表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/17

アイネクラリスの前世

アイネクラリスが、シオン殿下へと送った手紙は、明日宮廷魔法署へ出向く為に必要な、通行所への連絡をお願いするものだった。


ここルルーシュラ王国には、魔力を持つ者が一定の数存在するものの、ある一定の魔法を使えないと魔法署には在籍することも、部外者が足を踏入れることも出来ない。


魔法といっても内容は様々で、攻撃魔法・防御魔法・治癒魔法・創造魔法色々と分類され、王国の繁栄を陰ながら支えている存在だった。


中でも、祈りの乙女という祝福魔法を持つ者は稀で、ルルーシュラ王国に加護を与える四神に遣える事を義務付けられている。


この祈りの乙女というのが、実質魔法署のトップとなるのだが、祈りの乙女が複数存在する事は無かった。


というのも祝福魔法自体の希少性に加え、四神が常に四神で王国に加護を与えている訳では無いからだ。


ルルーシュラ王国の建国に尽力したと言われている四神は、王国が平穏を取り戻すと、有り余る加護を良しとせず、一神にて加護を与える事としたらしい。


周期は祈りの乙女の一生涯。祈りの乙女が生涯を終えると共に、神も次の神へと引き継がれる。


その折に王国にもたらされる加護も変わるってくるらしく、数十年周期で、繁栄する内容も変わっていた。


現在このルルーシュラ王国を加護している神は、火を司る神である為、主に軍事力が他国を圧倒するほど勢いを伸ばしている。


それでも、他国を占領する動きが無いのは、一重に国王の采配なのだと、父であるランディスト公爵が話しているのを良く耳にした。


元々四神の司る力が違うために、同じ加護とはいかないのだろう。


神が変われば加護も変わるといった、漠然とした事をアイネクラリスが疑問もなく受け入れられるのは、前世の記憶があるからに他ならなかった。


アイネクラリスの前世は、先代の風を司る神に使える祈りの乙女だった。


祝福の魔力を持ち、国に淀む負の概念をひたすら浄化する為の乙女。


風を司る神の性質が浄化なのだと、毎日重くなる体を嘆いていた際に教えられた時には、だから歴代の風を司る神に使えた、祈りの乙女の生涯は短いのかと、納得したものだ。


数百年かけて溜まった負の概念を、風の神の代で一層する。


そして、また新しく王国は歩み出すのだ。


その事にアイネクラリスは何の悲しみも憂いも無かったが、死に逝く瞬間、血相を変えて駆け寄ってきた騎士の、憤った表情だけは心残りだった。


風の神の性質を説明すれば良かったのか、それとも自分は後悔していないと伝えておけば良かったのか…。


息が切れる瞬間に初めて持った疑問が脳裏を離れず、願ってしまったのだ。


生まれ変わったら、ラティアス・ヴァン・ハンドレットと共に生きたいと…


悔しそうに、声を殺して涙を流した騎士に、またいつもの皮肉げな笑みを浮かべて欲しかったから。


「何故、ラティアスは私が分からないのかしら?」


無意識に漏らした声は、隣に控えていたリリーの耳に届いたらしく、力なく肩を落としている。


「それは、挨拶程度の面識しか無いからだと思います」


至極当然とばかりに返された言葉に曖昧に頷くのと同時に、宮廷魔法署の通行所へと辿り着いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