66:合法ロリ
「いや、これは違うんだっ」
と、まるで浮気がばれた男のような弁明が口をついた。
漫画やドラマではありがちなこの台詞、見ているほうは「もっと他に言う事あるだろ」と思うのだけれど、案外そういうシチュエーションに遭遇してしまうと、言ってしまうものなんだな、と知った。
けれど、これは仕方ないと思う。
だって実際に違うのだから。
これはあくまでリリスが用意して、リリスが誘導して、リリスが手に持たせたものなのだから。
そう、言うなれば冤罪だ。
見ればリリスは心の底から楽しそうな顔で笑っている。ニヤついている。
イデアは本当に関心がなんだろう、全くの無表情だ。
いや、よく見ると嘲られてる?
「どこを見てるんですか、御主人様!」
そこで思考が遮られた。
見ると、アリシアが怒って……怒ってる? 目でこちらを睨んでいた。
そしてエロ本を指して、
「どういうことか、ちゃんと説明して下さい」
と改めて詰め寄ってきた。
なお、もう1人詰め寄ってきていた女の子は、最初こそ勢いよく迫ってきていたけれど、いまは顔を赤く染めて、本をチラチラ見ていた。
「御主人様っ」
すぐに返答しなかったせいで、アリシアが身体ごとさらに詰め寄ってきた。
相当怒ってるんだろうな、なんて思った矢先に、しかし彼女はこう続けた。
「溜まっているなら、どうして私に言ってくれないんですか! 言って下されば、いつでも私がお相手しましたのに!」
「は――はあ!?」
今度はこちらが大声を出す番だった。
この暴言に、狐々乃月は珍獣を見るかのように、リリスは虚をつかれたように、イデアは――分かんない、アリシアを見た。
そんな視線などまるで気にしないアリシアはエロ本の開かれたページに目を落としてからさらに、
「それとも、この写真の女のように、つるっぺたのロリっ子じゃないと駄目だと言うのですか!」
「は?」
言われて、写真を見てみると。初めて、ちゃんと写真を観察してみると、なるほど確かにそこに映っているのはロリだった。
幼い顔立ちの、全体的に小柄な、胸の起伏のない、幼女が映っていた。
まぁモデルはおそらくただの童顔幼児体型の成人ではあるのだろうけど、じゃないと発禁どころかガチで犯罪だ。
「もし御主人様がつるぺた幼女にしか欲情しないのであれば、この胸を切り落としますから!」
「いやいやいやいや、怖いよ、止めてよ、望んでないよ!」
なんつー恐ろしいことを口走るんだこの子。
愛が重すぎる。
「別に幼女が好みとか、貧乳じゃないと欲情しないとか、そういうことはないから、落ち着いて」
自分で何を口走ってるんだ、という自覚はあったけれど、アリシアを落ち着かせるためだから仕方ない。そう言い聞かせる。自分に。
「そうですか……」
アリシアはホッとした表情を見せ、何故か横で狐々乃月がショボンとした顔をしていた。
なんだどうした。
「それに、この本を用意したのリリスだから」
アリシアが話を聞いててくれるこのタイミングで、真実を告げる。
弁解のチャンスは逃さない。
その一言で我に返ったのか、アリシアと狐々乃月は揃ってリリスを見た。
ついでにこっちからも非難の視線を投げつける。
「あらあらぁ、そんな目で見ないでよぉ」
困ってなさそうな声で、困った顔をする。
この人全然悪いと思ってないな。
「分かったわぁ、私が悪かったわよぉ、勝手にえっちぃ本置いたりしてぇ」
と思ったら、意外と素直に謝ってきた。
などと思ったのもつかの間。
「次は勝手には置かないわよぉ。ちゃぁんと好みのものを用意してあげるからぁ、どんなのが好みか言ってちょおだいなぁ」
「え?」
再び、全員の視線がこちらに集まった。




