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竜のツノと狼の尻尾  作者: 日向守 梅乃進
第二章
19/63

侍女頭と獅子将軍の薫陶

やっぱり戦闘シーンは難しい!

徐々にでも上手く書いていけるよう精進します!

  色づいた毒牙から逃れる様に帰城した二人。まず兵舎に荒くれどもの引き取りを手配し、兵舎の食堂で遅めの昼食をとった。そこからラウルはクレアと別れて城に向かった。午前はガースルトの手伝いと警邏、午後からは勉強のお時間だ。フェッロから文字通りビシバシ作法を叩き込まれていた。

 野生児の暮らしをしていたラウルには少し窮屈だが、必要な事だとは理解している。しかしその前にアッシュとユキに甘えるように抱き着いて部屋に戻り、シンゲツを腰に差して城の客間に向かう。

 その後アッシュは降り積もる雪に喜びねぐらの近くで走り回って行き交う兵士達を驚かせたが、その内何人かは挨拶を投げ掛けられていた。ユキは時折翼を伸ばし雪をその身に広く受けながら機嫌よく喉を鳴らしていた。


「さ、今日もテーブルのマナーです」

「はいっ、フェッロさん」

「よろしい、私はオウルとは違って厳しく行きますから、そのつもりで」

「いいえ、先生も厳しく教えて、くれ、ました」

「・・・訂正しましょう、オウルのように厳しく教えていきます」


 意気込むように口にして、細い鞭の様な棒を片手にテーブルマナーを教えていくフェッロ。その声も淡々とした感情を感じさせないもので厳しく教えられた。フェッロのマナー講座は始まってまだ二日と日も浅いが、それなりの早さで言われた注意をラウルは飲み込んでいく。侍女頭の執務室で淡々とした声の合間になる鞭の音。

 隣の侍女の休憩室では見習いからベテランまでの侍女が休むのだが、皆耳慣れているのか普段通りお茶を飲みながら過ごしていた。その中にはイーリスの姿もあった。彼女達もこうして鉄の美女からの厳しい指導を受けて侍女としてこの城で奉仕に務めている。その誰もが鉄の美女こと、フェッロを悪く言う者はいない。彼女の鞭は侍女達から文字通りに捉えられているからだ、愛の鞭だと。


「いいでしょう、まだ人前には出せませんが。手順はしっかり覚えていますね」

「はいっ、ありがとうございます」

「では、袖を捲って」

「あの、大丈夫ですよ?フェッロさん。打たれるのは訓練でもよくあるし、女の子じゃないんだし」

「いいから、腕をお出しなさい」


 そうして軟膏を取り出し、ラウルの鞭打った腕を、労わるように揉み塗る。灰色の瞳を細めて、今日も良く頑張りました、とラウルにだけ聞こえるように呟く。それは見習いの侍女にも必ず行うことだった。フェッロの振る鞭は痛みを与えるが、怪我だけはさせないよう、細心の注意の元に振るっている。しかし軟膏を塗り終えた後のラウルの髪を愛おしむ様に撫でられるフェッロの手は、どの侍女も知らないものだった。彼女だけが持つ思い入れを伝えるそれは、オウルと、ラウルを想うものなのだろう。

 最後にラウルの身嗜みを整えてフェッロはラウルを連れて部屋から出る。そして扉で繋がる待合室で見習いの侍女が用意するお茶を楽しんだ。フェッロへの授業料として、見習い侍女の練習相手役を手伝うことになっている。訓練と任務と一般的な教えを受けながら今後の日々を過ごすこととなっていた。


「ラウル様、この後のご予定は?」

「今日は、この後は何もありません、訓練場に行くつもりです」

「左様ですか、ではその後で、もう一度ここへいらしてください」

「え?あ、はい。別の作法でしょうか?」

「いいえ、しかし必ずいらしてください。いつぐらいになりましょうか?」

「日暮れの・・・少し前になる、と思います」


 作法を教えるとき以外は、フェッロも侍女頭とはいえ奉仕する側の人間だ。奉仕する相手にくだけた口調で話しかけることはまずない、侍女服に袖を通している間は。フェッロの指示に首を傾げながらも了承を返し、逸る気を抑えながらラウルは訓練場に向かう。早くシンゲツを慣らさなきゃ、と考えながら歩いていると後ろから声を掛けられた。


