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竜のツノと狼の尻尾  作者: 日向守 梅乃進
第一章
1/63

なかなかできない自己紹介

初投稿の小説です。拙文ではありますが、生暖かい目で流し読んでやってください。

 山の裾野に広がる平原に野営地が設けられていた。寒風にはためく軍旗が見える。青を基調とし、咆哮する獅子が金糸で描かれている。天幕も多く、大規模な兵団が駐屯しているのが窺える。陣の出入り口には簡素ではあるが頑丈そうな柵が用意されていた。しかしながらそこに立つ見張りの兵士達は緊張感もなく手をこすり合わせながら悪態をつく。


「はぁ・・・風が冷てぇなぁ・・・ハーッハーッ」


 今が冬でなければ緑萌ゆる草原が広がっていたのだろう。冬に入り間もない今では見る影もない。兵士の一人が少しでもかじかむ手を守ろうと息を吐く。雪こそまだ降ってはいないが、もう数日で初雪が舞うことになるだろう。冬の到来を思わせる寒気に兵士達の表情は硬く、やや暗いものである。見張りという役目もまた、彼らの気分を沈ませる。


「朝っぱらの見張りってのがまた・・・面倒だよなぁ・・・」

「全くですね・・・見張りを割いてでも探索に回すべきでは?」

「俺もそう言いたいが・・・他にも目を向ける危険があるだろって話みたいだ。飛獣やら猛獣やら」

「まぁ何かあったらというのは分かります、しかし今は一刻も・・・うん?」


 ふと、一人の兵士が愚痴を吐く口をつむぎ、まさに異常を見つけたように目を凝らす。その先には枯草の多い平原、少し起伏のある丘の上をひょこひょこと動くモノが二つ、一つはまだ今年は見ぬ雪のように銀のような白いモノ。もう一つは枯草に紛れるように、大きな荷物を担いだ茶色く小さな人影だった。


「犬と・・・子供ですかね?大分汚れた服を着てるみたいだ」

「ハァ?ここらに村なんてないぞ・・・どこだよ」

「あの丘の岩場です。白い犬がピョンピョンしてますね」

「・・・本当だな、迷子か?まさか犬の散歩でもあるまいし・・・」


 一人と一頭の足取りは軽いようで、かつしっかりとしている。ゴツゴツとした岩場を歩きなれた道のように何事もなく野営地に進んできていた。


「なぁアレ、こっちに向かってるよな」

「えぇ、警告しに行きますか?子供にみえますが、そういう間者ってことも有り得えます」

「そうだな」

「少しお待ちを」


 訝しむ時間もそこそこに素早い判断をくだす、先ほどまでの緩んだ雰囲気を冬の空気のように緊張させつつ、兵士達は持ち場離れるため近くの兵士に声を掛ける。事情を説明し、さあ不審な子供の元へと向かおうとしたところで


「こんにちは!」

「「うおぁっ!」」


 兵士達はもたついたつもりもないが、例の不審者は既に野営地に近づいてしまっていたようだった。不審者は遠目から見た通り汚れた服を着た少年だった、平原の草と同化するような色合いになっている。兵士は不意を突かれた挨拶に驚きつつも不信感を強める。この場所に駐屯している兵団は特命を受けてのものであり、そこに保護色の服装で近づく者に対して少年であろうと油断などできようはずもない。はずもないのだが、少年は白い犬に離れた場所で待つよう手で制しながら兵士に近づき問いかける。


「青にライオンの旗が立ってるってことは、ここの平原がグラント王国なの?」

「「ハァ?」」


 驚きも隠せなかった兵士たちは、その少年の言葉に訝しむ。どこの軍ですか?何してるんですか?そういった質問なら理解できる。ここは野営地、陣である。グラント王国軍であるのも、この平原一帯もグラント王国の領地なのは間違いはない、旗にしても王国民なら知っていて当然の旗印だ。しかし“ここ”、この平原を指した質問にしてはやや見当が違うように思えたからだった。


