表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/43

グレイ、内乱の後始末をする1

 


 内乱が終結した翌日。


 グレイとレンブラントは帝城のとある一室にいた。いや、一室と言うには些か物騒な場であった。何故ならそこは……


「貴様ら!私を出すのだ!何故私のような高貴な人間がこんな豚箱に入らねばならんのだ!」


 この場所は城の地下にある地下牢。


 その十数にも及ぶ牢屋は1箇所を除いて、全てが埋まっていた。無論、中に入っているのは、何時ぞやに強化獣人たちを使って帝国へのクーデターを企てた反皇帝派の貴族たちだ。


「黙れ」


「ヒィィィー」


 レンブラントが軽く殺気を乗せて一言そう告げると、先ほどまで騒いでいた貴族の1人が潔く黙った。


「てめぇに聞きたいことがある」


「な、なんだ」


「てめぇらのアジトは何処にある?研究施設は?全て話せ」


「はっ!そんなこと話すと思うてか?」


「……話さないなら話させるまでだ」


 レンブラントは魔法袋からいくつかの拷問具を取り出し、その貴族の前に並べて置く。


「この中でどの拷問具がいい?てめぇに選ばせてやる」


 レンブラントが置いた拷問具は左から順に親指締め機、頭蓋骨粉砕機、ワニのペンチ、膝砕き器、九尾のネコ鞭。


 貴族はそれらの拷問具を見ると、瞬時に顔を青くし、アジトや研究施設の場所をホイホイと語り出す。ついでにクーデターの協力者で、まだ捕まっていなかった者たちの名前までペラペラと語ってくれたのは僥倖であった。


 グレイとレンブラントは、クーデターの協力者捕縛をメリナとサンドラに任せて、早速研究施設へと向かった。


 貴族の話では既にアジトには誰もおらず、研究施設の方には牢に捕らえている獣人がいるとのことだからだ。


 研究施設の場所は帝城からほど近い場所にある酒場の地下。“灯台下暗し”とはまさしくこのことだろう。


 グレイとレンブラントは酒場に着くと、躊躇なく入り込み、カウンター下の床を外した。すると、貴族の話の通りに地下へと続く階段が現れた。


「……なんかベタだな」


「そうか?よくできてると思うが……。普通酒場に秘密の入り口があるとは思わんしな」


 レンブラントにとっては物珍しく、よくできた隠れ家に思えるが、グレイにとっては違う。地球の創作物に慣れた彼には酒場の秘密基地など見慣れた、いや読み慣れたものであったからだ。しかし、異世界に来て、創作物と同じような仕掛けが見られたことに内心心踊っていたりするが……。


「とりあえず入るぞ。レンブラントは後ろを警戒してくれ。大丈夫だとは思うが念の為な」


「わぁーてるから、任せとけ」


 グレイは不謹慎ではあるが、秘密基地的な雰囲気に少し張り切りながらレンブラントに指示をする。


 そして、2人は暗い階段を一段一段慎重に降りて行った。やがて、一番下まで辿り着くと、前方に木製の両開き扉が見えてきた。


「アレか……」


「そうっぽいな」


 グレイの呟きにレンブラントが返す。


 そして、2人は扉に手をかけ開け放つ。すると、眩いばかりの光が2人の目を襲った。


「「目がぁぁぁ!目がぁぁぁ!」」


 2人は案の定、光に視界を奪われた。だが、それは決して攻撃や目眩しを食らった訳ではない。薄暗い場所から光り輝く場所に出たら誰しもが経験する唯の例のアレにすぎない。


 ーーそして1分後。


「酷い目にあった」


「あぁ、帰ったらあいつら一発ぶん殴ってやりたいくらいだ」


 グレイは素直に感想を述べ、レンブラントは理不尽な怒りを地下牢に捕らえているかの貴族たちに向けた。


 2人は目の回復を待って再び進んでいく。


 研究施設に設置されているカプセルは計画が開始後だったため、全てが空だった。おそらく、いや確実に計画の開始前までこのカプセルの中に獣人たちが入れられていたのだろう。


