4:嘘の理由
「魔女?」
「そ、魔女ぉ。分かるぅ?」
「言葉の意味なら」
もしくは言葉の意味しか分からない。
「その魔女がどうして」
どうして、それは自分の現状も含めての言葉だ。
「理由は色々あるんだけどねぇ」
リリスと名乗った自称魔女は、そう前置きし、
「とりあえずぅ、いま貴方に対しては医者なのよぉ」
どういうことだ?
更に意味が分からなくなった。
「不思議そうな顔してるわねぇ」
「それはそうですよ。分からないことだらけですから」
リリスはこちらの返答に少し目を丸くし、クスリと笑った。
「やっぱり、なーんにも覚えてないのねぇ」
やっぱり?
いまやっぱりって言ったか?
そもそもリリスに記憶がない事は伝えてないし、
やっぱりというならこの記憶喪失はなるべくしてなったものだということだ。
「やっぱりって、どういうことですか」
「んー、知りたぁい?」
「そりゃあ知りたいですよ」
「んふふ、どうしようかしらねぇ」
「教えてくれないんですか?」
「そうねぇ、教えてあげたいのは山々なんだけどぉ」
リリスは愉しそうな、あるいは人の悪い笑顔を浮かべた。
「私、知らないのよねぇ。なぁーんにも」
嘘だ。絶対知ってる。100%知ってる。知らないわけがない。
断言できる。そういう反応だった。
しかし何故教えてくれないのか。
最有力なのは、単純に性格が悪いから。意地悪で教えてくれない。
次点で、教えたくないのではなく、教えられないから。
なんらかの理由で教えることが出来ない為、はぐらかしていることも考えられる。
リリスにとって都合の悪い記憶が喪われているとしたら、記憶を戻す手伝いのような真似はしないだろう。
最後に、本当に知らない場合もある。
まぁこれはほぼ確実にないだろうけど。
あるとしたら、ハッタリを聞かせることで優位に立とうとするくらいか。
なんにせよ、ここでは無理に問い詰めても教えてくれない線が濃厚だ。
なら、質問を変えて攻めるほうが得策な気がする。