「・・坊主、なんでこの平原がグラント王国だって思うんだ?」

「え?青い旗に金色のライオンがグラント王国の旗だって聞いたんで・・・」

「領地って意味なら間違いじゃないですがね、ここはあくまで駐屯地です」

「ちゅうとんち?」

「あー、軍が野営してるとこ、留まってるところって意味だ。坊主一人か」

「うぅん・・・?わ、ダメだよアッシュ」


 少しの会話にもう焦れたのか、少年に白い毛を押し付ける巨躯を見て兵士は息をのむ。離れたところにいたせいで白い犬と見ていたが、尾だけが灰がかっている。明らかに犬よりも大きく、太い四脚で立っているが犬よりも狭い股で首元の毛も深く、瞳が金色に輝いていた。


「スノウウルフ!おい!」

「待って待って!」


 スノウウルフと呼ばれた狼の首を抱きながら、少年は槍を構えそうになる兵士に焦った声を向ける。少年は慌てた様子で狼の首を抱いたのだが、アッシュと呼ばれた狼はじゃれつかれたと勘違いしているのか大きな尾を振り乱しながら少年の顔に舌を伸ばす。


「オンッ」

「わっぷ、違うってば、今お話してるんだから【待て】しないとダメだろ、アッシュ【待て!】ユキはちゃんと向こうで【待て】出来てるよ!」

「少年!ここに何をしに来たんです!その手なづけたスノウウルフでどうするつもりですか!」

「僕とアッシュとユキはグラント王国に向かってウップ・・・旅してて【待て!】【お座り!】」


 狼の舌に嘗め回されながら事情を説明しようとする少年、狼を連れた子供の間者、しかもほかにも見えない場所にユキと呼ばれるのもいるらしい。陣に危険を与えかねない状況と考え声を荒げる兵士。傍から見れば滑稽といえば滑稽でもある。そこへ深みのある威厳に満ちた声が掛かる。


「何の騒ぎだこれは」

「将軍!いえ・・スノウウルフを手なづけた間者が!」

「目立ちすぎる間者だな、一目で怪しいとわかる」

「それは・・・そうですが危険な猛獣ですぜ、スノウウルフは。しかも一頭だけじゃないようで」

「・・・アッシュもユキも危険な猛獣じゃないよ」


 将軍と呼ばれた髭を蓄えた男は冷静に少年を見る。狼を庇うように立つ少年は真っすぐに将軍を見返す、その眼に嘘偽りを思わせるような怯えはなく、むしろ少し寂しげな光を黒い双眸に湛えていた。狼を危険な獣扱いをされたことに消沈しているように見える。


「フム、スノウウルフを・・・アッシュと言ったな、名前まで付けて飼っているのは信じがたいが、とりあえず嘘つきの目ではないな」

「将軍、しかしながらこの近辺には村落もなく、このような子供が一人で・・・」

「それも確かにそうだ、が。まずは少年、名を何という、ここに何をしに来た」

「えっと、グラント王国に向かってて、偶然旗を見てここに来て・・・恩返しと物返しに僕とアッシュとユキで・・・」

「恩返しは分かるが物返しとは?誰に何を返す?」

「えっと・・・」


 モゴモゴと答えながら、背負った大きな荷物へ横刺しにしている巻かれた布の棒を指して少年は言う。


「僕の先生が王様に借りたものを返しに、それからホウトウ?の詫びにホウトウ?を返して、俺の代わりに恩も返して来いって」

「待て待て、分からんぞ。まず先生とは誰だ?恩は分かるが、ホウトウの詫びにホウトウを返すとはどういう意味だ」

「えぇと・・・お城のシャルル姐に手紙を渡せって・・・先生っていうのは」

「坊主、お城にいるシャルルってのはシャルローゼ王妃のことじゃあないだろうな?不敬にしても、程があるぞおい!ただでさえ今は」

「オンッ!」


 少年に声を荒げ、槍を向ける兵士に短く吠える白い巨躯、少年の背に庇われていた白狼は体中の毛を逆立たせて少年を押しのける。押しのけられた少年は慌てて牙を剥いて唸る白狼の腰を抱える。そして背中を叩きながら、大丈夫、大丈夫と呟き宥めようとする。


