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147話 合流

 

「本来、この世界に魔石なんて存在しちゃいけないんだ!! もういい。この際、私が全て元の石に戻してやる!!」


 デトリが叫んだ瞬間、デトリから発せられる殺気のようなものが増大する。


『!! エメラルド一人では荷が重そうですね。アダマント様、申し訳ございません。わたくしはあちらに参戦して参ります』


『ああ、頼んだ!』


 俺がそう言うと、ルビーは頷いてすぐに俺の側からデトリの方へ走り出した。と、同時に突然シャルがガクンとしゃがみ込んだ。


『な!? おい!? シャル? 大丈夫か!?』


「カハッ……。体が……重い……? 息が……」


 苦しそうに喘ぎながら、シャルが何とか言葉を絞り出す。


『あ、結界が切れたからか!?』


 ルビーが離れたことで、ルビーの張った結界が切れていた。俺はすぐに結界を張り直す。


「はぁ……はぁ……」


 結界を張り直すと、目に見えてシャルの表情が和らいだ。なんだ、今の? デトリの殺気に当てられたのか?


『あ! じゃあ他の人間達も危ないんじゃないか!?』と咄嗟に思い当たり、慌てて周囲を探知する。


 しかし、どうやら他の聖騎士達はアイアン隊長が結界で守っていてくれていたようで支障はないようだった。ナイス! アイアン隊長! 俺はホッと胸を撫で下ろす。



「……ち、父上!?」


 キューちゃんの声が聞こえたのはその時だった。声のした方に注意を向けると、トパーズの結界に囲まれながら、さっき探知したメンバーがこちらへ向かってきた。


「父上!! お姿が石に戻っておりますが!? 一体何があったのですか!?」


 キューちゃんが慌てたような声で叫びながら、俺の近くへ飛んできた。


「え!? ドラコーヌ君!! ま、まさか、この黒い石が……アダム君なのかい!? ……いや、たしかに魔石だから、石の姿が正しいのか……いや、しかし……」


 そしてその背中からは、困惑するようなトルティッサの声が聞こえてきた。


「うわー。めっちゃ剣刺さっちゃってるじゃん」


 トパーズが引き気味に言う。


「こ、これがあの有名なアダマント王国の黒い魔石!! 魔王殿の真のお姿!」


 などと言いながら、チルサムも興味深そうな目でジロジロと俺を見てくる。


 ……やだっ! なんかみんなの好奇な目に晒されて恥ずかしい!!


「……み、皆さん。とりあえずアダマントに手を置いてください。直接触れることで彼と言葉を交わせますから」


 シャルがなんとか声を絞り出して、集まってきたメンバーに説明をする。おお、シャル。ナイス!


 その時、驚いた様にチルサムが叫んだ。


「貴女はシャルマーニ殿ではないですか!? なぜ、アダマント殿と……」


 するとそれを聞いたトルティッサが口を開いた。


「シャルマーニ殿? そのお名前は……ヴィータ教団の聖騎士団の団長殿ですな?」


 シャルもハッとして改めて挨拶をする。


「これは……ご挨拶もせずに失礼を。バンドルベル西境伯に、チルサム殿ですね。改めまして私は聖騎士団団長のシャルマーニと申します。色々ありまして……詳しいことはアダマントから聞いて頂ければ……」  


 それを聞いて二人は頷き、俺の上に手を置いた。


 俺は全員が自分に触れているのを確認し、急いで話を始める。


『とりあえず、時間が無いから今の状況を端的に説明するぞ。質問は後だ。まずは聞いてくれ。石に戻ってしまったが、俺はアダマントで間違いない。ああ、人間の学院に行っているときはアダムと名乗っていた。が、本名はアダマント、だ。人化が解けてしまったのは御覧の通り、シャルとの戦いでこの聖剣エクスカリバーが刺さってダメージを受けたからだ。これに関しては俺が自分の意思で判断した結果だ(石だけにw)。シャルは『神』に過去の記憶を奪われていたんだ』


 ここまで一気に話して俺は一息入れ、また続ける。


『でだ。今、ルビーとエメラルドがその『神』、別の名前で言うと『デトリ』と戦っている。『デトリ』は知っている通りヴィータ教の神だ。……そして俺の昔からの敵でもある。更に詳しく言うとデトリの今の姿は本当の姿ではない。人間の聖騎士の体を乗っ取っている状況だ。そして今しがた、デトリの目的は魔石を全員石に戻すことになったっぽい。つまり超ピンチってこと。とりあえず、概況説明は以上だ』


