-いじめからの脱出1-
僕の運命はどこからおかしくなった。
こんなはずじゃなかった。なんで僕が……
多分理由はない。神様の気まぐれだったんだろう。
僕じゃなければきっと他の誰かが標的となって、今の自分と同じ運命を辿っていただろう。そう思う様な人生だった……
誰もおらず、僕だけが静かな暗闇に一人佇んでいる。暗闇だけがそこにあり、自分一人だけの世界がそこにあるようだ。
こんな時間に1人で学校の屋上にいるなんて、映画だけの世界だと思っていた。
一生自分にはこんなことが起こる事はない。逆にそんなことをやる人間なんてバカみたいだと、ほんの少し前の僕だったら少し鼻で笑っていたぐらいだ。
しかし今、自分は暦としてここに立っている。
「まさか自分がこんな風になるなんてな。最後までクソみたいな人生だった。神様逆に感謝するよ。こんな世界に産んでくれて。良い経験になった…。」
自分で言っているのに、自分の言葉の意味がよく分からなかった。だけど、自然とつらつらと言葉が出ていた。アニメと漫画が大好きで、小さい頃からその幻想的で魅力的な世界に夢中になっていた。そのおかげか、こんな時にも何かのキャラクターっぽいセリフを言ってしまったのだろう。
「…感謝なんてするかよ。こんな世界の神なんかに。」
なぜか言葉と一緒に涙と笑いがこみ上げてきた。涙なんて出ないくらいにこの世界に絶望していたはずだし、何に対して笑ったのかもわからない。でも、なぜか満足した。それだけは分かった。僕は、一頻り笑い終わった後覚悟を決めた。そして、手すりを乗り越え、屋上の端に立った。風強く吹いている。少し気を抜いたら落ちてしまいそうな程だ。僕は、落ちない様に手すりを強く握った。
「最後に、僕をこんな世界に産んでくれた素敵な神様にお願いです。もし聞こえているなら僕の憧れていたファンタジーな世界が存在するなら、今度はその世界に生まれ変わりさせてください。」
呟くように言ったが、なんか恥ずかしくて鼻で笑ってしまった。最後の最後までなんて中二病っぽいんだろう。でも、僕らしい最後の言葉だなと思う。
僕は、後ろに置いた靴の下に置いた遺言書があるのを確認し、強く握っていた手すりから手を離した。