83:不等価交換ノススメ
「この回復力って、どれくらいのものなんだろ?」
「どういうこと?」
「うん、どれくらいの傷がどれくらいの速度で治るのか、とか。どれくらいなら傷を負っても大丈夫なのか、とか」
「それも分からへんなぁ。分からんからって試せるもんでもないし」
「だよねぇ」
試そうと思うなら、もちろん怪我をしなくてはいけない。
回復が早いだけで痛覚はそのままみたいだから、怪我をすれば痛い。
さすがに進んで痛い目に遭うのは勘弁願いたい。
「ま、ウチでええんやったらいくらでもシバいたるけどな」
「そんなすっごい楽しそうな笑顔で言われても嫌だからね」
「ちぇっ」
ちぇってなんだよ、可愛いなオイ。
「冗談は置いといて」
本当に冗談だったんだろうか。
結構本気っぽかったけど……。
「痣が、内出血が数秒で完治したくらいやから、ちょっと怪我したくらいやとすぐ治るやろな。ただ、その回復力が何を犠牲にしてるか分からんから、楽観視は出来ひんけど」
「犠牲?」
「そや。条件って言い方でもええ。1日に回復する上限が定まってたり、あるいは相応の栄養を摂取してなアカンかったり、まぁ色々やな。ウチの場合は妖力っちゅー見えへんエネルギーを消費して焔を出すからな」
「妖力っていうとマンガみたいだね」
「否定はせんけどな。ただその妖力にしてもやっぱ食事とか睡眠とかちゃんと取っとかんと、十分な量を確保出来ひんから、詰まるところは栄養が力の源ってことになる」
「なるほど、目に見えないからって何も無い所から生み出しているわけではないってことだね」
「飲み込み早くて助かるわ。つまりはそういうことやな。やから、アンタも何かしらの対価を支払って、その回復力を得てると考えたほうがええ。ま、そうやとしても普通の人間からしたら過ぎた能力やけどな」
「そうだね。明らかに異常というか超常なものだもんね」
「もし自分の能力について知りたいんやったら、リリスに聞き。アイツなら何か知ってるやろ」
「リリスってそんな物知りなの? 300年生きてる狐々乃月より?」
「ウチは300歳言うても山奥に200年くらい引き篭もってたから、知識量は実質100年分くらいや。それも積極的に勉強したりしたわけちゃうし。リリスは知識を集めることが趣味みたいな奴やからな。圧倒的にアイツの方が物しっとるわ」
「へぇ、そうなんだ」
確かにリリスは何でも知ってるようなイメージがある。
思わせぶりな態度が多いからかもしれないけど。
「もしくは、またイデアと訓練するようなら、その中で自分の回復力を見定めるかやな。いくら他人に教えてもらっても、結局は自分の感覚で掴まへんとアカンからな」
「そっか、言葉だけじゃ分からないよね、こーゆうのって」
単純に身体的な意味でのスタミナもそうだろう。
あれは運動を普段からする人間はどれくらいの運動量でどれくらい体力を消費するのか分かるが、しない人はいくら説明されても分からない。自分がどれだけ運動したら疲れるのか、むしろどれくらい動けるのかすら分からなくなる。
ハッキリと数値で表せるものじゃないから、結局は感覚頼みになるし。
「イデアとの訓練がもうないようならアリシアでも……まぁ(ウチでも)……頼めば、付き合うし」
「え、なんだって?」
途中が小声になったせいで全然聞こえなかった。
「うぅー、知らんわ」
「何で怒ってんのさ!」
乙女心が複雑すぎる!
「とりあえず、あとでイデアに聞いてみるよ。あと、回復力のこともリリスに聞いてみる」
ただリリスのほうは何となくはぐらかされる気がする。
「そうし。質問終わったんなら、ウチはまた読書に戻るけど」
「え、あぁそうだね。とりあえずは終わりかな」
「じゃあ晩御飯できるまでは本読んでるわ。別に何か思いついたら聞いたら答えてあげんこともないから」
「どっちだよ、それ。まぁ、ありがとうって言っておくよ。もしかしたらまた頼るかも」
最後のお礼はちゃんと聞いていなかったのか、すでに読書を始めた狐々乃月は「ん」とおざなりに返事をしただけだった。
狐々乃月がそうなると、こちらもすることが無くなってしまうので、彼女に倣って読書で晩御飯までの時間を潰すことにした。
ツンデレは素直に頼れと言えないのです