「槍を向けるな、もういい。間者ならばもう少し使える者を寄越すだろう、第一スノウウルフ連れで街中に入ろうとする間者など、騒ぎの種にしかならん」

「そうは言いますがね、将軍!王妃が臥せっているこの時にナメた口を」

「余計なことは言うな、馬鹿者っ!」

「・・・失礼しやした」

「オウヒって人病気か何かなの?シャルル姐さんって人と関係あるの?」

「・・・少年いいか、このことをほかの場所で口にするな、絶対にだ。そしてシャルルといえば我がグラント王国では王妃シャルローゼ様のことを指す。他の者がそう呼ばれることはない。名を同じく略す、または呼ばれることすら恥ずかしいと思うほど慕われているお方だ」

「じゃあそのオウヒさんを助けなきゃ、恩を返せなくなっちゃう」

「王妃様、だ。少年、先生というのは誰で、なんの恩を返したがっているのだ?」


 うぅん、と首を傾げ、多少落ち着いた白狼をポンポンと叩きながらあやす少年はやがて意を決するように言う。


「僕の先生の名前はオウル、渡り鳥のオウル、僕はラウル、グラント王国の王妃様と王様っていう人に会いたいから来たんだ。ホウトウ?を返して恩も返せって言われたから」


 渡り鳥のオウル、権を持つ者でその名を知らないものは恐らく大陸中にはいない。至るとことろに赴き、至る所で武勇を上げた、根無し草の剣士の名であった。曰く東の国で五百の盗賊を斬った。曰く竜と三日三晩戦った。曰く西の戦場真っ只中を一人で横切った。逸話に事欠かず、子供の寝物語にすらしている村もあるという、放浪の剣聖。


「渡り鳥のオウルだと・・・?あの馬鹿は今どこに羽を休めている!」

「先生を馬鹿っていうな!馬鹿はちょっとだけだよ!」

「そんなことはどうでもいい!ラウルと言ったな!オウルは今、どこにいる!」


 剣聖の名を聞いて我を忘れた将軍に、気丈にも歯向かうラウル少年。尚も大声を上げながらラウル少年の肩に掴みかかろうとする。槍を向けた兵士と違い、害意を感じなかったのか近くに控えた白狼は意外にも大人しくしていた。もしくはあやされて落ち着いてしまった後に、会話に飽きたのかもしれない。


「先生は・・・」

「ドルト将軍!大変です!姫様のお姿が見当たりません!」

「何っ!?」


 少年が答えようとする前に慌てた様子で鎧姿の女性が割り込んで来る。本来ならば陣の出入り口、そのような開けた場所で口にする内容ではなかったかもしれない。しかし状況を見るほど冷静でいられない内容が告げられる。ドルトと呼ばれた将軍もそのことを叱責する余裕も無いようだった。


「いつからだ!」

「わ、分かりません。私が朝食をお持ちした時には既に天幕におらず、寝具も冷え切っていました・・・」

「くっ、まさか山に入ったのではないだろうな・・・マイアはどうした!」

「マイアの姿もありません、将軍の予想通り焦れて山に入ったのではと・・・」

「あの・・・馬鹿娘がっ!!捜索隊を編成しろ!最悪の事態だけは避けるのだ!おい!お前たち捜索隊を編成させろ!ここはもういい!行けっ!」

「「は・・・はっ!」」


 野営地から人がいなくなり、その者がいたテントの寝具が冷え切っている。これは姫様とやらがいなくなって時間が経っていると見ていい。時期的に熱が冷めやすい季節ではあるが、だからこそ防寒の為の天幕と冬用の野外寝具をこの野営地には用意してある。特に高貴な人物に粗末なものを用意はしていないのだ。その寝具が冷え切っていたというのならば最悪の場合、寝具を使わずに闇夜に紛れて陣を出ている可能性もある。ドルト将軍は見張り達に命令を下し、状況を鎧姿の女性から聞き出していた。そんな矢継ぎ早で交わされる会話を聞き、不穏な空気を感じたラウルは大きな通る声を出す。


