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92話 新しい仲間


「すっげー! すっげー! なんだ、これ? へえ!」


 黄色の魔石はその場で腕を回してみたり、ピョンピョンとジャンプをしてみたり、体の動きを一つ一つ確認するように動かしながら、「すっげー!」を繰り返していた。


 しばらくその様子を見ていたルビーがこちらを振り返り、俺の許へカツカツと優雅に歩み寄る。


「アダマント様、さっそくこの者に名付けをお願いいたします」


 ルビーが畏まって俺に頭を下げる。相変わらずルビーの言動はなんか大袈裟だ。などと思いながら俺は考え込む。


 うーむ。やっぱ宝石の名前が統一感があっていいよなぁ。こいつは黄色い透明な石だから――。


「トパーズ……かな?」


 俺がボソリと呟くと、ルビーはスチャッと頭を下げた。


「ありがとうございます。これでトパーズも我々の一員となりました」


 そう言ってルビーはゆっくりと頭を上げ、今度は黄色い魔石『トパーズ』に向かって良く通る声で話しかけた。


「トパーズ」


 ルビーの呼び掛けに、まだピョンピョンしていたトパーズがキョトンとした顔で動きを止めた。


「えーっと。それって俺のこと?」


 ルビーは頷く。


「ええ。貴方はアダマント様に『トパーズ』という名前を与えられました。我々も貴方と同じでこの姿と名をアダマント様から頂いています。つまり、あなたも我々の同胞として迎え入れられたという訳です。という事で、まずはこの世界についてこちらの『サファイア』から学んでもらいます。……サファイア」


 ルビーに呼ばれてサファイアが渋々前に出る。


「……なんかコイツ、面倒くさそう」


 ぼそっと呟いたサファイアの言葉を聞き逃さず、ルビーはジロリとサファイアを睨んで小声で釘を刺した。


「途中で投げ出したら、今度こそ許しませんよ」


「……わかったよ。 トパーズだっけ? まずは服を着なよ」


まだ全裸でキョロキョロしているトパーズに向かって、サファイアが渋々声を掛ける。


「あ! 私が服渡す! 渡す!」


 エメラルドが事前に用意されていた服をむんずと掴み、タタタ……とトパーズに駆け寄って服を渡す。


「はい! これ着て」


「お、おお? ……なんだコレ?」


 トパーズがエメラルドから渡された服を摘まみ上げながら、シゲシゲと眺める。


「こうやって、ここに頭をガボッと入れて、ここの穴からこうブサッブサッと手を出すんだよー」


 妙に擬音の多い分かり辛い説明をしながら、エメラルドが服の着用の仕方をトパーズに教える。


 「ふーん。こうか?」


 「あー、そうそう!」


 おお、エメラルドが中々役に立っておる!! なんだろう、このちょっと嬉しい気持ち。出来の悪い子供ほどかわいいという言葉はこういう事か……と思いながら、俺はエメラルドとトパーズのやり取りを微笑ましく眺めた。


 「ったく、アダマントが甘やかすとこっちがやり辛くなるんだよ」


 生暖かく微笑む俺の横でサファイアがグチグチと何かを言っているが、聞こえないふりをした。


 「ほら、いつまでも遊んでないで、行くよ」


 「うぇ、ちょっと待ってくれよ! 今せっかく面白い所なのに!!」


 一回きちんと着用したのにまた脱いで逆に着てみたりし始めたトパーズを引っ張って、サファイアが機嫌悪そうに言った。


 「えー、もういっちゃうのぉ! 今、トパーズが面白いこと始めてたってたのに~!」


 服を逆に着始めたトパーズを見て、何が面白いのか全然分からんがゲラゲラ笑っていたエメラルドが、名残惜しそうに不満を言う。


 「……うるさい」


 サファイアがこれ以上ないほどの塩対応でエメラルドを突き放して、そのままトパーズの腕を掴み連れて行った。


 「えー私も一緒に行くー!! おべんきょするー」


 しかし、当のエメラルドはそんなサファイアの塩対応にもめげずに、二人の後を追いかけていく。この鈍感力たるや、俺も見習いたいものだ。


 「お前は来なくていい!!! ってか絶対に来るな!!」

 

 「やだやだ! 私も行くー!!」


 サファイアの悲鳴のような声と、エメラルドがワガママを言う声が段々と離れていくのを聞いて、俺はなんだかホッとする。


 ――サファイア、やかましいのを連れて行ってくれてありがとう。


 心の中でそう呟きつつ、


「じゃ、俺は政務室に戻るわ」


 と、ルビーに伝える。


「はい、ありがとうございました。あとは我々にお任せください」


 そう言って頭を下げたルビーに見送られ、俺は地下宮殿を後にした。





 ――『エメラルド』と『トパーズ』の組み合わせがヤベェという事に、俺達が気付いたのはそれからずっと後の事だった。











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