表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/18

1-3



あれから5年。


部屋から出させてもらえたのはハイハイが出来るようになってから。それまでは窓の外を眺めたりなどしかさせてもらえなかった。髪の毛は伸びたら切ってという風に確実に男の子として育てられている。服もフリフリのドレスなどではなく、貴族の坊っちゃんが着る様な服だ。THE・ボンボン。そして、言語がわかるようになってきたのは1歳を少し過ぎた頃。やっと挨拶や日常会話が解るようになった。怪しまれないように2歳の後半からちょっとずつ喋った。3歳になるころには拙い喋り方でメイド達から黄色い悲鳴を沢山いただいた。それからこちらの母とこちらの祖母が見栄を張るために王都から呼ばれた家庭教師に文字を教えてもらっている。うちは貧乏だったのだ。あの私の部屋も借金をこさえて作られた部屋のようだった。爵位は男爵ですらなく、騎士爵だ。下手したらそこらの役人の方が地位が高いくらいだ。父は男尊女卑の塊のような騎士で、第一子の私が男でも女でも男として育てるつもりだったみたいだ。ひどいな。そして、今後子供をこさえることはないそうだ。そして、やはりという感じで親の性格は最悪のようだった。母親は借金をこさえまくって宝石やドレスを大量に買っている。父親は仕事は仕事でも騎士の仕事しか専念していないようだった。領地経営は最悪で税は吊り上がり、不正の毎日。祖母は男爵家の出でここよりも贅沢な暮らしをしていたようで、こんな騎士爵の様な田舎貴族では私じゃない。ということでこれまた見栄っ張りが発動して、骨董品や母親と同じくドレスや化粧品や宝石を買い漁っている。そして、私は阿呆の子を演じているので滅茶苦茶気に入られている。こんな家出て行ってやるけどな。

「おーい。何を考えているんだい?オスカー。」

「あ、せんせぇ。今日の晩ごはんなんだろうなぁっておもって。」

「フフフ。そんなことを考えている暇があるならこの問題を解いておしまい。」

「はぁい。」

私は貴族の阿呆子息を演じているのだ。もう私の属性がわかんなくなってきた。

「せんせぇ。なんでおとなりの国はせんそうしているの?」

「ん?戦争かい?」

「うん!」

私はこうやって情報得てから、隣町まで伸びる魔力で情報収集をして確認するのだ。二度手間だが、仕方がない。うちの親が阿呆なのが悪いのだ。因みに私の名前はオスカー・デリック。デリック騎士爵の嫡子ということになっている。父親はオットー・デリック、阿呆の申し子だ。母親はハイデマリー・デリック、これまた阿呆の申し子で香水をつけすぎてアンモニア臭の様な香りがする歩く公害と化している。祖母は父方の祖母で、バラ好きなのは構わないが毎日つけているバラの香水のつけすぎで匂いがきつく、こちらは最早歩く災害とされている。特にヤバかったのは、家の中を走っている鼠が祖母と母親とすれ違った時に匂いだけで死んだことだ。ちらりと私はその様子を見て戦慄したのを未だに忘れられない。

おっと、話を聞かなければ

「じゃあ、この大まかな国の位置はわかるかな。」

「うん!」

私は現代日本ではありえない程大雑把且つ全く分かりづらい地図を見て返事をした。だって。国境と有名な森とか山とかの地名しか書かれていないし。これなら前世の昔の近所のおばちゃんが書いた地図の方が正確でわかりやすかった。

「ここが大体今私達がいるところだよ。」

そう言って先生は大雑把に指を指した。

「私達が住んでいるのがリュート王国だね。そして、ここはデリック領。デリック領を東に進むと未開地のタイラントがある。リュート王国を南下するとイーサン帝国に行く。お隣さんって言っているけれど、ほんのちょっと国と国がくっついているだけだね。そして、西に行くとククリ王国があるね。よっぽどのことがないとフランタイルやルシアン、ハルディル公国まで行かないね。そして、最西端の国がナタ王国。それと、覚えておいた方がいいのが、カナリス聖国だね。国土は小さいけれど、私達が信仰している聖神教の本部がある国だからね。」

私は無神論者だ。まぁ、宗教団体を侮る気は全くないけどね。私が何より警戒しているのが宗教団体だからね。宗教程胡散臭いものはないな。一番欲が集まりやすいのが宗教だと私は自論を持っているくらいだ。

「はぁい。」

「で、戦争をしているのがイーサン帝国とルシアン王国だね。きっかけはもうよくわからないね。こっちがこうした、こっちがこうしたっていう感じだからね。」

水掛け論か。

「じゃあ、どっちの王様が賢いの?」

「王様じゃないよ。オスカー。帝国の君主は皇帝と言うんだよ。で、王国は王様で合ってるけど、公国に王様はいないんだよ。ハルディル公国は四人の公がそれぞれ一つずつ領土をもって国を治めているんだよ。で、公をまとめているのが大公なんだ。あと、特殊なのがユタ商国だね。この国は戦争をしない国なんだよ。商人たちが国を支えていてね。商議会というのがあるんだよ。これはまた話そうか。まず、商国は十数人の議員たちが大商会の商人でね代表の人が毎年商国の国民たちが投票して決められるんだよ。それで、どうして、戦争をしないのかというとね。商人は戦わずして戦うんだよ。」

「どういうこと?」

大体言いたいことは分かるが解らないふりをする。

「商人は武器をいや、剣を取らずにペンを持つからだよ。ペンと紙と頭と口とお金が商人の武器なんだよ。」

「ふ~ん。」

やっぱり。けれど、アナログ世界で生きてきた分、頭の回転が速い奴が居そうだな。まぁ、私は頭と足と時たま武力で頑張るけどね。

「ちょっと難しかったかな?」

「続きは?」

「ん?うん。そうだねぇ、」

先生は意外そうな顔をして肩眉を上げる。糸目の目が少し開いたがそこから覗く眼光は鋭利な刃物の様に鋭い。

「じゃあ、どうしてタイラントは未開地だと思う?」

「う~ん、わかんない。」

これは摩訶不思議な力が関わっているとしか考えられんな。ふふふ、そこにあと数年で住む私はどうなるのだろうね。全く楽しみだ。

「それがね………






先生にもわからないんだぁ!」






ハハハとあっけらかんとした笑いをする先生は何故かどこか愉快そうだ。意味が解らない。

「それがね。不思議なことにリューン王国やイーサン帝国も未開地に足を踏み入れたことがないんだよ。どうしてだと思う?」

「なんで?」

まじでなんで?

