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12話 やや中二病を拗らしている石


――実は……実はですね。


こういう日が来ることを夢見て、ずーっと自分の名前を考えていたんだよ!! で、思いついたのがこの名前。強い鉱物っぽいっしょ? いやー、こんなところで中二病的知識が役立つなんて。


知ってる? “アダマント”とは“征服されない”という意味のギリシア語から来てるんだぜ(by ウィキペディア)。 ちょーカッコ良くね?



「?? なんて言ってるんだ??」


シャルがキョトンとした顔で俺を覗き込む。おっと、思わず日本語で捲し立ててしまった心のセリフが漏れていたらしい。


『ああ、すまん。お前らの言葉にまだ慣れてないんで、うっかりするとつい自分の言葉でしゃべってしまうんだ』


「ふーん……」


『で、さっきの質問の答えは? シャルはどうしてここに来たんだ?』


俺は話を元に戻す。


シャルは少し暗い顔になった。


「怒らないか?」


『は?』


「理由を言ったら怒らないかって聞いてるんだ」


『怒られるようなことしに来たのか?』


シャルはますます暗い顔をして口を噤む。……なんか小学校の先生になった気分だな。暗い顔で俯くシャルを見ながらそう思う。


『分かった、分かった。怒らないから、言ってみ?』


俺の言葉を聞いて、シャルは意を決したように口を開いた。


「アダマントを盗みに来たんだ……」


『ほっほう……俺をね。なんで?』


「親分が、この村の輝く黒い魔石を盗ってくれば俺を盗賊団に入れてくれるって」


『へー? 輝く黒い魔石って、俺のこと?』


「他に無いだろ……そんな珍しい魔石」


『ふーん。そうなのか』


輝く黒い魔石……か。いいね、いいね。っぽい感じするよ。俺は平静を装いつつも、ワクワクが止まらない。


「なあ、アダマント! 俺と一緒に来てくれないか? そうすれば俺も盗賊団に入れるんだ! 頼む!」


急にシャルが俺に頼み込み始める。


『……いや、一緒に来てと言われてもなぁ。俺、動けんし……ってか、そんな問題じゃなく!! 盗賊団に入るなんてやめておけよ。ドロボーになりたいのか?』


俺の言葉で、シャルはまた暗い顔になる。


「……だって、生きるためには仕方ないだろ。俺みたいな孤児はどこの村にも入れてもらえないし、外で野垂れ死ぬくらいなら、人のモノ盗んでも生き残らないといけないんだ……!」


シャルが握り拳に力を込めて、泣くのを堪えているかのように声を震わせながら言葉を絞り出す。


おお……こんな小さいのに、なんだか辛い思いをしてきたようだ。


『そっか……。お前なりに考えてるってことか……けど、盗賊団ってのはなぁ』


逆に捕まったらそれこそ殺されちゃうんじゃないか?



その時、突然“バタンッ”と勢いよく、外に通じる扉が開かれた。ドカドカッと複数人が部屋に走り込んでくる音がして、誰かが叫んだ。


「誰かいるのか!?」


マズい! 見張りに立っていた村の若者達だ!!


「チッ!!」


シャルは舌打ちすると、逃げる態勢を取る。


俺は一瞬で、この状況を活用する方法を考える。 逃げたらダメだ! 子供の足じゃ、どっちにしても捕まる! どうせシャルが捕まるんなら、イチかバチかだ。


『おい! シャル! 逃げるな! 一回捕まってデュオルとリムシュって奴らに俺と話せることを伝えろ!! デュオルとリムシュを呼……』


俺の言葉を聞いて一瞬逃げるのを躊躇したシャルは、あっという間に村の若者たちに捕らえられ、床に抑え込まれた。


「ぐっ!!」


大人の力で抑え込まれて、シャルが苦しそうに呻いた。


「おい! お前、何者だ!? ……な!? こいつ、子供だぞ!?」


「とにかく、村長(むらおさ)の所に連れて行こう!!」


そのまま、シャルは若者達に引き摺られる様にして、外へと連れ出されていった。


――頼む。上手くいってくれ……。俺は祈る様にシャルが連れて行かれた扉を見つめ続けた。














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