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グレイ、内乱に巻き込まれる1

 

「チッ。どうなってんだよ」


 グレイは悪態をついていた。それは建国祭の1日目が終わりに近づいていた頃、突然武装した集団が会場に転がり込んで来たからだ。


 彼は襲いかかって来た獣人たちを【電撃《スタン》】で気絶させていくが、いかんせん数が多かった。しかし、獣人たちを殺すわけにはいかなかった。何故なら、武装した獣人たちは皆、なにかしらの魔法か魔道具によって操られているからだ。


「グレイ!」


「レンブラントか」


「こいつら操られてるぞ!」


「ああ、分かってる。多分、【対王国戦線同盟】の強化人間だ」


「なんだそれ?まぁいい。後で詳しい話を聞かせろ」


「ああ分かった。獣人は殺すなよ?」


「無論だ」


 グレイはレンブラントと別れ、再び獣人を無力化していく。


「これは元を叩かんとダメだな」


 グレイは戦いながら獣人たちが操られている原因を探っていた。その結果分かったことは魔道具からの電波を、耳に取り付けられたピアス型の魔道具で受信し、操られているということだ。


(電波を満遍なく飛ばすには高い建物か。何処だ?)


 帝国は王国と同じく大国だ。当然ながら帝都も栄えており、高い建築物などはいくらでも乱立している。その中から、たった一棟の発信源の建築物を探すのは困難を極める。


(国王はレンブラントがいれば問題ないな)


 グレイは少し離れた場所で戦っていたレンブラントに近寄り、戦いながら声をかける。


「レンブラント!獣人を操る原因を見つけた!おそらくは高い建物から電波を飛ばして操るタイプの魔道具だ!獣人の耳についているピアス型の魔道具が受信体だ!それを破壊しろ!」


「分かった!」


「俺は大元を破壊しにいく!」


「頼む!」


「国王は頼んだ!」


「了解!」


 グレイは会場を【電撃《スタン》】を乱発しながら後にする。


 街中に出ると、街中もまたひどい有様であった。帝国民を始め、周辺国家からの観光客は悲鳴を上げながら逃げ惑い、衛兵や警備兵は獣人と乱戦に陥っていた。


 グレイは歯を噛み締めながらも、その場を抜け、高い建築物の捜索にあたった。


 おそらく、今回のクーデターは強化獣人が要となっている。いくら貴族の3割が反皇帝派だと言っても、皇帝直下の騎士団などには敵わないからだ。


 そのため、獣人を操るための魔道具が置かれている建築物の周囲は防備を固めているはずだ。グレイはそう当たりをつけ、帝都を縦横無尽に走り回る。


 そうして探し回ること1時間。グレイはようやくそれらしい建築物を発見した。


 帝都北東部に位置する塔。通称”遠見の塔”。


 その塔周辺部には今まで以上の密度で敵兵と強化獣人が警戒にあたっていた。


 グレイは正面から突破を図る。


 獣人は殺すわけにはいかないので、まとめて【範囲電撃《エリアスタン》】で気絶させていく。


 ただの敵兵は、向かってくる者は刀で斬り伏せ、遠くにいる者には【電撃《スタン》】を飛ばして無力化していった。


 塔周辺部の敵勢力を粗方無力化すると、塔へと歩を進める。塔の扉には強化魔法が施されていたが、グレイは魔法巧者なので【魔法解除《ディスペル》】を使用して解除し、蹴り開ける。


 塔内部にもそれなりの戦力があったが、グレイにとっては、ただの雑魚でしかなかった。ただでさえ、今のグレイは非人道的なやり方に対して怒りモードなのだ。そんなグレイに相対した相手の将は名乗り終わる前に吹っ飛ばされ、敵兵はそれを見て逃げ始める始末であった。


 グレイはそんか敵勢力を尻目に階段を駆け上がっていく。


 そして到着した塔の頂上部の部屋。その扉を開くと、案の定そこには魔道具が置かれていた。見た目は旧世代のパソコンだろうか?


「なんだ?何か報告かね?先ほどから階下が騒がしかったようだが」


 そしてグレイに背を向ける形で魔道具を操作する白衣を着、メガネをかけた研究者風の男がいた。


「報告?そうだな。とりあえず後はお前だけだ」


「は?何を言って……なんだ貴様は?」


「俺か?俺はそうだな。ただの冒険者だ。獣人の、な」


 グレイはそういうや否や被っていたフードを脱いだ。


「とりあえず死ね」


 グレイは刀を抜き放ち、袈裟斬りに振り下ろした。


 ーーキィィィン!


 しかし、そんなグレイの攻撃は横から出てきた獣人の男に防がれた。どうやら隣室にいたらしい。


「チッ」


「よくやった、1021番」


「……」


 研究者風の男の満足気な声に対し、獣人の男は無言で返した。


「どうだね?私の最高傑作は?この男は獣人の、いや人間種での限界を超えたと言える存在だ。まぁ寿命が短いのが少しネックだがね」


「ゲス野郎が」


「なんとでも言うがいいさ。所詮勝った者が正義だ」


 グレイは【電撃《スタン》】を獣人の男に対して放つ。しかし、獣人の男は避けずに受け、何事もなく立ち続けていた。


 グレイの目が驚愕に染まった。何故なら、この【電撃《スタン》】という魔法は彼のオリジナルでAランクの魔物でさえ気絶させる威力があるのだ。


「珍しい魔法を使うようだけど無駄だよ。彼の魔法耐性は限界まで引き上げてある。それこそ、消し炭にするくらいの威力でなければ、まず効かないだろうさ。だが、君にそれが出来るかな?同じ獣人の君に?彼はこう言っちゃなんだが罪なき者だ。むしろ善良と言っていい。獣人の子供を人質にしたらアッサリと捕まってくれたからね」


「……聞いてもいないことをさっきからタラタラと」


「ははは。私はね、自慢したいのだよ。それに教えたところで為すすべがないなら意味ないだろう?」


「舐めんな!【武甕雷《タケミカヅチ》】!」


 グレイは獣人の男ではなく、魔道具を直接狙うことにした。そして放った魔法は、この状況で使える最も威力の高い魔法である最上級雷魔法の【武甕雷《タケミカヅチ》】。


 魔法は魔道具に向かって猛スピードで飛んでいった。しかし、魔道具に当たるや否や見事に弾かれてしまった。弾かれた魔法は塔の壁を突き破り、空の彼方へと消えていった。


「効かんよ。アダマンタートルって知ってるかい?前に運良くその素材を手に入れてね。それを使っているのさ」


 アダマンタートルは放出系の魔法に対する絶対耐性を持っている。故に魔道具に威力のある直接攻撃を叩き込むことでしか壊せない。


(殴りてー!過去の俺!)


 アダマンタートルはグレイが冒険者ギルドに売り払った素材だ。彼は意図せず過去の自分に邪魔される形となった。


 仕方がないので、魔道具の破壊は刀で行うことにした。


 しかし、直接攻撃を叩き込もうにも目の前の獣人をなんとかしなければならない。


 もし、獣人の命を考えなければ一瞬で解決できる。しかし、なんの罪もない獣人の男を殺すのは気が引けた。それが研究者風の男の思惑通りだとしても、グレイにも引けないことはある。


受信体であるピアスがあれば、それを斬り飛ばすまでだが、どうやら目の前の獣人の男にいたっては、受信体は別の箇所にあるようだ。それらしいものは全く見当たらない。


(戦いながら隙を見て魔道具を破壊するしかないな)


 グレイはそう結論づけ、獣人の男に相対することを決めた。



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