「僕達、探せるかも!」

「!?何を・・・ヒッ」


会話に割り込まれた女性はラウルの傍で寝そべる白狼をスノウウルフと一見して気づく、息をのみさらに慌てる様子を意に介せずラウルは続ける。


「僕達なら匂いで追えるし、山には慣れてるから!そのヒメ様って人の身に着けてたもの。何か無い?!」

「アッシュって・・・え?そのスノウウルフのこと?えっ?スノウウルフって雪山の王者でしょ?えっなんでこんなところに?ええっ?」

「今は晴れてるからいいけど、山は天気がすぐ変わるよ!匂いがあるうちに探さないと!早く!」

「本当にオウルの弟子というなら・・・いや、しかし・・・ラウル、オウルの手紙か何かオウルの物と分かる物はあるか?儂は奴の喧嘩友達のようなものだ、ドルトニアンの名を知っているか?」

「え?おじさんドルトニアンっていうの?尻敷かれのドルトっておじさんのこと?これ見せれば分かるって」

「あンの馬鹿者が!いらんこと子供に吹き込みおって!寄越せ!」


 部下の前で赤恥をかきながら、少年が差し出した布の棒をひったくる。恥ずかしさを誤魔化すため勢いよく受け取ったが棒の重みに、頭に上った血が一気に冷える。その握った感触に慌てて布を剥ぐ。包まれた布から出てきたものは剣だった。ドルトニアンには見覚えがあった。鞘に納められたその剣、鞘の外からでも中身がドルトニアンの脳裏に浮かぶ。剣ではあるが一線を画す物、反りの入った片刃、黒く塗れた鈍い光沢。その昔グラント王国に納められたという東の国から伝わった宝刀、その銘をミカヅキといった。友の懐かしき愛剣、愛刀ともいう。


「何故、これを持っている・・・?ホウトウの詫びとは放蕩の詫びか?ホウトウを返すとは宝刀のことか?」

「?洒落てるだろって言ってた、意味は分からなかったけど・・・」

「待て、奴の代わりに恩を返すと言ったな、一体オウルは何をしているのだ?何故奴が来ん?」

「・・・後で話すよ、ヒメ様の方が今は大事じゃないの?」

「・・・必ず詳しく聞かせろ、エルゼ、この少年を信用してやろう、儂が責を負う。姫様のお召し物を持ってきてくれ」

「たっ直ちに!」


 慌てて鎧姿の女性、エルゼが陣中に戻る、恐らく姫様とやらのいた天幕にある衣類を取りに戻ったのだろう。


「おじさん、ヒメ様ってどんな人?大きい?小さい?男?女?」

「姫という言葉自体を分かっておらぬのだな・・・姫様はミリアルイゼ様というシャルル王妃とバルド陛下の間の御子だ、王様と王妃様の娘を姫、息子なら王子だ、分かるか?」

「えーっとシャルル姐の娘さんってこと・・・?大変だ!!!」

「オウルは先生と言ったが、お前に何を教えておったんだ・・・まぁ奴らしいが。どうせ剣の扱いしか教えておらなんだのだろうな」

「そんなことないよ、剣術だけじゃなくてオンナのコマシカタ?とバクチのシャッキン?の踏み倒し方も習ったよ」

「・・・その女のこまし方は姫様には絶対に使うな、あと恐らく姫様と一緒にいるマイアという娘にもだ。儂の娘が姫のお側役としてついておる」

「でも、なんでそのミリアルイゼ姫様とマイアはいなくなったんだろうね」

「恐らく王妃様のためだ、先ほど他で言うなと言ったな、覚えているか?王妃様は病に臥せっていると」


 こくりと頷くラウルにドルト将軍は言う。この駐屯地は王妃の病に効能を持つサガネ草と言われる薬草を捜索するためのものであること、その薬草はこの付近の山に自生しており、希少でもあるということ、そしてミリアルイゼが母を救いたい一心でこの行軍に弱音一つ吐かずに着いてきたこと、しかしながらなかなかにサガネ草は見つからず、軍全体も焦れていたこと、間違いなく一番焦っていたのはミリアルイゼであろうこと、兵士達の目を盗めたのも毎日陣に戻ってはへたり込むほど山狩りに疲れ果てた兵士達の隙を突いたであろうこと、これらを掻い摘みつつも予想を交えて早口に説明した。


