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めっちゃ遅れてしまいました。


はい、私は三日坊主の鏡です。


私の持ち物についての話し合いをするために晩ご飯を食べ終わった私達は冒険者ギルドの取調室の様なところに来ていた。

先程のスキンヘッド、毒舌女子、隻眼男もだ。


こいつら絶対野次馬根性で来ただろう。と半眼で三人を見た。それと、こいつら誰だ?冒険者の様な気もするけど、女子はそうじゃないっぽいしなぁ。


と思いながらも、この席に同席させるということはそれなりの立場の人間か、或いはただ信頼に足る人物ということだろう。





「では、ユーコさんの持ち物についてお聞きしたいことがあります。」

「答えられる範囲ならば。」

「…それでいいです。」

連れてこられたギルドの小部屋は部屋の中に天井にぶら下がる魔力的な要素のない普通の照明と木製の椅子と机だけだ。しかし、良く見渡して考えるとなかなかに歪な部屋だ。窓もない閉鎖空間で、魔力で探るとどうやら何か魔力的な要素で発揮する結界の様な物が何枚か張ってあった。王城にあった拷問部屋、尋問室の様な部屋の物より少しだけ高度なものだが、私にはあまり意味をなさないようだ。効いていないわけではないのだが、魔法が使えないわけじゃない。強いて言えば、魔力を行使するときに普段の2倍の魔力が必要ということだけだ。

さて、そろそろ現実を見ようか。

「では、質問します。」

「はい。」

「それは、魔道具ですね?」

机の上に無造作に置かれた私手製のリュックに指を指して言うディーンさん。

やっぱり魔道具って言うんだ。

「はい。」

かなり慎重だな。

「その魔道具はアイテムボックスですね?」

「はい。」

「性能をまず教えていただけますか?」

「はい。このアイテムボックスは容量は無限で時間を調整することができます。」

「っ!色々聞きたいことがまた出てきましたけど、まぁ、それは後でいいです。」

苦しそうな歯に何かが詰まって取れない様なもどかしい顔をするディーンさん。

あれだな、ポテチの奴だ。

「まず、そのアイテムボックスの入手先を教えていただけますか?」

これは、どう答えたものか。

ふむ、じゃあ、こうしようか。

「いいですけど、それを聞くにはここにいる全員に魔力的な契約をしてもらう必要があります。」

「へ?」

「俺もか?」

「…」

野次馬が何で契約しないんだよ。

「魔力的?まずどういった契約内容なんですか?契約魔法があるのは知っていますが、契約魔法用のかなり高価な高位ランクの魔物の革で作った紙を使わなければいけない筈です。」

「……あぁ、そういうことですか。」

成程、それと結構あくどいことをするなぁ。

「どういうことですか?」

「いえ、こちらの話です。それと、これも契約内容に加えた方がいいのかな?」

「……私にも理解できるように詳しく説明していただけますか?」

うーん。これって研究されていなかったのかな?

「いいですか?私の契約魔法は半物質な紙を必要としません。」

「ハン、ブッシツ、とはなんですか?」

「はぁ、まずはそれからですね。それと、まず簡単な私流の前提知識を教えましょう。でないと、理解が出来ない様ですし。」

馬鹿にはしていない。私が研究してきて至った結論だからな。それと、日本語も混じっているし。

「まず、この世の中の物を根本的に分ける必要があります。私は元から魔力が関わっているもの、魔力で出来ている物に魔力的な要素が絡んでいる物と言っています。長いと思いますが、専門用語を用意してしまうとややこしくなるのでこのままにしています。そして、魔力が全く宿っていないものこれを私は物質と呼んでいます。そして、半物質とは魔力と物理が相乗効果を生んでいる、又は外的要因で物質から半物質、つまり、皆さんの言っている魔道具の様な存在が半物質です。」

「…」

ディーンさんは能面だったが、それでも人間だったが、今は目が死んだ魚の様になっている。

そして、野次馬の人達は毒舌は頭に?を浮かべて、スキンヘッドは案外頭がいいのか顔を顰めながらも理解しているようだ。そして、隻眼は、表情をピクリとも動かさず静かに聞いているようだ。理解しているのかしていないのかは全く分からない。

「そして、私が使う紙は完全に魔力で出来たものです。なので、紙自体が魔力です。しかし、本当は紙は要らないのですが、内容をおぼえ書きとして紙に書きます。まず、契約には濃密な魔力が必要です。何故なら、あぁ、これは言わなくてもいいですね。」

「…………そうですね。私は胸焼けしそうです。」

そうかぁ?

