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119話 メンバーには多様性が大事

 

「アダマント様、お待ちください。入り口から出口まで一週間かかる洞窟に今から入ってしまわれますと、明日の人間達との戦いに間に合わないのでは?」


 ワクワクしながら洞窟に入って行こうとした俺とエメラルドを、ルビーが冷静な意見で押し留める。


「む。確かにそうだな」


 あれ? ってかちょっと待てよ……。ってことは、今俺達の居る場所から、聖騎士団を呼び出したヤジリカヤ山の麓までに一週間かかるってこと……?


「あー、エメラルド。明日ヤジリカヤ山の麓に聖騎士団が来るんだが、ここから迎えにいくにはどうすればいいんだ?」


 俺は恐る恐る聞いてみる。


「えー。明日は無理。一週間かかるって言ったじゃん」


 ……マジっすか。


 やべぇ。あれだけ重々しく告知してきたのに、やってきた聖騎士団にいきなり放置プレイかましちゃうカンジになっちゃう? うわー、ルルリナとかめっちゃ激怒しそうだなぁ。こんなウッカリで人間と魔石の全面戦争になっちゃうのかなぁ。


 俺が悶々と悩んでいると、サファイアがため息とともに呟いた。


「はぁ……。だったらさ、このまえ崩しちゃった洞窟をもう一回通せば? 崩れたのは一部だし。すぐに通せるだろ、エメラルド? あの洞窟なら直線でヤジリカヤ山の麓まで行けるし」


「うん、うん! できる、できる!!」


 エメラルドがピョンピョンしながら答える。


「おお!! サファイア!! ナイスアイディア!!」


「いや、普通思いつくでしょ……」


 俺が思わず叫ぶと、サファイアは呆れた様な顔をして答える。相変わらずの塩対応。けど、これが褒められて照れているときのサファイアの反応だという事を俺は既に知っている。


 「よし。じゃあ、時間がないからそれぞれ分かれて準備を始めるぞ」


 サファイアの様子を生暖かく見守りながら、俺は手早くみんなに指示をした。


 俺とエメラルドは一緒に直線洞窟を通って、聖騎士団の待つヤジリカヤ山の麓へ向かう。


 ルビーとサファイアには、それぞれの試合会場に待機するように命令する。更にダイヤモンド(ジェムのことだぞ)にも同じ指示を伝えるようルビーに命令する。


 あ、そう言えば、ルルリナには六人の対戦相手を用意しろって伝えてたんだっけ。最初はキューちゃんとトパーズも戦力で考えてたからなぁ。今、こちら陣営は四天王と俺で、五人しか戦力が居ない訳だがどうしようか。


「ルビー。魔石の兵達の中で一番強いのは誰だ? この間、トパーズと戦っていたスピネルか?」


 俺が質問をすると、ルビーがすぐに答えた。


「いえ。スピネルも強いですが、一番強いのはアイアン隊長でしょう」


「ああ、あのゴツイおっさんか」


 俺はいつも魔石兵達を鍛えている、筋肉隆々でゴツくて体のデカい渋いおっさんを思い浮かべる。


「はい。先日ご覧いただいた訓練の時にも、アイアン隊長はトパーズとスピネルの全力の戦いにも耐えうる結界を張っておりました。あの二人の魔力を抑えるほどの力を持っているのがお分かりになったかと思います」


 うんうん、そう言えばそうだった。ま、その後、ブチ切れたエメラルドの隕石でその結界も破壊されてたけどな。


 まあ、でも魔王陣営は今の所、ガキくせーメンバーが多いからな。ああいうイケオジもいた方が女性ファンを獲得できるかもしれん。……っと、うっかり本音が……。あー、違うよ? そんなあざといコト考えてないよ? そうじゃなくてさ、あれあれ。なんだっけ? そう! あれ! ダイバーシティ!! やっぱりこういったチームには多様性が必要なんだ。上に立つものとしては多様な人材を積極的に採用していかなければならないからね。わかった? Do you understand?


「よし。じゃあ、アイアン隊長にはヤジリカヤ山側の入り口付近で門番をやってもらうぞ! 聖騎士団が入ってきたら、まずは第一の関門として立ちはだかってもらおう!」


「は? はい! 承知いたしました。では隊長にその命令を伝えて参ります」


 ルビーは一瞬怪訝な顔をしつつも、すぐにいつもの調子でキビキビと動き出した。


 さすがにルビーは俺との付き合いも長いだけに、俺の思い付き指令にももはや慣れっこの様子。一応は俺の事を信用してくれているのだろうと、勝手にポジティブに解釈しているが。

 

「さてと、じゃあ俺達も出発するぞ。エメラルド」


「わーい! 出発進行!!」


 こうして俺はエメラルドを連れて、先日崩落させてしまった洞窟へと向かったのだった。










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