52:メイドスキルと人格は反比例する
「おはよーさん」
トイレに行ってみるとロリBBAもとい狐々乃月がいた。
どうやら彼女も用を足しに来たようだ。
「うん、おはよう」
当たり障りのない挨拶を交わし、トイレへと入っていくところで。
「自分、なんかあったんか?」
狐々乃月がこちらをジッと見ながら聞いてきた。
その目は注意深く何かを観察するような鋭さがあった。
「え? いや、特には。まぁアリシアには襲われかけたけど」
「襲われって、ホンマあの子は無駄に行動力あんな。まぁええわ。他にはなんかないん?」
「他? うーん、何って言われてもさっき起きたばっかだしなぁ」
「ほーか。まぁ思い当たらんのならええわ。邪魔したな」
狐々乃月はいまだ納得していないような顔をしながらも、トイレへと入っていった。
「なんだったんだ?」
考えてみても思い当たることがないので、その疑問はトイレで一緒に体外へ出してしまった。
トイレから出ると狐々乃月の姿はなく、女の子のトイレ事情を深く考えるのもさすがにどうかと思うので、そのまま部屋へと戻った。
「あ、御主人様おかえりなさいませ。お顔をお拭きする為のタオルをご用意しておりますが、お使いになられますか?」
見ると湯気を立たせた暖かさそうなタオルがアリシアの手に持たれていた。
まさかトイレに行ってる間に用意したのだろうか? いや、きっと最初から用意はしてあったのだろう。ちょっと寝起きに襲われかけたことで周りを見る余裕がなかったから見落としてただけで。
「うん、じゃあ使わせてもらうよ」
タオルを受け取ろうと手を差し出すと、アリシアは困った顔つきになり、
「いえ、私がお拭きいたしますので、ご主人様はどうぞベッドにお掛けになってください」
「えぇ、いいよ。顔くらい自分で拭くってば」
「そんなこと仰らないで下さい」
ウルウルと瞳を潤ませて訴えてくる彼女に抵抗の意思が、罪悪感という色に侵食されていく。
「はぁ。分かった、お願いするよ」
簡単に負けた。毎度思うけど、アリシアのこの行動はズルイ。勝てる気がしない。わざとだろうが天然だろうが、男の身で美少女に懇願されたら断れるわけはないのだ。
「はいっ、有難う御座います!」
そしてこの笑顔である。 まさに完敗を喫した瞬間である。
許可を出してしまったので、大人しくベッドに座り、なすがままに顔を拭かれる。
温かいタオルと、強すぎず弱すぎずの絶妙な力加減とで、マッサージされてるような気持ちよさを感じる。
起きたばかりなのに寝てしまいそうだ。
「はい、これで大丈夫です。ふふ、男前度が更に上がりましたよ。では次は御髪をお整えしますね」
アリシアは何処からともなく――スカートの中からに見えた気がするけど――櫛を取り出すと、何か言う間もなく背後へと回った。
そしてこれまた上手な手つきで髪をすいていく。
本当にアリシアはメイドスキルは高いよね。かなり色々助かってしまう。襲うのは勘弁して欲しいけど。
なんとなく和やかな雰囲気が流れる。
「あらあらぁ、いいご身分ねぇ」
しかしその雰囲気をぶち壊すかのように、エロい声が真正面から聞こえた。
「あ、リリス」
入り口にはリリスが相変わらず真っ黒い服装をして立っていた。
「と……どちらさま?」
そのリリスの隣、やや後ろに控えるようにメイドが立っていた。
え、メイド2人目?




