97:製作者がフリーなクライミング
「石とかの配置が初心者向けになってるからぁ、そんなに登ること自体は苦労しないはずよぉ。ちょぉっと高いけどねぇ」
「正確ニハ10mアリマス」
ちょっと……?
10mはちょっとじゃない気が。
ちなみに10mはビル3階分くらいの高さだ。
下から覗く限りでは相当高く見える。
自分が登るとなると余計に。
「ちなみに命綱とかは?」
「ないわよぉ」
マジでか。
「それって下手したら命に関わるんじゃ……」
「問題アリマセン。貴方ナラ勝手ニ再生サレマスカラ。落チル時ハ頭カラ落チナイ様ニダケ気ヲ付ケテ下サイ」
「すっごい雑!」
救助もないんだ!?
まさかの超回復力がこんな形で仇になるとは。
「そんな心配しなくても大丈夫よぉ」
お、さすがに医者のリリスはちゃんと考えてくれるのか。
「頭から落ちても即死しなければ助けてあげるからぁ」
「安心できねぇ!」
心配だったのそこじゃないし!
「イイカラ早く登リナサイ」
「しかも怒られた!」
まさか躊躇うことすら許されないとは。
まさに鬼。
「もうアリシアちゃんも狐ちゃんも登り終わって次に行ってるのよねぇ。貴方だけかなり遅れてるのよぉ」
「え、そうなの? というか2人とも同じ障害物あるんだ?」
「同じ――うーん、同じタイプのものではあるけどぉ、難易度は違うわねぇ」
もしかして2人のほうが女の子だけに易しかったりするんだろうか。
「それなら2人と同じのがいいなぁ、なんて」
「え、あの子達と? 別にいいけどぉ」
「いいの?」
「壁の角度が120度くらいになるわよぉ」
「今のままでいいです」
まさか難易度跳ね上がるとは思わなかった。
でも考えてみればアリシアってかなり身体能力高いもんね。
狐々乃月は分からないけど、狐の妖怪なんだから身軽そうだ。
「ほらほらぁ、もう言う事ないなら登りなさいなぁ。2人に置いていかれちゃうわよぉ」
「うぅ、仕方ないか」
あの2人がさっさとこの障害をクリアしたのに、自分だけ文句ばかり言ってるのもなんか格好悪いしね。
「じゃあ、行きます」
「はぁい、がんばってねぇ」
気の抜ける声援を背に、壁に埋まっている石に手を掛けて登り始める。
右手で掴んで右足を石に乗せて、左手を伸ばして左足を上げて、とりあえず目の着くところにある石を利用して登っていく。
思いのほか身体が動いてくれるおかげで、予想以上にスイスイと進んでいける。
というか、コレ意外と楽しいかもしれない。
「あらあらぁ、中々いいじゃなぁい。その調子よぉ」
リリスの称賛も素直に受け止められるくらいには順調にいっている。
「よっほっ」
気持ちよく登っていき、気付けばもう全体の中ほどまで進んでいた。
疲労も思ったほどじゃないし、これならこの勢いのまま進めそうだ。
「うーん、順調すぎて面白くないわねぇ」
なにか不吉な台詞が聞こえたような。
「ナラバ、コウスルノハドウデショウ?」
イデアが余計なアドバイスをしている。
やばい、早く登り切らないとよくないことが起きる。
ここまで登って少し慣れてきたこともあり、強引にスピードを上げる。
リリスがなにかする前に登り切る!
よし、あと3m!
だがそこで無情にもリリスが愉しそうに宣告してきた。
「じゃあ、難易度上げるわねぇ」
足がかりにする石が一瞬で半分になった。
なお普通は初心者はこんなにスイスイ登れません




