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15話 緊急警報発令

 

 エマージェンシー!! エマージェンシー!!



 俺は激しく体の光を明滅させる。


「おい? なんだ!?」


「どうしたんだ?」


 丁度みんなが俺の方を見ていたタイミングに光りだしたので、誰かが慌てたように口を開く。


「いつもの光り方と違う……?」


 リムシュの言葉に、デュオルも頷いて言った。


「ちょうどいい。さっそくあの子供に聞かせてみよう」


 デュオルは入り口に立っていた警備の者にシャルを連れてくるように伝えた。


 シャルはすぐに連れてこられた。相変わらず仏頂面をしている。


「おい、魔石が何か言いたそうなんだ。聞いてみてもらえるか」


 デュオルがそう言うと、シャルはジロリとデュオルを一瞥して口を開いた。


「石の話を聞いたら解放してくれるのか」


「……それは難しい。ただ、悪いようにはしないと約束しよう」


 シャルは少し目を伏せたが、すぐに顔を上げて「わかった」と頷いた。


 シャルは7人の大人に囲まれて、少し居心地悪そうに周りを見回した後、俺の傍へ歩を進めた。


 俺の体にそっとシャルの暖かい手が置かれる。


『おい!! やべーよ!! 村の近くに盗賊団っぽい男達が現れたぞ!!』


「!!」


 俺は食い気味にシャルに訴える。俺の言葉を聞いてシャルも表情を硬くした。


「……どうしてわかるんだ?」


 しかし、冷静にシャルは俺に質問する。


『俺はある一定の範囲内なら離れた場所を見ることが出来るんだ! 村の北東、小さな林がある辺りに馬に乗った男たちが50人くらい集まってる。手に武器も持ってるし、かなり殺気立ってる。ありゃ絶対盗賊だろ』


 捲し立てる俺の言葉にシャルの顔色が蒼白になっていく。


「村の近くに盗賊団が来ているって! 北東の小さな林に、馬に乗った奴らが50人くらい! 間違いないと思う……奴らだ」


 シャルは俺の言葉を素早く、後ろに集まる七人に伝えた。


「なんだと!? こんなに早く!?」


 デュオルが叫ぶ。


「至急、村のみんなを神殿に避難させよう」


 リムシュの言葉に、場に居た全員が頷く。


「俺は男手を集めて、迎え撃つ準備をする! 女・子供・年寄の避難はリムシュに任せる! もし隙がありそうなら、神殿に集まった後、皆を連れて隣村まで逃げてくれ!」


「分かった」


 すぐに全員がそれぞれの役目を果たすべく、その場を立ち去る。


 リムシュが立ち去る間際、シャルの近くにしゃがみ込み目線を合わせて話し掛けた。


「僕はこれから村人をこの神殿に誘導してくるから、君はここに居て欲しい。出来ればもう少し詳しい情報を魔石から聞けるようだったら聞いていてもらえるとありがたいんだけど。……頼んでもいいかな?」


 それは、シャルを信頼している、と言ったのと同じようなことだった。シャルが逃げてしまうかもしれないのに、見張りも置かずに神殿を出ていくということなのだから。


 シャルは驚いた様に目を見開いて、リムシュを見つめる。リムシュの目が本気なのを感じ取ると、シャルはおずおずと頷いた。


「うん。ありがとう」


 リムシュはそう言ってニコリと笑うと、シャルの頭をポンポンと撫でて、すぐに神殿を後にした。


 シャルは少し複雑そうな顔をしてしばらくその場に佇んでいた。


 しかし、すぐに気を取り直したように俺の方を振り向き、また小さな手で俺に触れた。


「他に何か情報はあるか?」


『へー、案外素直にリムシュの言うこと聞くんだな……意外』


 俺はニマニマしながら(比喩だってばさ)、シャルを揶揄う。


「うるさい!!」


 シャルは揶揄う俺に怒りながらも、ポツリと呟いた。


「……初めてなんだ。誰かに必要とされたこと――」


 急にそんな殊勝なことを言うもんだから、俺も調子が狂ってしまう。


『バッカ、お前のこと一番必要としてるのは俺だよ!! やっと話が出来る奴が現れたんだぜ。昨日の夜、お前に出会った時からずっとお前を必要としている!!』


 なぜかリムシュに対抗するように、俺がいかにシャルを必要としているかを力説してしまった。


 シャルが一瞬キョトンとした後、幼い笑顔で笑った。


「お前って変な石だな」


『……うるせー』


 言ってから恥ずかしくなっちまったぜ。


『それよりもだ。……盗賊団の奴らが動き出したぞ』


 俺はやりとりの間も認知範囲内の盗賊を警戒していたのだが、ここに来て盗賊団の一部が動き始めた気配を捉えたのだった。


『1、2、3、4……10騎くらいか? 村に向かってきてる』


 俺の言葉にシャルが思わず、と言った感じで呟く。


「特攻隊だ……」


『特攻隊?』


 なんだと、特攻ぶっこみだと!? オウ!! ”バール”持ってこい!


 おっと、いかんいかん。唐突に往年の名作ヤンキー漫画を思い出して熱くなっちゃったぜ。


『――で、特攻隊ってなんだ?』


 俺は改めてシャルに聞いてみる。こいつ、盗賊団に入ろうとしていたぐらいだから、その辺り詳しいのかも。


「名前の通りだよ。狙いを付けた獲物を最初に襲う武闘派のメンバーだ。特攻隊の連中が荒らして混乱した所に、本隊が時間差で襲撃するんだ。奴らの得意な戦法だよ」


『なるほど。それはマズいな。この村の奴ら、そんな物騒な連中と戦えるのかよ……』


「難しいと思う……。アイツらに狙われた村はほぼ例外なく滅ぼされたって聞いた……。この村だって……」


 シャルが辛そうな顔で呟いた。














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