67:かごめかごめ
「ちょっと待って。何言ってるの?」
リリスの言葉の意味が理解できないしたくない。
「あらん? 分からなかった? あのねぇ」
「いや、言わなくていい! 聞きたくない!」
聞いたら終わりな気がする。
いや、気のせいじゃない。終わりだ。
主に尊厳とかそういうやつが。
「好みの女の子をそこから選びなさいなぁ」
「って、あーーーーー!!」
言った! 言っちゃった!
「本はぁ、色々用意してあるでしょぉ? だからぁ、その中から好きなのを一つ選らんでねぇ」
さらに念を押すように、同じことを言った。
これでは聞いてないふりができない。
え、なんだって?
とか言えない。
両手で抱えていた頭を上げると、上げたのを後悔する景色が目の前に広がっていた。
爛々と輝く肉食獣の目――じゃない。女性4人の色んな念の籠った瞳。
あんな涼しげに人を陥れたリリスでさえ、感情の入り混じったにごった瞳をしている。
「御主人様ぁ?」
「は、はいっ」
食べられる!?
目を合わせてしまった瞬間、そんな衝動にかられてしまった。
だけど物理的に食べられることはなかったけれど、心情的には獅子に捕獲にされた鹿だ。
「御主人様は、どれを選ばれるんですか?」
目をバッチリ合わせたと思ったら、アリシアの目線が床のある場所に落ちた。
そこには、巨乳メイドをメインに据えたエロ……写真集が落ちていた。
表紙には、ふわふわしたショートに柔和な笑顔を浮かべながらもキッチリ着込んでいたであろうメイド服を乱した可愛い少女が載っている。
煽り文句は「誠心誠意ご奉仕いたします(はぁと)」だ。
「い、いやー、どれを選ぶってもなー、ははは……は」
乾いた笑いを浮かべながら、アリシアの圧力に押されて後ずさりすると、何かが踵にあたった感触があった。
何かと見てみると、それはコスプレ写真集だった。
そしてよりによって表紙を飾っているのは、ロリっ子の狐耳コスプレ写真だった。
本当に成人なのか疑わしいほどの童顔少女が、はにかみながらも狐っぽい手招きのポーズを取っている。あの尻尾が何処に繋がっているのか気になるようなならないような。
「べ、別にアンタが何を選ぼうがウチには興味なんてあらへんけどな」
そんな視線を感じ取ったのか、狐々乃月が唇を尖らせてそっぽを向きながらも発言してきた。その目はチラチラとこちらの様子を窺っている。
「んふふ、こんなのはどぉ?」
「ひっ」
いつの間にか背後に回っていたリリスが、抱きつく形で腕を回してきた。
背中に特大の柔らかいものの感触2つ。
さらに下腹部を直接刺激するような甘ったるい香りが漂ってくる。
そんなリリスの手には1冊の本が広げられていた。
「うっ、これは……」
そこでは黒髪で挑発的な笑みを浮かべた巨乳巨尻のお姉さんが、これまた扇情的なポーズで読者を誘っていた。もちろん、一糸纏わぬ姿で。
「ちょちょちょっ」
たまらなくリリスの腕を振り払って逃げ出す。
アリシアの眼力が肉食獣めいているとしたら、リリスは爬虫類だ。
蛇に締め付けられた蛙の気分がよく分かった。
乳を押し当てられていたというのに、喜びや情欲よりも恐怖が勝ったゆえの逃亡。
しかし悲しいかな、ここは逃げ場のない小さな部屋。
猛獣の檻に入れられた兎が逃げられるだろうか、いや無理だ。
いくら逃げても結果は同じ。
生き延びる時間が多少変わるだけだ。
待ち受ける絶対の終わり。
その状況がまさにここ、この場所にも存在していた。
「さぁ、どれを選ぶんですか?」
「ど、どれにすんねんな。興味ないけど」
「どれにぃ、するのかなぁ?」
「……」
何故か囲む人数が4人に増えて、最後の時を迎えようとしていた。




