1/2
プロローグ
マロンは、ガレージの奥の研究室で作業に追われていた。
彼女は集中するとほぼ何も食べず、誰とも会わずに没頭して作業をする。この作業ももう佳境であった。夜もとっぷりと暮れ、ガレージには静かな明かりが灯っていた。
「マロンさま〜まだネないんですか〜」
マロンはその声も聞こえないようで、なにやら腕のようなものを組み立てていた。
「マ〜ロ〜ン〜さ〜ま〜・・・こういう時いっつもこうだナぁ・・・。いい加減アタシのバッテリー切れそうなンだけど・・・」
しばらくして、その声は諦めて静かになった。どうやら省電力モードに切り替えたらしい。静かになったガレージは、もう数時間で夜が明けるのを待つように、ひっそりと眠りについた。
朝をひたすらに待つ機械仕掛けの街の一角。歯車のような毎日。
今、ここから大きな物語が動き出そうとしている事を、彼女自身も、誰も知らなかった。
なぜなら、誰も考えていなかったからだ。
今時の精密で緻密な機械仕掛けの中の歯車を狂わせる、異物が現れる事を。
その器が今、彼女の手で作られようとしている事を。
_
Prototype:Evil