「ラウ兄様?訓練場へ?」

「あ、マイア。うん、えっと、マイアさん、も?」

「あは、いつも通りでいいよ、私も行くところだったの、今日は父様もいるから」

「そうなの?楽しみだな・・・先生と何度も立ち会ってるんだよね?」

「そう!剣聖オウルと豪槍ドルトの立ち合いは皆も噂するくらいなんだから!」


 城中の騎士から酒場の剣士が語る程、有名な話だそうだ。勝ち越しはオウルのままで終わってしまったのだが、ドルトニアンは納得していないということまで語られている。訓練場まで歩きながらそんな話をしていたところに二人の耳に訓練場の激しい打ち合いの音が聞こえてきた。いつも以上に激しい鍛錬を行っているらしい。

 中ではドルトニアンが兵士、騎士を問わずに訓練に付き合っていた。かなりの数の人間が順番を待ちながら手合わせしているようだった。


「そら、どうした!騎士の端くれなら立って見せろ!」

「でやぁー!」

「立派なのは声だけか!」


 その様子を見てラウルとマイアは邪魔をしない様に隅へ向かった。あそこに入り込むのは見習いの分を弁えないだろうと見てだ。それと気づかずにドルトニアンは一人また一人を打ち倒しながら一言二言の助言を飛ばしている。


「凄い、ドルトニアンの・・・将軍、やっぱり強いんだなぁ・・・」

「ふふん、この城、ううん、この国一番の槍使いだからね!・・・あれ?ラウ兄様それって」

「あ、へへ。今日譲って貰ったんだ」

「えぇっ!もう出来たの!?いいなぁ・・・」

「うん、早く慣れなきゃと思って、シンゲツって言うんだ」


 これからの愛刀を自慢げに披露するように中身を改める。たしかにミカヅキと比べると反りが浅い。濡れるような輝きもなく、上質とは分かるが鉄の冷たい反射に二人は眼を細めた。説明通り、刃紋もなくやや無骨に見えるが切れ味も充分そうだ。二度三度軽く振り、重さと重心を確かめる。握りはラウルには少し太く感じるが両手を添えれば、それほど無理なく振れる。


「うん、凄いや。しっくり来そう」

「来そう、なんだ?」

「うん、やっぱり実際に振ってみないとね」


 そう言いつつ、マイアから距離を取る。上段に構えながら足運びを確かめる様に前へ、後ろへ、左右に足で踏み固めるように刻む。刀身はミカヅキと変わらないようだ。ラウルの身長の半分をやや超える程だ。ロングソードよりも少し長いくらいである。ラウルには充分を超える長物だが難なく振って見せる。

 上から下へ右に左に流れる切先は揺れることなく真っ直ぐに。羨ましそう視線を送るマイアはラウルの足運びを真似る。体格に合わない武器を振る彼から学び取ろうと、羨望の眼差しもやがて真剣なものへと変わる。


「ふっ!しっ!ふっ!」

「こう、からこう・・・そしてこう」


 短い息と共にシンゲツを振るうラウルの足運びを、ブツブツと呟きながら必死に真似る。摺り足を馴染ませるよう訓練場の地面を滑るように踏みしめる。雪で濡れた足場を苦にせずに練習する。二人で足運びを練習していると不意に深みのある声が掛かった。


「ほぉ、大分モノにしているな」

「っとと、危ない。父様?もうあちらはいいのですか?」

「うむ、しばらく足腰立たんだろうな」

「あー・・・」


 シンゲツを振るうラウルをみてドルトニアンはそう評した。彼から見ても、ラウルの剣筋は見事な物だった。懐かしい姿を重ねるくらいには。


「ラウル、その刀はどうした?」

「しっ!・・・あ、ドルトニアン将軍」

「ドルト将軍でいいぞ、長かろう。戦場でいつも面倒がかかる」

「ドルト将軍、えっと、リケルトさん、代表から、譲り受けました」

「あぁ、あの男なら模造しそうだな。具合はどうだ?ミカヅキほどではなかろうが」

「んんー、切れ味はまだ見て、ません。でも振り具合は合いそう、です」


 ドルトはそうか、と言いながら近くの壁に折れて放置されていた木剣を拾った。そのまま放る。試し切りに使えと言うつもりだったのだろう。その前に投げられた木剣をラウルが鋭く睨み。眼差しと同じかそれ以上の鋭さでシンゲツを振るった。一息に、二太刀。


