69:彫刻のような
「あ――うん」
その瞳に魅せられるままに頷くと、イデアは無表情のまま歩き出した。
え、なんだったんだろ?
もしかして、着いてこいってことかな?
とりあえずイデアの後ろに着いて行ってみる。
イデアはチラリとこちらを見て、ちゃんと着いてきていることを確認すると、歩く速度を速めた。
見た目はさっきと同じように歩いているのに、速度が急に上がったせいでちょっと遅れかけてしまった。
そのまま自分の部屋の前を通り過ぎるて――鉢合わせたのは狐々乃月の部屋を通り過ぎて少しの所だった――更に奥へと進んでいく。
そういえば、こっち側ってきたことないな。
トイレと狐々乃月の部屋は同じ方向にあるし。
アリシアの部屋は、知らないや。
行ったこともないし言ったこともない。
アリシアなら部屋に招いてきそうなんだけど――いや、足を運ばせることを気にしそうだから逆に呼ばないか。メイドが主人を部屋に呼びつけるってのもないだろうし。となると、アリシアからは言い出さないかな。じゃあ、今度こっちから言ってみよう。
いくつか目の扉でイデアが立ち止まった。
そして、躊躇うことなく自然な動作で扉を開けて中に入っていく。
ここが目的地なのかな?
イデアに続いて入ると、そこはよく知った間取りの部屋だった。
というか、自分の部屋や狐々乃月と一緒だ。
「もしかしてここ、イデアの部屋?」
「ja。下着ハくろーぜっとノ中デス。見タリ触レタリ嗅イダリシタラ殺シマス」
「じゃあ何でその情報教えたの!? いや、教えてもらっても見たりしないけど!」
しかも嗅いだりってなんだよ。てか、洗濯して仕舞ってあるやつ嗅いでも仕方ないだろ――なんてことは考えてません。
「下手ニ探シ回ラレテ、室内ヲ物色サレテモ困リマスカラ、最初ニ教エテ警告シタ方ガ効率ガイイデショウ?」
「よくないよ! まず探すつもりもないからね!」
「ハイハイ」
「そんな分かってる分かってるみたいな言い方されても、嘘付いてないから!」
「シカシ、男ハ常ニ性欲ニ頭ヲ支配サレテイルノデショウ?」
「されてないよ! 誰が言ってたのさ、それ!」
余裕でリリスが思い浮かんだけど。
「ハァ、騒ガシイデスネ」
「誰のせいだよ!」
ツッコミ過多により息が切れる。
イデアは依然として無表情のままだ。
そう、恐ろしいことにさっきのやり取りも全部彼女は無表情のままだった。
「コレニ着替エテ下サイ」
いきなり柔らかい何かを投げつけられた。
よく見てみると、
「なにこれ、ジャージ?」
ちょうどサイズの合いそうな緑のジャージの上下セットだった。
「イデアこれ――」
何でこんなものをを聞こうと思って顔を上げると、イデアがいきなりメイド服を脱いだ。
あっという間に下着姿になった。
「ってえぇぇぇぇぇえ!?」
いきなりすぎる展開に頭がついていかない。
考えてることといえばせいぜい、全体的にほっそりしているが痩せているというより引き締まっていて、お尻や胸は控え目だけど女性らしい丸いラインはしっかりあって、色気と健康さが絶妙に整っていて、おそらく単純な身体の綺麗さならアリシアやリリスより――狐々乃月は完全に人によって好みの分かれる体型、つまり幼児体型をしているため除外――も上なんじゃないか、と思わせるほどに均整が取れていて、
「何、凝視シテルンデスカ。目潰シマスヨ」
色々考えてたら怒られた。




