4話 カーペ
4〜カーペ〜
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カーペへの同中にある村に時折立寄り水と少量の食料を分けて貰いながら一行は急ぎカーペを目指して進む。
かなりの強行軍で進み本来イゾルデからカーペまでは5日かかる所を僅か3日足らずで到着した。
流石に皆疲労の色が濃く出ているのでカーペで補給などを行なった後にすぐに出発するのでは無く一日を予定より早く着いた為に休養日に当てる事にした。
グレイス達はまずはこの街の代官を任されている士爵に挨拶に向かった。
このミルハイム王国の爵位は以下の通りだ。
国王
↓
大公
↓
公爵
↓
侯爵=辺境伯
↓
伯爵
↓
子爵
↓
男爵=女男爵
↓
準男爵=女準男爵
↓
騎士爵
↓
士爵
となる。
この国はある程度女性の権利を認めており女性でも男爵以下の爵位なら当主になれる制度が出来ている。
これは先先先代が女王となった時に出来た制度である。
流石にそれ以上の爵位は多数の貴族の反対により制定されなかったがこれでも他国に比べれば破格の物だろう。
そして騎士爵位以下は半貴族と呼ばれる。
その由縁は子爵以上の爵位の持主に任命権があり自身の領地の一部を預ける事が出来る為だ。
これは領主の代わりに派遣される代官の不正が多かった事が起因で先先代のミルハイム国王が新たに制定した制度と爵位である。
それまでは騎士とは言え一代限りの名誉職でそこまで権限は強くはなかったが、この制度が出来ることによりミルハイム王国の各地の不正は粗方粛清され領主の信頼が厚い側近が領地の一部を任される事になった。
それによりミルハイム王国は急速に国力が上がり一気に大国までのし上がり騎士の国とも言われるほどに優秀な騎士を多数輩出する国へと様変わりした。
周辺の国からも騎士を目指す若者がミルハイム王国が創った騎士養成学校に通うようになった。
このミルハイム王国には現在五つの学校が存在し主な領都に最低一つは存在する。
この五つのうち一つだけは王都にしかないが他の四つは各地に存在する。
一つ目は、王都だけにある貴族院。貴族の子息、子女が通う上流学校で将来の国の要職に就く人材を育てる為に創設された。
二つ目は、この国を強国にした先先代のミルハイム国王が創設した騎士養成学校。ここで騎士の心得や騎士に必要な技術を学ぶ。
三つ目は、学園だ。場所により○○学園と名前は変わるが此処は庶民も通える所で優秀な人材の輩出を目的に創設された所だ。
四つ目は、ミルハイム王国士官学校だ。騎士団とは違うミルハイム王国の防衛を担う兵士達の士官を育てる学校で身分は問わず通う事が出来る。(爵位によりスタート地点が違うが其処は許容範囲だ)
五つ目は、ごく最近創られた魔術塔だ。ここは世界でも限られた者しか使えない魔術を普及させ国力の増強を見込んで創られた塔だ。
現在魔術を使える(そのレベルに問わず)人数は約1000人に一人と言われている。
更に其処から攻撃魔術や防御魔術が使えたりする人材は5000人に一人の割合だ。
魔術大国で知られるマジール魔国は小国ながら大国に匹敵すると言われるほどに魔術は強力な物だ。
実際にマジール魔国の魔術士隊100名で1000名の部隊を圧倒したと記録にある。
以後割愛……
つまりそれだけ魔術は強力と言う事だ。
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急な来訪にこの町を任されているログワーズ士爵は驚きてんてこ舞いだ。
急ぎ歓迎の準備に奔走するログワーズに歓迎は有難いが無用で疲れている為に寝床の確保をお願いした。
ログワーズ士爵の館ではとてもでは無いが収まらない人数なので家令に命じて宿の手配を急ぎ行なった。
「ログワーズ士爵。先触れも出さない急な来訪すまぬな」そう言い謝るのはヨルゲだ。