「それがねぇ、フフフ。」

「?」

私は首を傾げた。

「国が未開地を進もうとするとどうしてか何かの非常事態が起きるんだよ。でも、皆何も疑問に思っていないんだよ。」

「どうして?」

先生は反射するアンクルをかけ直すとニタリを笑った。どこか粘着質な笑顔で気持ちが悪い。

「どうしてでしょうねぇ、先生にもわかりません。でも、先生は疑問に思ってますよ。」

「ふしぎだねぇ。」

「おっと、もうこんな時間ですね。」

先生が外を見るとすっかり夕焼けに染まった景色が広がっていた。先生の顔を見ると元の糸目の狐の様な顔の地味な男に戻った。

「もうすぐでごはんだぁ!先生!ごはんいっしょにたべようよ!」

「すみません。私はこれから用事あるのです。オスカー、君は聡明・・です。それくらいわかりますよね?」

「はい!僕はそうめい?な子です!」

「よし、いい子です。では、今日はこれで失礼します。さようなら。」

「さようならぁ。」

私は先程の聡明をやたらと強調してきた先生を誤魔化して別れた。

金に釣られた訳でもない家庭教師は何処か闇のある人だった。


あかんわ。


********




「オスカー、勉強はどうだった。」

父が勉強の進展を聞いてきた。私は阿呆っぽそうに答えた。

「うん、騎士が凄く立派だってことが分かったよ。父上、僕騎士になりたいなぁ。」

「そうか。」

欲しかった答えが返ってきたのだろう。オットーの声が少し軟化した。満足そうな雰囲気が声に滲み出ている。

「オスカー、騎士になるなら王都にお母様を連れて行ってね。」

「私も連れて行きなさいね。」

「うん、わかった。」

私は公害と災害を目の前に全然美味しくないものを食べるフリをする。フリというのは私が食べ物を食べるフリをしているということだ。食べ物は基本的に自分で作って食べるのが私の基本スタイルだ。魔力操作の応用で手を作り赤ん坊の時は自分で離乳食を作っていた。いつ毒を食べるかわかったもんじゃないからな。この人達は恨みを買い過ぎている。オットーは無意識だろうが、それも悪意だ。食べるフリをして口に入れたものは咀嚼するフリをして毒がないか独自の魔法で解析。毒がないなら結界に転移そこで乾燥させサラサラにし、畑の肥料にするつもりだ。毒があれば毒素を分解し、残ったカスを前記と同じようにする。

「じゃあ、僕おべんきょうしてきます。失礼しました。」

「ああ。」

「…」

「…」

上から父、母、祖母だ。気に入られていると言ってもこの程度だ。私もこの人たちに情の一ミリも湧いていない。



さて、これから美味しい美味しい食事をしましょうか。


私はさっさと部屋に籠り鍵をかけた。


********



転移したところは沢山の収穫物が実っている畑だ。そして、いたるところに小屋の様なものが建っていた。

「ボス!」

「ボスダ!」

「こんばんワ!」

「ボス~!」

よくよく見ると畑のあちこちに緑の小さな人がいた。

「こんばんわ。ご飯食べに来たよ。」

「ボス!今日はコノ野菜ガ!」

「イイヤ!オレんチの野菜が!」

「ボス~!今日はデッカイ獲物とったヨ!」

私の周りに集まってくるのはツナギのような服を着たゴブリンと子供ゴブリンだ。

「はいはい。通して。いつ誰が部屋に来るかわからないんだから。」

周りのゴブリンたちがシュンとする。

私はそんなゴブリン達の姿に苦笑いをこぼす。

「でも、この白菜はお新香にするとおいしいから作ったら?お米とよく合うよ。畑仕事した後は塩分を取らなきゃいけないから丁度いいと思う。」

「オシンコ?」

「うん。今度教えてあげる。で、今日は美味しいサラダの作り方を教えてあげる。女の子たちを集めてきて。」

「わかっタ。」

私は受け取った白菜とキャベツを腕で抱える。ふふふ、たわわだな。

「子供たちは手を洗っておいで。手を洗い終わったらお手伝いしてもらうから。」

私は微笑ましい物を見るような目でゴブリン達を見る。

「「「「「ハ~イ!!」」」」」

ゴブリンは賢い。今までその環境が整っていなかっただけだ。ゴブリン達には日本語とこちらの世界の言語を教えている。出来る者には両方を。大抵は日本語だ。何故かと聞いたらボスの言葉だから。と言うのだ。思わずほろりとしてしまったくらいだ。歳をとると涙もろくなるなぁ。

「お肉は捌いておいてね。」

「モウさばいてマス。」

「お、じゃあ、見せて。」

「じゃあ、台所に持ってイクんでマッテテクダサイ。」

「わかった。あ、それと、日本語上手くなったね。」

「ッハい!」

ゴブリンは顔を嬉しそうに綻ばせて走って去っていった。私は周りの風景をゆっくりと見渡しながら進んでいった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