「やっ!しっ!」


 とさり、カラン、コトリと折れた木剣は三つに分かれ、地面に落ちた。シンゲツを鞘に納めて切り口を確かめようと拾った。


「ちょっと粗いけど、切れ味も良さそう、です」

「・・・そうか、うむ、流石リケルトだな」

「・・・はっ!父上!褒めるのはラウ兄様でしょう?いえ、切れ味も流石ですが!」

「・・・前から聞きたかったのだが、マイア。何故あやつが兄様なのだ?引き取った覚えはないぞ」

「いいでしょう今は!そもそもミリ姉様も引き取ってないでしょう!?」

「む、それはそうだがな?・・まぁいい、後でまた聞こう。腕の話だが、充分驚いておる、ただオウルもよくやっていたからな、まぁ年はもう少し重ねていた頃の話だが」

「凄い、空中で斬るなんて・・・」


 刀術において空中で物を斬る技は型の一つにも存在する。無論切れ味だけでは完成し得ない。オウルなら更に倍の数に斬り分けるだろう。ラウルには今はこれが最大限の太刀筋だった。熟練剣士の一歩手前と言ったところか。14ほどの少年にしてはかなりどころか、常軌を逸した腕である。このまま修練を積めば師に追いつくのも夢ではないとドルトは見ている。

 マイアが切り口を見せて、とラウルに近寄り顔を寄せたのを見てドルトは咳払いで視線を自身に向けさせる。大人げないとは思う者は居なかった。この獅子将軍の子煩悩は城中に広まっているからだ。さもあらんとへたり込みながら皆遠くから三人を見つめていた。


「んんっ!ラウル、どうだ?一つ稽古でも付けてやろうではないか」

「本当に!?」

「父様!?」


 この提案も皆は予想していた。あの将軍のことだ、娘に良い格好するつもりだろう、と。そしてそれは恐らく逆効果だろうということも予想していた。


「うわぁ、槍で!?」

「どちらがいい?儂はオウルと剣でも渡り合ったぞ?」

「えぇ!?うーん・・・まずは、剣で!お願いします!」

「良いだろう、おい!場所を空けてくれ!」


 離れた場所から掛かる声に、未だに息も絶え絶えの身体の皆は無理やり起こす。二人の手合わせの場所を空け、見物に回る。何人かはラウルを知らない者がいるが、オウルの弟子と知るものが多く、興味津々だ。

 十分な広さの中心に向かいながら一人に木槍を預けたドルトは腰の剣を抜いた。一目で業物と分かるそれはその場の皆の息を飲ませた。


「ちょ!と、父様!真剣なんて!」

「じゃ、行きます!」

「来い小童!」


 マイアは慌てて止めようとするが間に合わずにラウルがドルトに向かい立った。文字通り以上の大人と子供の体格差だ、ドルトは筋骨逞しい大男だ、対してラウルはようやく肩まで届くかどうか。身長だけでそのくらいの差だが、ドルトは横幅も広い。腕だけでマイアの腰ほどもあろうかという太さだ。ドルトが偉丈夫のため手に握る剣がロングソードのように見えるが、その実バスタードソードである。片手剣としても両手剣としても運用できるそれを片手で軽々と振るう。


「どうした、来んのか?斬られても文句など言わんぞ?」

「ふーっ・・・」

「ふん、一丁前に気を吐くか。ますますあの馬鹿が浮かんでくるな」


 シンゲツを大上段に構えるラウル。この身長差ならドルトの剣はほとんどが上からの斬撃だろうと本来の逆の意味を含んで構える。

 対してドルトはバスタードソードを手に下げてまずは自然体に構えた。値踏みするような視線のまま、ラウルを待つ。やや深く息を吐いて。


「えぁっ!」

「ふん!」

「でぁっ!」

「浅い!」


 フェイントはほぼない、真っ直ぐに斬りこんだラウルをも弾く勢いでシンゲツを打ち払う。払われたシンゲツの勢いを殺さずに回転するようにラウルは払い打つ。遠心力を乗せた切先は届かず空だけを斬る。僅かに身を下げるだけで躱し剣を突き出すドルト、上体だけを捻るようにその剣先を躱すラウル。その捻りを戻す勢いで大きく下がる。


