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105話 獄中インタビュー

 

「なぜ俺を殺さない?」


「殺す、ねぇ。そうは言っても、俺たちはぶっ壊れたって死なないだろーが? 石に戻るだけだ」


 神殿の更に地下深くに作った牢獄で、俺は目を覚ましたジェムと相対していた。


「石に戻ってしまえば死んだも同じだ」


「そっか? 石のままでもできることはいっぱいあるぞ」


「うるさい、早く殺せ」


 独房の粗末なベッドに横たわったまま、ジェムは俺を睨む。俺の攻撃でジェムの体は大ダメージを受けており、体は全く動かないようだ。回復するのにもしばらくはかかるだろう。


 しかし、問題はこいつが動けるようになってからだ。ここは牢獄とは言え、ジェムが先ほどの戦いで発揮していたような本来の力を使えば、あっさり脱獄できるだろうし、その時はどうしようかなぁ……なんて考えながら、俺は口を開く。


「なあ、お前。なんで『神』と一緒にいたんだ? 人化は自力でしたのか?」


「黙れ。くだらん質問をしてる暇があるなら今すぐ俺を殺せ!」


 全く取り付くシマが無い。これが噂のくっころ系ヒロインか……。え? 違う? 


「はぁ、分かった分かった。じゃ、質問に答えてくれたら殺してやるわ」


 俺も面倒くさくなって、冗談交じりにジェムにそう提案すると、予想外にジェムが真面目な顔で答える。


「それは本当か? ならば答えよう。お前に殺されるのであれば本望だ」


「え!?」


 おい! (いさぎよ)すぎるだろ! 武士? 武士なの? 


 俺は自分で提案しておいて、しばし絶句する。だってこんなにあっさりジェムが取引に応じてくるんだもんね、動揺するっしょ?


 OK。まずは落ち着こう、俺。いいじゃん。答えてくれるって言ってんだから、とりあえず色々聞こう。俺は改めてジェムに質問を投げかける。


「そうか。じゃあ、まずは今『神』はどこにいるのか、教えてくれ」


 ジェムの気が変わっちゃうかもしれないので、とりあえず一番知りたい質問をまずは聞いてみる。


「あいつはヒットゥイの教団本部に居る」


 おお、何の躊躇もなく……。そうか、ハッティルト帝国の首都ヒットゥイか。教団本部と言うとルルリナの実家か? やっぱりあいつらは繋がってる臭いな。


 ってか、マジであっさり答えてくれるし。どうやらジェムには『神』に対する忠誠心的なモノは無さそうだな。……今の答えが嘘じゃなければ、だけど。


 まあ、この調子でじゃんじゃん聞いていこう!


「ではさっきの質問だ。お前はなぜ『神』と一緒にいたんだ?」


「アイツの近くに居れば、強い奴と戦えるからな」

 

「……」


「……」


「……えっ? それだけ?」 


「それ以外に理由などない」


「ハア、ソウデスカ」


 マジかよ……やっぱコイツほんまもんのバトルジャンキーだわ。やべーわ。『俺より強い奴に会いにいく』とか言っちゃう奴だ。


 うーん。ま、いいか。次にいこう。


「次の質問。どうやって魔石から人の姿になったんだ?」


「知らん。気付いたらこの姿になっていた」


 いやいやいや、何かあるっしょ!?


「例えば、動けるようになりてーとか、その姿になる直前になんか思わなかったか? 人化する時になにかきっかけがあっただろ?」


「ふむ……」


 俺は自分が人化したときの事を思い出しながら、ジェムに詰め寄る。ジェムは過去の記憶を辿っているようだ。そしておもむろに口を開く。


「そう言えば、俺がこの姿になったのは『神』(アイツ)と初めて会った時だったな」


 ジェムの話によると恐らく、人間達が『神』へ捧げた供物の中にジェムの元の姿である魔石が含まれていたようだ。


「人間どもを見ても何も思わなかったが、アイツを見た途端、戦いたいと思ったんだ」


 その時に人化したって訳だ……うん。人化の理由もバトルジャンキーらしいわ。ブレねーな。


「で、『神』とは戦ったのか?」


「戦っていない。……奴には実体が無いのだ。人間に乗り移れば戦闘はできるが、その力は乗り移った人間の能力以上には発揮できない。アイツの本当の力を引き出せる人間(うつわ)が見つかったら戦う約束で、アイツの器探しに付き合っていたんだ」


 ああ、それがさっきの「アイツの近くに居れば、強い奴と戦えるからな」って答えに繋がる訳か。


 ふーん。それにしても今の話って結構重要なんじゃねーか? 『神』のヤロウに実体が無いとはな。だから直接攻撃じゃなくて、夢で精神攻撃してくるのが得意なのか?


 俺が考え込んでいると、ジェムがイラついたような声で怒鳴った。


「おい! いつまでこんな質問を続けるんだ!? もう十分だろう? 早く殺せ!」


 うぉっと。なんだよ、流石バトルジャンキーは気が短いな。


「何言ってるんだ。まだまだ聞きたいことはあるんだ。ま、お前も戦いの後で疲れているだろうし、あとの質問はまた今度にしよう」


 俺がにこやかにそう言うと、ジェムが吠えるように叫んだ。


「貴様! 質問に答えたら俺を殺すと言ったではないか!!」


「おう。だからまだ質問が終わってないんだってば。じゃ、またよろしくな!」


 俺が片手を上げて軽くそう言うと、またジェムの叫びが牢獄に響いた。


「くそっ!! アダマント、貴様!! ふざけやがって!!!」











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