 俺がそこまで話したところで、今度はトルティッサが場違いなほど朗らかに口を開いた。


「やあ、久しぶりだね。アダム君! さっきは驚いたけど、声を聞けばすぐに分かったよ。やっぱりアダム君はアダム君だね!」


『……ははっ。お前も変わってないみたいで安心したわ。受け入れの早さも相変わらずだな! ま、今回はそれが有難いけどな』


 トルティッサの変わらなさ具合に、思わず肩の力が抜ける。


「そう言ってもらえるのは光栄だな。……さて、今のこの状況については君の説明でまあ把握した。次はこちらの状況を説明させて貰えるかな。まず、君に説明したいのはこの本のことだ。これは僕がアダマント王国の王宮があったと思われる場所で発掘した本なのだが」


『……発掘? まさか。アダマント王国の王宮にあった物は全て燃えたはずだが……』


 俺がそう呟くと、トルティッサはニコリと笑って、本を俺の上に置いた。


「まあ、詳しくは本人から聞いてくれ」


『本人?(……本だけに?)』


 俺はトルティッサの言葉の意味が分からず、ポカンとする。と、突然、頭の中に別の声が響いた。


『ああ。アダマント、久しぶりですね! うーん。それにしても残念ですね。魔石に戻ってしまったのとは……。貴方が人化していると聞いたので、ここに来るまでワクワクしてたのですよ! アダマントの人化した姿を私も見てみたかったのですが。うーん、残念ですね』


 ……こ、この声は……。


『まさか……リムシュか!?』


 俺は驚きの声を上げる。


『ええ。御明察です! 本当に懐かしい! 109年ぶりですね! 元気でしたか?』


『え!? 109年!? お前が死んでからそんなに経ってたっけ!?』


『ええ。私が死んでから109年経ってますね。まさかこんな風に直接アダマントと言葉を交わせる日がくるなんて! 感無量です! それにシャル!! まさか貴女もここに居るなんて、驚きました! ちょっと若くなったみたいですけど、元気そうで何よりですよ!!』


 えーと、えーと。なんだか色々とツッコミどころが多すぎて、どこから突っ込んでいいのか分からない。


『おい、俺もいるぞ』


 あ。やべー、そう言えばまたデュオルのこと忘れてたぜ。


 突然入ってきたデュオルに、今度はリムシュが驚きの声を上げる。


『その声は!? デュオル!? なんと!! デュオルまで!? というかデュオル、貴方その姿はシフですか!?』


 驚く(リムシュ)に、風の精霊(デュオル)が『そうだ』と答える。……シュールな光景だな。


『ねえ。本当に……リムシュなの? でも、どうして本……?』


 シャルが困惑したような声で俺の上に置かれている本を見る


 そうだ! 一番ツッコみたいのはそれだ!!


『そうだよ! なんでお前、本なんだよ?』


『おや。これはこれは。私の研究者魂を甘く見て頂いては困りますね。まだまだ『アダマント』の研究も『神』の研究も途中なのですよ? この二つの研究は私のライフワークです! 明らかにするまでは落ち着いて死ねる訳がないじゃないですか。ですから、寿命のある人間として生まれ変わるよりも、いっそ魂を本に宿らせて、本そのものになってしまおうと思った次第です。これなら分かったことをすぐに体に書き込めますからね』


『……』

『……』

「……」

「……」

「……」

「……」


 リムシュのクレイジーさに誰も言葉が出ない。ってか、ライフワークの定義が一般と違くね?


『おっと、そんなことよりも。ココに来たのは雑談をするためでは無いのです! 私の研究の結果、重要なことが明らかになったので、アダマントに会いに来たのです! 全く本当にタイミングよくチルサム達が戻ってきたものですよ。 ――っと、いけない、また横道にそれてしまった。では本題に入りましょう。まずはご存じの通り、アダマントが44億年前に生成された元素鉱物だということは私の以前の研究で明らかになっている訳ですが……』


 リムシュの突然の研究発表に俺は動揺する。


『ちょ、ちょ、ちょっと待て。えーと、俺が44億年前に生まれたって? んなこと誰もご存じじゃねーだろ!? ってか、俺すら知らねーし!?』












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