71:事後
もうお嫁にいけない……。
「フゥ、サッサト立ッテ下サイ」
「ひどっ」
「面倒臭イデスネ。小芝居モ過ギルト鬱陶シイダケデス」
「更に酷いっ。いいよ、分かったよ立つよ、だから睨まないで」
実際のトコ、着替えさせられただけで何もされてないし。
というか、抵抗しなかったら本当にあっという間に着替えさせられた。
パッと脱いでパッと着たって感じだ。
もちろんパンツは無事だった。
「サテ、デハ始メマショウカ」
「いや、何するのか全然聞いてないんだけど、何するの?」
「動キ易イ恰好デスル事ハ限ラレテイマス」
「じゃあ、なんだろ、スポーツでもするとか?」
「ハッ」
嘲笑された!?
なんか最初は無表情で感情の抑揚があんまりないと思っていたイデアなんだけど、ここにきて妙に感情が出るようになってきてる気がする。
もしかして周りに人がいないからとか? じゃあこれが本性ってことになるんだけど、それだとかなり嗜虐嗜好もちってことになる。
凄い嫌なんだけど。
変な趣味に目覚めそうで。
イデアみたいな怜悧な美人に罵られてると、嫌だという気持ち以外のものも沸いてきそうになる。
「格闘術ノ練習ヲシマス」
「格闘術?」
戦うの? なんで?
「理由ハ、説明ガ面倒ナノデ端折リマス」
「面倒だから!?」
なんて投げやりな……。
「ゴチャゴチャ言ッテ無イデ、黙ッテ言ウ事ニ従ッテ下サイ」
もの凄い横暴なんだけど、このメイド。
メイドってそういうものだっけ?
不思議とアリシアが癒しに思えてくる。
「分かったよ、やるよ。どうせ暇だし。でも、何処でやるのさ?」
この部屋だと狭すぎるし、他の部屋に移動するんだろうか?
それだと2人ともここで着替えた意味ないような。
「此処デ行イマス」
イデアがボタンを押すと、部屋の奥の壁に扉が現れた。
「隠し部屋!? そんなのもあるのか……」
本棚やテーブルだけじゃなくて、もう1つ部屋が現れるとは。この病院なんでもありだな。
「デハ行キマスヨ。着イテ着テ下サイ」
イデアが扉を開けて中に入って行き、言われるがままに着いていく。
中に入ると、そこには広大な空間が待っていた。
昨日、アリシアとリリスが戦ったときのような、大きな部屋だ。
確かにここなら思い切り暴れまわっても大丈夫だろう。
コンクリートを次から次に生やすリリスと、それを発泡スチロールみたいに壊していくアリシアが暴れても大丈夫なんだから。
「訓練ハ此処デ行イマス」
まだ不満はあったけれど、今更言ったところで始まらないどころか、無意味に時間を消費しそうだし、なによりイデアの機嫌を損ねそうだったので、大人しく頷いた。
「デハ、マズすとれっちカラデス。私ニ続イテ同ジ動作ヲシテ下サイ」
「ん、分かった」
腕や足の筋を伸ばしたり筋肉をほぐしたりと、ストレッチ自体はごく普通のものだった。
ちょっとビビッてたからこんなことでも安心してしまう。
「次、二人デすとれっちヲ行イマス。此方ニ来テ下サイ」
「はーい」
「返事ハ短クはっきりト!」
「はい!」
思ってもみないところからの怒声に反射的にいい返事をしてしまった。
「最初カラソウイウ返事ヲスレバイイノデス」
イデアは満足げに頷くと、ストレッチを再開した。
特に問題のない、普通のストレッチだった。
けど、それが個人的に微妙に問題があった。
1人でストレッチをする時には何も思わなかったこと。
でも、2人でストレッチをすると問題になるもの。




