなく俺も研究発表を受ける羽目になっていたのだ。


『とりあえず、今は時間が無いから結論だけ教えてくれ。定義とか条件とか、先行研究とかは後から聞くわ。ああ、参考文献とか謝辞もいらねーから』


 俺はリムシュが研究発表を始める前に、無情な釘を刺す。


『え!? しかしそれでは皆さんに十分な理解を促すことが……』


『要旨……いや、結論だけでいい』


『……分かりました』


 きっぱりと俺が言い切ったので、リムシュは渋々返事をした。本じゃなかったら絶対にがっくりと肩を落としている所だろう。けど、今はマジで聞いてる暇ないから。スマンな。


『仕方ありません。では、結論だけお伝えしましょう。……実は、長年アダマントの内部だけに存在すると考えられていた古代エーテルなのですが、驚いたことに人間の細胞内に共生する細菌の中にも存在することが分かりました。その細菌は何のために存在しているのか、いまだ解明されていない謎の細胞内共生細菌だったのですが……。ああ、ちなみにその細菌の特徴としては、すべて均一の形質を持つクローンだという事、また、宿主……つまり共生している人間が死ぬときにだけ活発に活動をし始めるという事は分かっていました。私はある仮説の下にその細菌について調べていたのですが、驚くべきことに宿主が死ぬとその細菌が持つ古代エーテルが、全て、同じ個体に飛んでいくことが分かったのです! その仕組みについてはまだ分かっておりませんが……』



「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

『……』



 全員、無反応である。俺は頭を抱えて(比喩!)、リムシュに伝える。


『……ちょ。リムシュ、すまん。何を言っているのかさっぱりわからねーわ。つまりどういう事??』


『なんと! まだ説明の途中なのですが……。分かり辛かったですか!? それは失礼! つまりですね。私の研究の結果、“神”の正体は“人間の細胞内に共生している細菌”であるということが結論づけられたのです!!』



「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

『……』

『……』



 ……説明、端折り過ぎじゃね? と思ったのは俺だけではないはず――。








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