「シャルル姐・・・王妃様がみんな大事なんだね」

「その通りだ、あの方無しにこの国は立ち行かん。無論バルド陛下もだ。お二人が揃われてこのグラント王国は成り立っている」

「じゃあ、ミリアルイゼ姫様も見つけてサガネ草を探さないと。うーん・・・」

「アッシュなら匂いをたどれるか?無論儂らも捜索を出す大体の方向が分かれば・・・」

「無理じゃないけど、方向だけじゃ探す範囲が広すぎるだろうし・・・空からなら大丈夫かな?ユキもいるし」


 自信ありげに鼻を鳴らすアッシュを撫でながらラウルは二本の指を口に銜える。勢いよく息を吹く、遠くに届くように勢いよく、勢いよく。ぴぃゅぅううういと、木枯らしのような、春に喜ぶ小鳥の囀りのように、高い笛音が空に響く。空に響く


「空?ユキとはなんだ?もう一頭のスノウウルフではないのか?鳥も飼いならしているのか?」

「あ、違うよユキは」

「姫様のお召し物を持ってきましえええええええええええええええええええええ!」

「竜、だよ!」


 指笛が鳴り終わるとラウルの説明の間もなく白い巨体が吹雪がなびく勢いでラウルの前に降り立つ。ズンという腹を圧すような鈍い音だけでは、鎧の女性ことエルゼの絶叫悲鳴を掻き消すには至らなかった。ユキと呼ばれる白い竜は、流れる氷河のように鋭く長い首、雄々しい翼に日の光を映し、力強い両脚は大地を踏みしめている。瞳は空のように蒼く、舌は炎のように紅い。その紅い舌はラウルの頬を撫でる。


「あっ・・・あはっ・・・あははっ・・えへ?」

「これがミリアルイゼ姫様の?借りていくね!アッシュ、いい?この匂いを追うんだよ。」

「オンッ」

「よーし、見付けたらウォオーンで呼ぶんだ、いい?」

「オゥオオオーンッ!」

「うん!行けっ!」


 走りだそうとするアッシュに問いかけるラウル。勇ましい遠吠えで返事をしながら風のように走り去る。遠吠えも既に尾を引いて尻すぼむ頃には白い点となっていた。猟犬のように地面を嗅ぐこともなく奔る。アッシュにとっては風に乗る匂いを嗅ぎ分けることすら容易い。風が運ぶ匂いに向かってただ奔る。目標を見つけたら遠吠えが聞こえてくるだろう。そしてゴウ、と翼が風を打つ。白い竜、ユキの首に跨りラウルはふわりと笑う。いつものことなのだろう、竜に跨るのは。緊張など微塵も感じさせない。地上の二人とは対照的に。


「じゃあ僕とユキは空から探すから!見つけたらここに戻ってくるね!」

「えへっ?」

「・・そうしてくれ。それと姫様は黒く長い髪に深緑の瞳で可愛らしい女の子だ。マイアは儂と同じ金髪の青い目をしている。これも可愛らしい女の子だ」

「うん、分かった!」

「うふっ?」

「・・上級騎士エルゼ、捜索隊に加わるぞ、来い」


 上司の見栄と、歴戦の勇士の胆力は凄まじい。人が稀にしか見ない竜を間近で目にしても、冷静に命令を部下に下しながら陣に戻る。ドルト将軍の次の命令は突如飛来した竜に混乱する陣中への【落ち着け】の一言であろうことは想像に難くない。さらにその命令に従える者はほぼ皆無であったことも想像に易いことだった。後日ドルトニアン将軍はとある酒の席でワインを片手にこう言ったという。


「隣にいたエルゼがいなければ、腰を抜かしたのは儂の方だった。自分以上に驚いている者がいると意外に正気を保てるものだな」

これ・・・小説になってるのかな・・・ご意見、感想お待ちしてます。

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