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116話 魔王四天王、現る!


なんたる失態。

魔王四天王といえば、それぞれ違う属性を持っているのがお約束だろうが!?(俺調べ)


俺は頭の中で、次回予告風の煽りセリフを思い浮かべる。



勇者一行の前に立ちはだかるのは、最強の魔王四天王だった!

美しき、怒れる火の女王ルビー。

冷静沈着、水の貴公子サファイア。

トリックスター、地の愛姫エメラルド。

爽やか一本気、地の皇子トパーズ。

四人の強敵を前に勇者の隠された力が目覚める!?

次回、「魔王四天王、現る!」

お楽しみに!!



ほら見ろ、やっぱ地の属性が二つだとなんか締まりがないよな。しかも並べちゃうとトパーズが若干キャラ設定が弱いことに気付かれちゃうじゃねーか。これは困った。


ううむ……何か良い方法はないものか……。



「あの、アダマント様?」


 はたと黙り込んでしまった俺を見て、ルビーが俺の様子を伺いつつ声を掛けてきた。


しかし俺が何も答えずに難しい顔で考え込んでいるのを見て、これ以上は話しかけない方が良いと判断したらしく、黙ってその場に待機する。他のみんなもルビーの様子を見て、同じように静かにその場で待機する。


しばらく考え込んだ後、俺はおもむろに顔を上げて口を開いた。


「サファイア……今回ばかりは職務放棄は許さん。俺の指示に従ってもらおう」


 まずはサファイアの説得からだ。サファイアが四天王から抜けるのはありえん。水属性がないなんてダメ、絶対。


 いつもとは違う俺の真剣な声音にサファイアは驚いたような顔をする。そして、


「……分かったよ」


 サファイアはしぶしぶといった様子で頷いた。空気の読めるサファイア君はここで逆らう方がめんどくさいことになるとでも思ったのだろう。


 しかし、それで正解だ。ここで断ったとしても俺はどこまでも追いかけるからな。うん、と言うまでは。


 俺は殊勝な態度のサファイアに頷いてみせ、次にトパーズの方を向いて話す。


「そしてトパーズ。お前には今回、別任務を与える」


「別任務? なんだそりゃ?」


 首を傾げるトパーズに、俺は重々しい口調で別任務を言い渡す。


「うむ。チルサムをバンドルベルの本家、トルティッサの許へ送っていくのだ。お前が連れてきたのだから、最後まで責任を取ってもらう」


「な!じゃあ、俺は戦いには参加出来ないってことか!?」

「な!私を父上の許へ!?」


 トパーズとチルサムが同時に叫ぶ。俺はゆっくりと頷きながら再び口を開く。


「そういうことだ。戦いには参加できないがその代わり……人間界への滞在許可をやろう」


「え!?」

「え!?」


 トパーズとチルサムがまた同時に叫んだ。


「トパーズ。お前の気が済むまで滞在してきて構わない。お前、もっと人間を知りたいんだろ? だからこの機会に色々な人間に会ってみて、色々な見識に触れて、己を磨いてくるといい」


 俺の言葉を聞いて、トパーズが分かり易く目を輝かせる。


「ほ、ホントにいいのか!? アダマント? けど、どうして急に……」


「いや。お前キャラ弱い……ゲフン、ゲフン!! お前の修行になるかな、と思ってな。キューちゃんも二人に同行してやってくれ。トパーズのお目付け役を頼む」


 あぶねー、ついトパーズのキャラ設定強化の為という目的を漏らしてしまう所だったぜ。


 もちろんキューちゃんを同行させるのもキャラ設定強化の一環だ。ドラコーヌを連れた少年ってだけで既にビジュアル的にはいいキャラ設定だろ? あとは内面的に強化できれば、いずれは魔王軍の特攻隊長辺りに指名してやっても良いだろう。


 うんうん、イイ感じじゃないか。俺は魔王軍の未来予想図を想像し悦に浸る。


「承知いたしました。総領事館ではなく、バンドルベル本家にお連れすれば宜しいのですね?」


 キューちゃんが念を押すように聞いて来たので、俺は軽く頷きそのままチルサムに話し掛ける。


「という訳で、チルサム!」


「は、はい!」


 急に名前を呼ばれたチルサムは直立で返事をする。


「お前の悩みはきちんとトルティッサ(親父)に話せ。それにトパーズとの交流もきっとお互いの為になるだろ? 自分達のそれぞれの狭い世界だけでなく、色々な価値観を持つ世界があるんだってことが身に染みて分かるだろうからな。異文化交流だ、異文化交流。まずはお前達からやってみるといい」


 俺は目先の危険回避の為に、魔石達と人間との交流の自由を奪ってしまっていたことを反省しつつ、チルサムとトパーズにまずは交流をさせてみるのも悪くないと思ったのだ。


 ヴィータ教との戦いが終わったら、本格的に魔石と人間の交流についてどうしていくか考えないといけないしな。神のヤロウはムカつくが、人間と永遠に交流しないで暮らすなんてことはやっぱり出来ない気がするし。 




「あの、アダマント様? それでは四天王とやらのもう一人はアダマント様になる訳でしょうか?」


 俺が二人に話し終えたのを見計らって、ルビーが困惑したように質問してきた。うむ。もちろんこれに対しても既に考えてある。俺はニヤリとして答えた。



「いや、俺はあくまでも魔王だからな。四天王最後の一人は……これから説得しに行くんだ」













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