41:幼女観察
「? そんなことないで。ウチの両親は生粋の日本人やし、ウチも混じりっけなしの日本人やで」
「え?」
そんなバカな。
狐々乃月の髪は染色では出ないと確信できるほどに色ムラの無い綺麗な白だ。光の当たり具合で少し輝いてすら見える。
ここで改めて狐々乃月の外見を観察してみる。
髪は長く、後ろは腰くらいまではある。もみあげは胸辺りで折り返されてつむじの後ろで止めてあり、前髪はいわゆるパッツンだ。身長は低く、多分150もないだろう。体型もそれにあわせて、というか全体的に細い。前面部もストンと落ちている。引っ掛かりなど無い。とは言え痩せ細っているイメージは無い。健康さを感じるほどには肉付きはいい。この辺はさっきの半裸シーンを思い出しています。
ざっとこんなもんだろうか。
あと特徴的なところといえば、頭のてっぺんにうさぎの耳みたいに立っている髪だろうか。寝癖か、セットか分からないけど、ぴょんと髪が2房立っている。思わず掴みたくなる。
「まぁ、確かにこの髪と目からしたら日本人には見えへんやろーな。けど、ウチ妖怪やしなぁ」
「え?(2回目)」
いま聞き捨てならないこと言わなかった?
「なんやの鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔して」
意外そうな顔をする狐々乃月なんだけど、いやいやいやいや!
「妖怪? いま妖怪って言わなかった!?」
「へ? 言うたけど。なんでそんな驚いてんの? リリスとアリシアに先に会うてんのやろ? あ、でもリリスは姿かたちはまるっきり人間か」
さらに衝撃の事実発覚。
「え、えぇと?」
ギギギとアリシアに首を向けてみると、非常にバツの悪そうな顔をしていた。
「なんや、聞いてへんのかい。アリシアは――むぐっ」
「コーコーノーツーさーん? ちょおっと黙っててもらえますぅ?」
目にも止まらない速さとはこのことか。
アリシアは視界から消えるほどの速度で動き、いつの間にか狐々乃月の口を両手で塞いでいた。
「んーんーんー!」
狐々乃月がジタバタと手足を動かし抵抗するが、アリシアの口を塞ぐ手はビクともしない。力強いんだよな、アリシア。
「だぁっ」
思いっきり後ろに跳んで逃げることで、どうにかこうにか狐々乃月は呼吸の自由を得る。
「はーっはーっ、し、死ぬか思った」
顔を真っ赤にしながら、酸素を取り入れている。
「分かった、話さへんから! もう堪忍して!」
なおも飛びかかろうとするアリシアを手で牽制しつつ、狐々乃月は白旗を振る。
「わ、分かっていただけたのならいいんです」
言質をとったことで、アリシアも落ち着いた佇まいを取り戻す。
心なしかまだ息が荒い気もするけど。
正直、アリシアがなんなのか、台詞の続きが気になるけど、聞いてしまったら無事ではすまないという予感、もとい確信があるため聞こうにも聞けない。
「えぇと、なんやっけ。あぁ、ウチが妖怪とかって話やんな」
露骨にアリシアの話をなかったことにし、自分の話に戻す狐々乃月。
だが、それを責めることは、自分の命が可愛い以上は出来ない。
「そうだね。いきなり妖怪って言われても、ちょっと処理しきれないんだけど」
「いきなり、うん、いきなりなぁ。まぁいきなりってことでええか」
狐々乃月はアリシアの様子を伺いながら言葉を濁す。
「まぁ見たら分かるやろ、ほれ」
そう言うと、狐々乃月はさっと後ろを向いて、お尻をこちらにつきだした。
小ぶりで真ん丸い可愛らしいお尻がまるで誘惑するように左右に揺れている。
え、なにこれ? 触っていいの?
しかし次に目にしたもののせいで、その思考は彼方に追いやられた。
「え、これは……」
お尻のちょっと上、巫女服の袴の隙間からぴょこんと飛び出ていたのは、
「尻尾?」
白くてふさふさした動物の尻尾だった。