彼は騎士爵なのでログワーズ士爵よりも上だがそれでも威張り散らしたりする事はなく丁寧に比例を詫びる。
「いえ、何か事情があるのでしょう。お気になさらずに」とログワーズ士爵はグレイス達の事情を何となく察した。
その反応だけでヨルゲはログワーズ士爵が有能な人材だと判断した。
その後それぞれ部屋を充てがわれた。
アレスはグレイスの言もありなるべく近い部屋を借り受けた。
その後軽く一同は夕餉を取った後割り当てられた部屋で就寝した。
勿論アレスはパールを労った後でだ。
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-翌朝-
アレスは日が昇り切らないぐらいに起きた。
今日はグレイスから「護衛は必要ないからゆっくりと羽を伸ばしなさい」と仰せ付かっているのでこの町を散策しこの世界の文化などをある程度体験し学ぼうと思っている。
宿の裏庭に行き其処で型稽古を二時間ほどする。
終わる頃にはすっかりと太陽は昇っている。
こちらの世界も太陽は一つだが月は二つ目ある。
大きさは地球と同じぐらいの月にそれよりもふた回り程小さい月の二つだ。
なので地球よりも夜は少しばかり明るい。
汗を掻いたので井戸に行き瓶を中に入れ水を汲み上げそれを頭の上から浴びてさっぱりとする。
イベントリからタオルを出し身体を拭い拭き終わったらタオルを簡易の魔術で新品同様に戻す。
後程わかる事だがアレスが使用している魔術はこの世界の魔術と違い精霊魔法とこの世界では言われている。
こちらの世界の魔術の上位互換の様な物でその習得者は両手で数える程だと言われている程に使い手は少ない。
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さっぱりとした後自分の部屋へと戻り服を着替えてパールの元へ寄ってから町へと繰り出した。
勿論服の襟には新たな(鎧に装着するのとは別のと予備として1組ずつ新たに貰った)徽章をちゃんと付け腰には護身用の剣を付けて出掛けた。
お金はグレイスから少しばかり貰っている。
まあ、この世界の貨幣価値がわからなかったので後で旅の最中仲良くなった騎士の一人に聞いた。
貨幣価値は国ごとに多少変わるらしいがこの国の貨幣価値は以下の通りだ。
王金貨=10億円
↓
白金貨=1億円
↓
大金貨=1000万円
↓
金貨=100万円
↓
大銀貨=10万円
↓
銀貨=1万円
↓
小銀貨1000円
↓
大銅貨=100円
↓
銅貨=10円
↓
鉄貨=1円
となる。
基本的に大金貨より上の硬貨は貴族か大商人以上ではないと使用しない様だ。
そしてグレイスから渡されたのが金貨5枚つまりアレスの現在の所持金は500万と言う事だ。
グレイスの様な大貴族の令嬢からしたらこれで少しばかりらしく領都に戻れば刺客達から救った報奨金も別途渡すとの事だ。
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アレスが一番に向かったのは武器防具を取り扱う店だ。
もしかしたらこの世界独自の物があるかもしれないと子供の様にワクワクとしながら足早に(事前に場所は仲良くなった騎士から聞いている)向かう。
通りは行き交う人で溢れていた。
家族連れの親子や買い物の主婦それに旅人と思わしき旅装に身を包んだ若者など千差万別の人々が通りに溢れていた。
それを目当てに露店の商人などは積極的に声を掛けてと活気に溢れていた。
中でも一番目についたのが武装した者達だ。
少し目的とは違うが面白そうだとその者達の後を追けて行くと一つの大きな建物の中へと入って行った。
書かれていた看板を読む(この世界の文字も問題なく読み書きが出来た)とそこには傭兵組合所と書かれた建物だ。
【|Wirklichkeit】ではギルドなどは無かった為に新鮮に感じられる。