「・・・」

「・・・」


 真剣の打ち合いに訓練場は声を失うが、周りの者も少しでも技を盗もうと目を皿にしていた。斬り込んでは下がる少年を見て拳すら握り込んでいた。ギン、カン、と刃鳴らす二人に前のめりになる。

 打ち込んでは下がるラウルにドルトは攻め込まない。業を煮やしたのかラウルはシンゲツを身に隠す様に左半身(はんみ)を出して刀身をドルトから隠した。間合いは既に読まれているだろうが振りかぶる動作の【起こり】を隠すために。そしてそのまま肩をぶつける勢いで左肩から踏み込んだ。


「えやっ!」

「むん!」


 左半身から右脚を大きく踏み出しドルトの胴を右薙ぎに半円を描く様にシンゲツを躍らせる。大振りなその刃はドルトの剣に受けられた。しかし刃がぶつかる反動を利用して引き込み、そのままラウルは腕を交差させるようにシンゲツを取り回し、右からの薙ぎ払いを斬り返して縦に斬り下ろす。


「速いっ!」


 周りの誰かが叫ぶ。言われたように常人には止められないほどの鋭さを持って斬り返されたそれはドルトの首に迫った。しかしすんでの所で一歩前に出たドルトはシンゲツの柄を片手で押し止めた。それすら読んでいたラウルは身を横に反転させる。シンゲツを身体の回転に合わせ振るう。横から縦に、さらに横に太刀筋を自在に操りながら押し込もうとする。


「むっ、ぬん、おぅっ!」


 それらの太刀筋に翻弄されつつもバスタードソードを操り、片手から両手で握り込み、間断なく切り結ぶ。いつの間にかドルトも腰を落とし込み、槍を構える様に剣を水平に寝かして突きを主体にラウルの連撃の間を縫って責め立てる。


「んっ、ふっ、ぐっ」


 ドルトは足を止め、腰を落として動かずに迎撃する。鉄壁と言ってもいいその護りを突破できないラウルは一度間合いを外す。落とした腰を更に落とし込み、またしても右脚を一歩引いた左半身(はんみ)に構えた。今度はシンゲツを掲げるように、腕を交差させ柄を顔の横に引き付け、切っ先をドルトへ。オウルが好んだ構えでもある。霞の構えという師から学んだ構えの一つ。


「はーっはーっはーっ」

「ふっ・・・ふっ・・・その構えか」


 軽く息を弾ませるドルトは嫌な物を思い出したように言う。ドルトはこの構えを知っている。この構えを取るオウルに何度辛酸を舐めさせられたことか。今となっては勝ち逃げされた怒りが沸々と湧いてくるのを感じた瞬間。


「えぁっ!」

「来いっ!」


 角を持つ獣がそれを獲物に突き込む様に、切先をドルトに向けたままラウルが前傾姿勢で飛び込んだ。そしてお互いの刃が重なろうとした瞬間にシンゲツが一瞬止まったかのように見えた。突進と同じ速度で刀を後ろへ引き込んだ。切っ先だけに集中した相手には急停止をしたように見える。その錯覚を起こすための引き込みだ。これでラウルの間合いと、自分の位置を謀ろうというのだ。シンゲツを引き、身体だけを一歩踏み込む。


「えっ!なんだっ?」


 周りにはその術中に嵌った者がいたらしい。そのままシンゲツで円を描くように後ろへ回し、下からの斬り上げを見舞う。間合いを騙し、踏み込みを謀り、全身の捻りを込めた斬り上げは