「私の行う契約魔法は手間はかかりませんし、かなり細かいことまで調整できます。そして、強力です。それに契約内容の改竄や契約内容を確認できますしね。これは呪いではありませんので、死ぬか、契約を双方同意で取り消すしか契約を中断する方法がありませんしね。では、宜しいですか?」

「……覚悟は出来ていますよ。」

なんだかかなりげっそりとした顔で言うね。ディーンさん。

「では、手順を教えます。


1、私と契約者(ディーンさんと野次馬共)が向かい合う。

2、紙とペンを作る。

3、紙にペンで契約内容を私が書く。(言語は何でもいいが、双方が理解できる言語でなければいけない。が、字を全く読めない人に契約実行者が内容を騙して書いては契約が実行されない。尚、正直に説明するのならば大丈夫。)

4、契約書の裏に各自自分の名前をペンで書いて、血判状の様に自分の血で拇印を押す。

5、契約内容と契約者の名前を読み上げる。

6、全員が同意して、契約完了。


です。わからないことがあったら聞いて下さい。」

スッと手を挙げる人が一名いた。ディーンさんの後ろの壁に寄りかかって腕を組んでいた隻眼だ。

「はい。」

「契約が完了した時、契約書はどうなる?」

「あぁ、そうですね。完了した時契約者達の血液に流れることになります。つまり、傍から見るとただ消えた風に見えます。それと、契約内容を確認したいときは『血判状』と言っていただければ身体の魔力をちょっと拝借して具現します。」

「ケッパンジョウか。わかった。」

流石にこれは日本語だな。この世界に血判状という言葉があるのは知っているが、何かの拍子に具現してしまったら面倒だ。

「じゃあ、構いませんね?あと、偽名を使わないで下さいよ。出ないと死にますんで。神とかなんとかの力で不老不死でも空間の狭間で一生迷子は嫌でしょう?」

これはなかなかにえぐいが私は自分の身を守るためならそうするね。特に敵には容赦しない。

「それと、魔法で自白されそうになっても大丈夫です。喋ろうとすると口が開けなくなりますから。」

なんか、喋っててこれって悪魔の契約みたいと思ってしまった。

スキンヘッドと毒舌は顔を盛大に顰めている。隻眼はあれだな、仁王像みたいだ。

「紙とペンは、っと。」

私は自分の魔力で作った紙とペンを慣れたように作った。そりゃあ何年も何十万枚の様に大量生産していたらそうなるだろうな。

見た目は前世のコピー用紙とボールペンだ。私のイメージがこれだからな。

私以外不思議な顔をして紙とペンを見ている。紙の白さと質、ボールペンの使い方などに興味深々だ。

「契約内容は


【洋子の許可があるまで洋子が秘密にしていることを話してはならない。秘密の量は契約後でも変わる。


洋子の秘密


・研究内容

・家

・出自


洋子であれば契約内容は変更できる。

洋子の秘密を仄めかすことをしてはいけない。秘密を知っている契約外の者には喋っても良い。

契約者が契約を破った場合、不老不死の場合は空間の狭間に幽閉される。洋子の許可が下りれば幽閉は解除され元の場所に戻る。そうでない場合はそう言った意図で言葉を発すると即死する。】


こんなもんだな。」


ふぅ~、っといった感じで汗を拭う私。勿論汗なんぞ書いていないが、雰囲気だ雰囲気。

「お前ってヨーコだよな?」

「いえ、本名は秋月洋子です。こちら風に言うとヨーコになるだけです。」

「成程、って、お前さん姓を持ってんのか?つまり、貴族ってことか?」

「いえ、貴族ではありません。」

「ふーん。ま、何でもいいけどよぉ。変更しようと思わねぇけど、こりゃあえぐいな。」

「アーロンさんの足の匂いを一生嗅ぐよりマシですよね?」

「言いすぎだろ!そりゃあ!」

言い過ぎって言うか、それは契約抜きにしても嫌だな。

「はい。異論はないってことで、裏に名前と拇印をお願いします。」

素直にディーンさんと野次馬共がサインと拇印を押す。

「え~、


【洋子の許可があるまで洋子が秘密にしていることを話してはならない。秘密の量は契約後でも変わる。


洋子の秘密


・研究内容

・家

・出自


洋子であれば契約内容は変更できる。

洋子の秘密を仄めかすことをしてはいけない。秘密を知っている契約外の者には喋っても良い。

契約者が契約を破った場合、不老不死の場合は空間の狭間に幽閉される。洋子の許可が下りれば幽閉は解除され元の場所に戻る。そうでない場合はそう言った意図で言葉を発すると即死する。】


署名

アーロン

メイリーン

バーベル=ジン

ラ・ナユタ

秋月洋子


契約に同意しますか?」

「同意します。」

「おう、するぜ。」

「同意する。」

「はい。」


「秋月洋子も同意します。」

すると紙が砂の様になって空気に溶けていくように消えた。

ぺかーっと光るような派手なのではなく、マジで地味だ。

「はい。終わりです。じゃあ、もう遅いので歯を磨いて寝ましょう。はい、解散っグエ。」

私はさっさと寝ようとおこちゃまな身体に鞭を打って部屋を出ようとするが、隻眼の人、つまりジンが私の首根っこを掴んだので私の首が締まり私の口からは蛙の様な声が出た。

「おい、待て。まだ、その魔道具の説明を聞いていない。」

「あ、そうだった。」

私は忘れていたとポンと手を打った。


後ろでは、スキンヘッドことアーロンと毒舌ことメイリーンがぺかーっと光るような派手なものを期待していたようでポカーンと呆けていた。ディーンさんこと、ラ・ナユタは今後も色々苦労することだろう。今度胃薬を進呈しなければ。私は再度椅子に座り直した。