好奇心に惹かれて中へと足を踏み入れてみる。
案の定こちらを値踏みする視線が多数向けられた。
彼ら傭兵は商売敵でもある他の傭兵の実力を見定めようと新たに入って来る人物には必ず目をつける。
それが例え依頼者だとしても一応チェックは入れとくのだ。
アレスはそんな視線に臆する事なく不快に思う事もなくただ自然体にそれらの視線を受け流す。
【|Wirklichkeit】時代もこう言う視線は多数向けられた。
いやこれよりも酷い妬み嫉みも中には合った。
それと言うのも【|Wirklichkeit】では最強プレイヤーの一人に数えられて居たからだ。
だが、アレスは最強プレイヤーの一人に数えられていたとしても慢心せずに毎日鍛錬を飽きもせず続けた。
最強プレイヤーはアレスを含めて9人居たがその内アレスが会ったことがある人物は僅か2人だけだ。
まあ、中にはアレスの事を知らないモグリもいるが……アレスがここに来る前に襲って来た盗賊団がそれに当たる。
例えアレスが一人いたとしてもあれだけの人数と装備では敵ではないからだ。
中級以下のプレイヤーが上級プレイヤーそれも最上級のアレスを狩ろうとすると、それこそ化物を狩るほどの準備や計画などが必要になるだろう。
それほどまでに隔絶とした差があるのだ。
閑話休題
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どういった依頼があるのか掲示板に行き見てみると後ろから声を掛けられた。
「そこのあんちゃん。新人かい?そっちは傭兵専用の掲示板だよ。まだプレートを下げて居ないところを見ると依頼者か登録希望か?」
と声を掛けて来たのはこの中でも一際大きく2mはあるだろう筋肉隆々の禿げ頭の山賊の頭みたいな額に大きな傷のある巨体の男性だ。
「いや、どちらでもない。ただの興味本位で覗いて見ただけだ」と応える。
大男はこちらの全身を一瞥して「見た所騎士さんかい?」と仕立ての良い服装に腰に差している剣と襟の徽章を見て告げる。
「ああ、そんな所だ」と無難に応える。
「そうかい。まあ中にはガラの悪い連中も居るから気をつけてくんなぁ。まあ、見た所相当の腕をお持ちの方の様ですがね」と顎を摩りながら言う。
アレスはこの男の評価を一段階上げると共に警戒度も同じく上げた。
「では、あっしはこれで」と言い受付の方へと歩いて行く。
その大男の通る道が自然と空いて行く事からこの組合所で上の立場の人物だろうと当たりを付けて組合所に併設されて居る酒場を一瞥して1人で呑んでいる若い男に-ーと言ってもアレスよりも年上だ-ー話しかける。
勿論酒を一杯注文してそれを片手にだ。
男の正面の席に座り無言で酒の入ったジョッキを男の手元に置く。
「ふん。わかってるじゃねえか」と言いジョッキの取っ手を取りグビッと一口飲むと「…で。何が聞きたい?」と質問して来た。
「先ずは先程俺に話しかけて来たあの大男は何者だ?」
「ああ、あの人はこの町……いやこの周辺一帯で最高の傭兵団の副団長だよ。強面だが新人にも親切でそれでいて強ぇのなんのってな。粗暴な奴らもあの人が来てから大人しく真面目になったな。そしてそんな副団長オレゴールさんよりも強く逞しいのが団長のメリディアさんだよ。女性だが優れた統率力と指揮力や戦術眼をお持ちの女傑だよ」とベタ褒めだ。
「その傭兵団の名は?」
「ああ、それはな……『暁の夜明け』さ」
「構成人数は約300人と傭兵団としては小規模な部類に入るが一人一人が精鋭揃いの集団で数が多いだけの奴らなんか鎧袖一触さ」と上機嫌に話す。
その後色々聞いたが全てを鵜呑みにはせずに他のたむろしている傭兵からも話を聞いた。
大体のこの辺りの周辺国の情勢やこの国について聞いた後組合所から出て本来の目的地の武器防具や鍛治屋などがある商業区に向かった。
To be continued......