「ぬあっ!」


 ドルトの斬り下しに迎え撃たれた。ガギン、と鈍くも高い金属音が打ち鳴らされる。その威力を殺せずにシンゲツが地面に叩きつけられた。

 それを見た周りの者が、ワっと声を上げた瞬間、ラウルは斬り下したバスタードソードを握る両手を取り、投げ倒そうと尚も進み出たが、それすらを読んだドルトの手は剣を片手に持ち替え、瞬時に左手でラウルの手を掴み上げ、胴に剣を当てた。


「~~~~~!ま、参り、ました」

「・・・うむ、見事、まったく嫌なものばかり叩き込まれたものだ・・・ふぅ」


 少年の健闘に湧く訓練場は所々に積もる雪をも溶かすかのような熱気だった。ラウルの降伏を受けてようやくドルトは息を吐いた。弱冠14ほどの少年にここまで嫌な汗をかかされるとは思っていなかった。無論ドルトに油断はなかった。それでもここまでの健闘は感嘆を漏らすほどだ。全く末恐ろしいの一言に尽きる。最後の足掻きにもヒヤリとする思いだった。


「奴の教えもそうだがお前自身の動きも見事だった、これからも励め」

「はいっ」

「それから、もう少し体重を考えろ。最後は力で押し過ぎたな」

「はいっ!ありがとうございます!」


 そう元気な返事をしながらシンゲツを拾い上げるラウル。かなりの衝撃を受けたがどちらの刃も欠けることなく歪みも無かった。すぐに手から離れたのも幸いしたのだろう。ざっと見て問題はなく、今後頼りに出来る愛刀となりそうだ。


「全く、騒ぎすぎだ皆。こやつを知る者もいるだろうが、知らない者も今見ただろう。武器を失っても尚、相手取ろうとする姿勢を見習え、動きは見習わんでいい。時間がかかる上に独特過ぎるからな」

「「「はっ!」」」

「真似ようとするなら覚悟しておけよ、うむ。それではこれまでだ。ラウル、こっちに来い」

「「「はっ!ありがとうございました!」」」


 そう周りに檄を飛ばし、ラウルを連れて先ほどの訓練場の隅へ輪から連れ出した。マイアもそれに付いて行った。


「・・・ふぅ、あの構えの突進からの斬り上げは良かった、しかしさっきも言ったが体重差を考えろ馬鹿者」

「はいっ」

「オウルはどこまでお前に教えたか分かるか?」

「えっと・・・技は全部見せるだけ見せた、って」

「そうか、ならば経験が足りんな。訓練場で色んな者と打ち合え、いいな?」


 助言を続けながらドルトは髭を撫でる。マイアはそれを見て微笑みながら二人を見やる。機嫌がいい時に父が髭を撫でる癖があるのを娘は知っていた。まだ助言を送り続けているが、髭を撫でる手が止まることはなかった。


「まぁそのくらいだな、では励め」

「はいっ」

「さて、マイアはどうする?儂はそろそろ引き上げるが」

「私は身体を動かしてから戻ります!」

「そうか、うむ、風邪を引かんようにな、一緒に戻ってもいいぞ?」


 そのままマイアを何度も振り返り、ラウルの前で飛び跳ねる娘は、本当に父について来ないことに溜息を吐きつつ訓練場を後にするドルト。予想通りの結果に訓練場の面々は苦笑を堪えながら訓練を再開した。ラウルとマイアもそのまま訓練場でお互いの動きを確認するように軽い打ち合いをしながら汗を流したところで一緒に訓練場を出た。

 その後マイアとも別れ、フェッロの待つ彼女の執務室へ向かう。そこでは訓練の打ち身を気にしたフェッロが軟膏を用意して待っていた。全身くまなく調べられ。怪我がないことを確認されようやく解放された頃には日もすっかり落ちていた。

 こうしてラウルの城の生活は過ぎていく。その日はシンゲツを細かくチェックして部屋で寝た。勿論シンゲツを抱いたままだった。

 そんな夜にドルトは妻にこう語った。


「マイアにまだ色恋など早いのではないか?そう思わんか?」


妻の失笑を買ったという

ドルトと、バルドが書いててごっちゃになってた危ない・・・

将軍は強キャラですが残念ダンディに仕立てたい一人です

今後はどうなることやら!

お読みいただきありがとうございました!また次回!

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