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14話 傍聴人……いや、傍聴石

 


 シャルが俺と話すことが出来る、という事実を突きつけられたデュオルとリムシュは、急遽村人の代表を集めて会合を行った。


 実は数年前に、父親の後を継いでデュオルがこの村の長となっていた。


 長はもちろん村の代表者ではあるが、独裁者という訳ではなかった。


 村の重要事項については長も含めた7人の村の代表たちで話し合って決められており、その会合を招集できるのが長であった。


 今回もデュオルが長の権威を発動して、すぐに村の代表者達を集会所に集めた。ちなみに代表者の中にはもちろんリムシュも含まれている。


 集まった自分以外の6人を見渡して、デュオルが口を開く。


「緊急招集に応じて頂き、感謝する。非常事態なので、まずはリムシュから状況を手短に説明をさせてもらう」


 皆に異論が無いことを確認すると、デュオルがリムシュに目線を送る。リムシュは軽く頷いて説明を始める。


「この神殿に賊が入ったことは皆も聞いていると思う。賊は今日の見張り番だったクラムとギルが捕え、今は兵舎に閉じ込めている」


 へー、この建物って神殿だったんだ。俺は割とどうでもいい所で感心する。


 その間に、リムシュはそれぞれが頷くのを確認して説明を続けた。


「この出来事に伴って現在二つの問題が起こっており、この会合ではその件について早急に話し合いたい」


「……賊が子供だったというのは本当か?」


 リムシュが話し終わると、髭面のオッサンが質問をした。


「ああ、本当だ。自分の年齢をよく分かっていないようだが、見た感じ10歳前後だと思う」


 デュオルが答える。


 10歳前後ってことは小学中学年くらいってことか? けど、さっき笑った時の幼い表情の方が素じゃないのかな? 大人っぽく見えるだけで実際は低学年ぐらいなんじゃないかと俺は予想する。誰も聞いちゃいないけど。


「その賊の子供はどうやら孤児らしく、ここに忍び込んだのは盗賊団に唆されてのようだ。一つ目に話し合いたいのがその盗賊団についてだ。どうやら盗賊団はこの魔石を狙っているらしい」


 リムシュがデュオルの言葉に付け足して、俺に目線を送りつつ、会合の一つ目の目的を話す。


「そうか……。ついにそういう動きが出てきたか」


「やはり有名になり過ぎたんだ。最近は魔石専門の盗賊団も出てきたと聞いているし、これ以上の祈祷者の受け入れはやめるべきではないか?」


「しかし、我々がこの魔石を独占していると近隣の村々に思われてしまっては、逆に争いの種になってしまうぞ」


「元々、デュオルとリムシュが見つけてきたものだ。我らの村の物であることは当然で、独占も何も無いだろう!」


「そうは単純にいかぬから、この状況なのではないか」


 集まったメンバーが口々に意見を言い合い、会合は一気にヒートアップした。


 お、おお……。俺の扱いって結構センシティブな問題だったんだ……。


「……落ち着いてくれ。魔石の所有権については別の機会に改めて話そう。今はひとまず盗賊団への対処について話し合いたい」


 デュオルが良く通る低い声で場を鎮める。


「盗賊団が魔石を狙っている以上、あの子供の侵入で事は終わらないと考えている。子供は恐らく斥候代わりに使われたんだろう。もしかするとこの村が襲撃される恐れがある、ということだ」


 リムシュの続けた言葉で場が沈黙に包まれる。


 俺がこの村に来てからずっと平和だったし、あまり戦いとかに慣れてない感じなんだろうな……。代表者たちの素振りを見て、なんとなく察する。


 沈黙を破ったのはデュオルの低音ボイスだった。


「村が襲われては被害も大きい。こうなった以上は、近隣の村にも声を掛け、盗賊団の討伐隊を組織するべきだと考えている。盗賊団との戦闘で多少の犠牲も出るだろうが……まずはこの件について意見を聞かせて欲しい」


 おお、なんだかデュオルが(おさ)っぽい……。随分成長したもんだ……。ちょっと上から目線で俺は会合を見守る。


 デュオルのその提案に明確に反対する者はおらず、盗賊団に対しては討伐隊が結成されることに決定した。



「では二つ目の議題だ――」


 デュオルが次の議題に移った時だった。突然、俺は自分の探知範囲内に不穏な気配が入ってきたことを感じた。


「捕まえた賊の子供についてだが……どうやら、この魔石の言葉を聞き取ることが出来るらしい――」


「は?」


「……どういうことだ?」


 デュオルの言葉に代表者たちは怪訝な声を上げる。


「そのままの意味だ。俺達も信じられなかったが、俺達しか知らないその魔石に関することを賊の子供が話したんだ……魔石から聞いたと言ってな」


 リムシュの言葉にまた場が騒然とする。


「なんだと?」


「そんなことが……」


 場に集う一同が、一斉に俺の方を見る。


 しかし、俺はそのとき別の場所へ意識を飛ばしていた。


 ――なんだ、この嫌な感じ。悪意の様な殺意の様な今まで感じたことの無いような負の感情の集団が村の近くに現れたのだ。


 久しぶりに遠隔地のイメージ化を試みる。しっかりと見える訳ではないが、意識を一定方向に集中させると結構離れている場所でもイメージで見ることが出来るのだ。


 この時、俺のイメージに映ったのは、殺意を隠そうともしない粗野な男たちの騎馬集団だった。


 ――これ、(くだん)の盗賊団じゃねーか!?


















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