53:2人目のメイド
jaはヤーと発音します。肯定の意味です
「ハジメマシテ、いであト申シマス」
淀みない筈なのに妙に片言ちっくな喋り方で、そのメイドはイデアと名乗った。
お辞儀と共に、短めに揃えられたエメラルドグリーンの髪が揺れる。
「はじめまして、名乗りたいところだけど、申し訳ないことに名前をいまはちょっと持ってないんだ」
こんな断りを入れる自己紹介は言うのも聞くのも始めてだ。いるのかな、こんな自己紹介する人。
「ja、存ジテオリマス」
イデアは貫くような視線を向けつつ答えた。
珊瑚の海をイメージさせるようなその目はとても綺麗なんだけど、機械のような冷たさがある。見られているというより、視られているような。
イデアはアリシアとは違い、裾の短いスカートを穿き、太ももの真ん中くらいまで届く靴下――つまりはニーソックス――を履いている。上も鎖骨が露わになるほど胸元が開いていて、かつ半袖だ。簡単に言うと露出が多い。
滑らかな鎖骨とか、すらっとした二の腕とか、白く輝く絶対領域とか、そういうフェチズムを感じさせる要素がそこかしこに散りばめられている。
健康な年頃の男子なら生唾ものの服装で、かつイデア自身も間違いなく美人の部類に入るバランスのいい顔をしており、胸は控え目なものの無駄のないスタイルをしている。胸のあるなしで優劣を決めるという思考は持っていないので、微乳でも個人的には全然アリだ。
しかし、何故か違和感がある。
まるで、ロボットやフィギュアを見ているような感覚になる。
整いすぎていると言うべきなのか、とにかく人間味というものが目の前の女性からは感じられなかった。
「アンマリじろじろ見ナイデクダサイ、コノDT野郎」
「えっ?」
いまとんでもない台詞が聞こえた気がする。
空耳……かな?
思わずイデアをジロジロと見てしまう。
「イイ加減ニシナイト、オ金取リマスヨ?」
空耳じゃなかった。
機械音声のような喋り方で暴言を吐かれてしまった。
まぁ全身余すとこなく見てたのは事実だけど。
「まぁまぁイデア落ち着いてぇ。ほらぁ、思春期の男の子なんだからぁ、許してあげてぇ」
横でフォローになってないフォローをリリスが入れた。
「分カリマシタ。溢レル性欲ヲ童貞ニ制御出来ナイノハ仕方ノ無イ事デス。甘ンジテ受ケ入レマショウ。タダシ、私ニ手ヲ出シタラ、モギマス」
「何処を!?」
一瞬想像してしまって、涙目になってしまった。ウチの子もすっかり縮み上がってしまっている。
「何をほざいてるんですか! これは私のものです! 貴方達には手出しさせませんよ」
アリシアが前に出て主張する。いや、アナタのものでもないですからね?
「あらぁ、モテモテねぇ」
人の悪い笑みを浮かべて、リリスが愉しそうに笑う。
「片方はもごうとしてるんですけど!?」
当事者の身からしたら笑い事じゃすまない。
「さすがにそれは冗談よぉ。ねぇ、イデア?」
「エ……? ア、ソウデスネ。冗談デス。うぃっとニ富ンダゆにーくナじょーくト言ウヤツデス」
「いま明らかに冗談じゃなかったって反応したよ!」
「ソレモ含メテ冗談デス」
「うむむ」
そう言われると言い返しにくい。
ただ、本気だったと訂正されたほうが嫌だ。本当に冗談であってほしい。
「大丈夫です、御主人様。御主人様の子種は私が命を賭して守りますから」
いい笑顔でサムズアップをするアリシア。
「女の子が子種とか言わない」
というツッコミもなんのその、アリシアは頬を赤くしてモジモジしながら、
「そ、それで守りきった暁には、私に少々分けていただければ……」
「アウトォォォォォ!!」
とんでもない爆弾発言をかましたのだった。
カタカナ台詞は書きにくいし読みにくいですね