「この魔道具はそうですね。私の作ったものの一つです。魔具と言いまして、魔道具と同じように聞こえますが、私の魔具は完全に魔力から作り出し、魔道具は魔力的な要素のある素材と素材を合わせて、その相乗効果を利用した物が魔道具です。魔力という共通点はありますが、結構違いがあります。そして、魔具は魔力100%なので魔法や魔術を使うときにすごく便利です。このリュックの名称は特に決めていません。普通に私のリュックだとかそんな認識です。いちいちつけていたら埒が明きませんので。これの能力は《空間接続》《リスト化》《劣化不可》といったものです。」

「ちょっと、待ってください。ユーコさんは空間属性の適性のある魔法使いではないのですか?それと、よくわからないのがあるのですが。」

ナユタ、いや、ディーンさんはそう言った。

「空間接続は文字通りこのリュックの口で空間を接続することです。いちいち手動で繋げるわけにはいきませんから。リスト化というのはこのリュックの口から入れたものを文字通りリスト化することです。リスト化をしないと何を入れたか忘れてしまいます。リスト化されたものはこのリュックから物を入れたり出したりするときに頭の中で表示されます。劣化不可というのは中の物が腐るのを防止とかではなく、このリュックそのものが劣化不可ということです。リュックの中身が劣化しなくとも、リュックが劣化しないわけではないですから。それと、私は魔法関係の本を一切読んでいないので、属性なんぞ全く知りません。私の魔法は独学ですからね。」

まぁ、私はこれでもちょっと不満があるけど。

私が説明しきるとディーンさんの顔が険しくなっていた。

「つまり、これはあなたの作ったもので、私達の知らない効果が沢山あるという事ですか?」

「端的に言えばそうなります。それと、このリュックは元々物質です。効果は完全に魔力で補ってもこのリュック自体は物質なんです。そして、私がこのリュックを使う許可を出さない限り、限られた人しかこのリュックは使えません。開けれないわけではないのですが、許可のない人が使うとただの劣化しない丈夫なリュックに成り下がります。」

「ん?どういうことでしょうか?本来魔道具は効果の格に合った物を用意しないと物が耐えられない筈なのですが。そのリュックは普通のリュックに見えますが。」

いや、それは魔具と物質を合わせたものにも適用される。

つまり、このリュックはなかなかの高ランク素材の何かだという事だ。

「いや、正体は明かしませんが、確かにあなた方から見ると、とても高価で希少なものになるでしょう。私だって発見した時は驚きましたからね。」

確かにこのリュックの素材は高い。魔力が全く宿っていなかったので、元々物質だと私は思っているが、この素材の凄いところは、魔力の浸透率が凄まじいことにある。どうしてそうなったかわからないが、とても魅力的なものだという物だという事は分かる。

「けど、流石に教えません。」

皆わかっているという風に頷く。

「これでいいですか?また明日から資料室を整理しなければならないので、それと、ディーンさん。」

「はい。」

キリっとした顔で何か覚悟したような顔をするディーンさん。

「そんな身構えなくとも大丈夫ですよ。…資料室の事なのですが、ディーンさんにいちいち手間を取らせるのも何なので、フリーパスか何かをくれませんか?まぁ、自由に資料室のみに出入り出来たら何でもいいのですが。」

「わかりました。検討しておきましょう。それと、ギルドの仮眠室は資料室の右隣ですよ。」

「ありがとうございます。じゃあ、おやすみなさい。」

「おやすみなさい。」

「おやすみ~。」

「おう、良く寝ろよ。」

「…」

一人だけ何も言わなかったが、私は無視をして、退室した。



********



「ギルドマスター。どういたしますか?」

「まぁ、権限は新しく作ればいいだろう。資料室支配権とかなんとかでもいいだろう。あいつならなんとかしてくれそうだしなぁ。」

「しかし、一冒険者しかも、子供にですよ?」

「お前だってわかっているだろう。あの子供は普通じゃないって。本当は上に報告しなければならないんだろうが、それは敵にまわすような行為だろう。」

「…」

「そらみろ。それと、もう既にお前のお節介で借りができたじゃねぇか。」

「…はい。」

「しかし、お前も難儀だな。その顔でその性格とはな。」

「苦労したことはありませんので、特段難儀とは思いませんが。」

「勘違いするヤロウどもが沢山いるじゃねぇか。」

「まぁ、そうですね。引退してからこれに目覚めてしまったのでね。仕方がありませんよ。」

「まぁ、それで俺たちも助かっているんだが。」

「兎に角、ヨーコさんには資料室を管理する権限を与えましょう。」

「そうだな。詳細はお前が決めろ。決まったら俺に一度通せ。」

「わかりました。」


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