 グレイとレンブラントはそんなカプセルを横目に只管ひたすら進んでいく。


 すると、やがて突き当たりに鉄格子が見えてきた。おそらく、そこに捕らわれた獣人たちがいるのだろう。


 グレイは小走りでそこへと向かう。


 鉄格子の中には3人の女の子の獣人がいた。年の頃はおそらくグレイと同じだろう。


「今出してやるからな!だから少し下がってくれ!」


 グレイが一言そう告げると猫獣人三人組はコクコクと頷き、後方へと移動した。グレイはそれを見届けると剣を抜き、鉄格子に2回斬りつけた。すると、鉄格子は抵抗なく切断され、カランカランと音を立てて地面に落ちた。グレイはできた隙間から鉄格子の中へと入り、猫獣人三人組に近寄る。


「あ、あの、ありがとう、ございます。も、もうダメかと、お、思っていました。ヒック」


 猫獣人三人組は緊張の糸が切れたのか、泣き出してしまった。


 グレイはそんな猫獣人三人組を見て、心が痛んだ。そして「もう少し早く来ていれば」と栓無きことをつい考えてしまうのだった。


 レンブラントはそんなグレイの心情が理解でき、彼の肩に手を載せるのであった。



 ♦︎♦︎♦︎



「ごめんなさい。もう大丈夫です。助けて頂いて本当にありがとうございました」


「「ありがとうございました」」


「怪我はしてないか?」


 グレイが猫獣人三人組に問う。


「大丈夫です。少し切り傷があるだけですので」


「私も同じです」


「私も」


 グレイはそれを聞くと、インベントリから死蔵していた【エリクサー】を取り出した。


「コレ飲んでくれ」


「えっ?いや頂けません!ポーションなんて高価なもの」


 彼女は【エリクサー】をただのポーションと勘違いしたようだ。しかし、グレイにとっては朗報であった。もし、【エリクサー】だと知ったら飲んでくれない可能性が高いからだ。なんでもカナリア曰く、【エリクサー】はヤバイ薬らしい。無論、ヤバイのは価値であるが。


「コレ俺が作ったやつだからタダ(・・)なんだ。だから飲んでくれ」


 そのため、グレイは“タダ”というのを強調して押し付けるようにして渡す。「女の子が肌に傷を持って生きるのは可哀想だったからな」とは後々のグレイのセリフだ。


「う〜分かりました。有り難く頂きます」


「「ありがとうございます」」


 猫獣人三人組はグレイから【エリクサー】を受け取ると、蓋を開けて飲み干した。すると、3人の怪我が劇的に治り出し、綺麗な肌へと戻った。


 しかし、それを見てレンブラントは少し不審に思う。それは「ポーションって古傷まで治ったっけか?」ということだ。


「おい、グレイ。それってポーションか?」


「いや、【エリクサー】だ」


「【エリクサー】?!」


「「「ゲホッゲホッ」」」


「まぁだが、“タダ”っていうのも本当だし、“俺が作った”ってのも本当だから問題はない」


「「「「問題大有り(です)(だ)!」」」」


「そうか?」


「「「「そう(です)(だ)!」」」」


「うーん、インベントリに大量に死蔵してるんだけどな……」


「「「「……」」」」


 4人は何も言えなくなった。伝説的な妙薬が大量に死蔵されているというその事実に。そして4人は思った。この天然は放っておいたらいけない、と。


 それから4人は帝城に着くまで只管ひたすら【エリクサー】の価値について懇々と言い聞かせるのであった。


 後日、この話がカナリアの耳へと入り、「グレイ様!あれほど【エリクサー】の価値についてお教えしましたのに!」とプンプン怒り出すのだが今はまだ知らぬ話なのである。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