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110話 晴れ時々隕石、のち極寒

 

「言っとくけど、手加減なんかしないからな!」


 トパーズは右手に持った訓練用の片手剣を振り回しながら、エメラルドに宣言する。


「いーよー。死んだ方が負けねー!」


 エメラルドはニコニコと周りのギャラリーに手を振りながら、軽~く物騒な返事をする。


 二人が近付いたのを確認して、隊長が二人の戦闘範囲に先ほどの様に結界を張った。


「それでは、はじめ!!」


 隊長の開始の合図で、周囲の歓声が一際大きくなった。


「チルサム~! エメの強い所、見ててね~」


 試合が始まったのに、エメラルドはのんきにチルサムにアピールしている。――その隙に、まずはトパーズが岩石の弾幕で先制攻撃をした。


「ふふふ~。こんなのエメには聞かないもんね~」


 そう言いながらエメラルドはスッと左手を体の前に差し出す。するとエメラルドの前方に飛んできた岩石がピタリと動きを止め、地面にガラガラと落下した。


 それ以外の岩石はそのまま弾丸のようにエメラルドの周囲を通り過ぎ、結界の壁にぶち当たり、大きな音を立てて砕け飛び散った


 その間に間合いを詰めていたトパーズが持っている剣をエメラルドに振り下ろす。と、同時にエメラルドの前方の地面から大きな岩石が現れ、トパーズの剣の軌道を止めた。周囲に甲高い金属音が響き、トパーズの剣にヒビが入った。


「あれ? 剣が壊れちゃったなぁ……」


 トパーズが右手に持った剣を不服そうに眺めて呟く。


「ま、いっか」


 トパーズはニヤッと笑ってそう呟くと、ひび割れた剣をポイと捨てて、再度エメラルドに素手で殴りかかった。


「にゃはは。トパーズの剣、壊れちゃった!!」


 笑いながら、エメラルドが真正面から迫るトパーズの拳を受け止め、そのまま弾き返した。トパーズは弾かれた反動を利用して、クルリと空中で回るとそのまま地面に着地する。


「うわっと!!」


 トパーズが着地した瞬間、グニャリと足元の地面が歪んだように見え、トパーズが体勢を崩した。どうやらエメラルドが魔法でトパーズの足元の地面を泥に変化させたようだ。


「ひっかかったねー! エメラルドキーック!!」


 体勢を崩したトパーズに向かって、エメラルドは容赦なく飛び蹴りを仕掛ける。しかし、間一髪でトパーズは上体を逸らし、エメラルドの蹴りを躱した。


「あっぶね!」


 トパーズはそのまま泥をはね上げ、エメラルドの泥が届いていない場所までジャンプして泥から脱出する。


 その間、渾身の蹴りを躱されたエメラルドは自らの作った泥の沼に突っ込んで行き、全身泥まみれになっていた。


「うは! きったーねー」


 泥だらけになったエメラルドを見て、トパーズがケラケラ笑う。


 “ビシッ”


 その時、何かが軋む音が聞こえた。



「……あ、マズい」


「え?」


 サファイアがボソッと呟く声が聞こえて、俺は聞き返した。しかし、その答えを聞く前に広場が一瞬にして喧騒に包まれる。


「エ、エメラルド!?」


 チルサムの引き攣るような声を聞いて、俺は慌てて広場の中央に視線を戻した。――広場の中央には泥まみれのエメラルドが立ち尽くし、周りで見ていた兵士たちが戦慄するほどの殺気を放っていた。


「……ぶっ殺す」


 いつもの声よりも何オクターブも低い声でボソリとエメラルドが呟く。その直後、地面には放射状の亀裂が入った。


「おお、やっと本気になったか?」


 トパーズがエメラルドから駄々洩れる殺気を見て、少し真剣な顔になる。それもそのはずで、エメラルドから殺気と共に溢れてくる魔力は、トパーズの魔力を凌駕するものだったのだ。


 突然、エメラルドの姿が消えた。


「なっ!?」


 トパーズは思わず周りを見回す。


「上だ!!」


 俺は思わずトパーズに声を掛ける。一瞬でエメラルドはトパーズの頭上にジャンプしていたのだ。


 俺の声を聞いて、上空を見上げたトパーズに向かってエメラルドが巨大な岩石を降らせる。いや、岩石というよりも隕石だ。はるか上空から高速で巨大な火球がトパーズに向けて落下してきた。


 隕石は隊長の張った結界をぶち破り、そのまま広場へ落下してくる。広場が一瞬にしてパニックに包まれた。


「うお、エメラルドのバカが!! マジか!?」


 このままでは、広場に居る他の魔石達も巻き込まれてただではすまないだろう。俺が咄嗟に前に出ようとした時、俺の意図を読み取ったルビーが、俺を制止して言った。


「アダマント様のお手を煩わせるまでもございません。私が止めます」


 ルビーはそのまま両手を上空に掲げたと思うと、その手から巨大な炎の柱を現出させて隕石群をその巨大な炎に包み込んだ。


 一瞬、太陽が落ちてきたかと思うほどの光量に広場が包まれた。しかし不思議なことに熱は感じなかった。


 その代わり、ルビーの極寒のような声がザワつく広場を凍り付かせたのだった――。


「試合は中止です! ……エメラルドはこちらへいらっしゃい!!」











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