-いじめからの脱出5-
王都に向かう最中、リーゼンは色々とこの世界について教えてくれた。
どうやらこの世界には王都は5つあり、今から向かうポセインは5つの都市の中心であり、中心ということから商業が栄え、色々な場所からその情報や物資を集めに多くの人がおり、5つの王都の中では一番栄えているという。
そして、二つ目はポセインを中心としてそこから東に馬車を使って15日程かかる位置にあり、海に面している為、水産業や有力な水軍を保持している水の都と呼ばれる王都アクアポール。
三つ目はポセインから南に馬車で7日程の位置にあり、王都の中では1番近い位置にある火の神を祀る王都ペレグリア。一つの大火山を中心として国家が繁栄しており、火山には神がいると信仰している国らしい。鍛冶屋や温泉などがあり、良質な鉱石も取れる。その為、王都に近いこともあり冒険者が装備を強くしてもらいに行く場所だと言っていた。リーゼンも冒険者として最初に訪れた王都もそこだという。
4つ目はポセインから東に馬車で20日程の位置にあり、大森林の中にある古都フォレストフォール。1番歴史としては古い王都であり、書物などを多量に保管している。そのため、王都の中で1番大きい図書館を保持している。また、珍しい植物も多く研究などを盛んに行っており、知識を追求している者たちがかなり集まっているとのこと。
5つ目はポセインから北に馬車で25日程かかり、1番遠い位置にある。極寒の場所にあり、分厚い氷で都市全体を囲んでいる。そのため、氷による天然要塞が出来上がっている。辺境な場所にあるため、あまり冒険者は行こうとしないため、謎が多い都市である魔都ウォールホワイト。この国は独自の発展を遂げている為、他の文化にはない固有武器という者を民全員が持っており屈強な部隊を持っている。そのため、物資をもらう代わりに、傭兵を輸出品として使っている珍しい国である。
この五つが同盟を組んでる。まぁ細かい街は沢山あるというのだが、今伝えても覚えきれないからおいおい覚えるといいとのこと。
「まぁだいたい国についてはこんな感じだな。」
5km程歩いた時頃に、 国については話し終えていた。リーゼンの過去の話を混ぜながらなので、1時間程度かかった。リーゼンは歩くのが早くて、ついていくのがやっとだったが、話しながらなので意外とついていけた。
「他に聞きたい事はあるか。こんな機会じゃなきゃ聞けない事もあるだろう。」
僕は、聞きたいことを考えた。
うーんこのペースだと、残り時間は後1時間程度しかないだろう。そうなると、今聞いておかなければいけない事は二つ。1つ目は、さっき言った能力について。もう一つはこれから王都に行くなら、異世界人の扱いについてだ。
「二つ聞きたいことがあります。一つはさっき能力って言ってましたが、その能力ってみんな持ってるものなんですか?」
そう聞いてリーゼンは、驚いたように僕を見ていた。
「お前そんなこともわかんねえのか。能力ってのはみんな持ってるもので、生まれた時に感覚として分かるもんだ。戦闘に使えるものもあれば、生活に使えるものだってある。大抵は学校で習うはずなんだがな。」
へーと聞いている僕に、呆れた顔で見ていた。
「まぁ奴隷って言ってたから、学校も行けなかったんだろうから、能力の詳しいことはわからないとは思う。でもその言い方だったら、お前は自分の能力もわからないのか。」
…
……
数秒の沈黙が続いた
「はぁ。まぁおいおい分かるだろうよ。それは本人しかわからないものだしな。能力の中には、相手の能力を察知できるやつもいるが、かなり珍しいからな。いつの間にかわかることを期待するしかねえな。」リーゼンは、呆れを通り越して頭をポリポリと掻いている。
僕は愕然とした。えっ……まじかよ。でも、能力はあるんだよなきっと。だったらまだ希望はある。
「まぁ異世界人だったら能力はないかもしれないけどな。ガハハ。」
…………えっ。いやいやそれは慈悲がなさすぎる。リーゼンは笑ってるけど、僕はこんな貧弱な状態じゃこの世界生きていけねえよ。
「まぁ人生はまだ長い頑張れ坊主。ガハハ」
僕としては笑い事ではないんだけどな。まぁこれはおいおいの問題にしよう。今どうこう言っても変わるものではない。まだ解決しなきゃいけないことがあるし。
「二つ目は、今異世界人ならって言ってましたけど、この世界に異世界人って今もいるんですか。僕の名前こんなんだから、間違えて異世界人だと思われた時にどんな反応されるのかなって。」
「うーんなんとも言えないな。基本的に違う世界から来た人は、いないと言ってもいいかもしれん。あの英雄の後一度も聞いた覚えはないからな。もしかしたら、フォレストフォールの研究員からは実験材料にされるかもな。あーでも前回が英雄だから大騒ぎになるかもしれんな。まぁどちらにしても、めんどくさい事には変わりないな。」
まじか。異世界人ってそんな扱いなのか。ますます生き難いではないか。僕はリーゼンの言葉に落ち込んでしまったが、まぁでもこれで二つの事は分かった。一つは、能力はそれぞれ持っていて、自分にも何かしらの能力が持っている可能性があること。もう一つは異世界人はおらず、ばれるとかなりめんどくさい事。
この二つが分かった事が大きい。なぜなら、これから自分の対応が分かったからである。じゃなければ、何処かで異世界人と言っていたかもしれない。
もし異世界人だと言うとしてもタイミングが重要であるから考えなければいけない。
全員が能力を持っているという事を知らなければ、何をするにしても対策も考えにくくなる。全員何かしらの能力を持っていると考えれば油断もできなくなるしな。能力については今後もっと調べなきゃいけないな。
そんな事を考えていると、少し丘を登り終わった頃遠くに大きな城門が見え始めた。
「ほら見えただろう。あれが王都ポセインだ。」
かなり大きい城門だ。漫画では見たことあるが、実際生でみると言葉に表せない感動を感じていた。僕は近づくたびに、ワクワクを抑え切れなくなっていた。僕の憧れの世界だと思うと、足取りも軽くなっていく。さっきまでの不安が今だけはすっぽりと無くなってしまう程だ。そして、10分ほど歩いたところで僕はとうとう王都ポセインの城門に到着した。