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Hollow cathedral  作者: 林檎亭
第1章 目覚め
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39:幼女登場

 また扉を開けて余計なイベントが起こってしまうのを回避するため、扉を開けるのはアリシアにお願いした。

 どうやら知り合いみたいだし、という理由もある。


「いいですよ、わざわざ謝らなくても」


 と、最初は渋ったけど、更にお願いすると折れてくれた。

 早々に苦労をかけることになって申し訳ない。

 アリシアは丁寧にノックをすると、気安い口調で声をかけた。


「入りますよ? いいですか?」


 数秒待つと、


「アリシア? アリシアだけ?」


 躊躇いがちに返事があった。


「いいえ、御主人様もご一緒です」


 室内から息を呑むような雰囲気があった。


「――あいつか。じゃあちょお待っててーな」


 何か言いかけて、止めた。そんな間があった。

 あと、関西弁ぽかったな。

 何分か待つと、扉の向こうから声が掛かった。


「もうええよ、入ってきー」


 では、と遠慮なく扉を開け放つと、そこには幼女が偉そうに立っていた。

 さすがに半裸ではなく、服を着た状態で。

 白と赤を基調とした和装で、巫女っぽいというとイメージが伝わりやすいと思う。

 アリシア同様、無駄に露出の多い改造服ではなく、肌はほとんど隠れている。

 その巫女服に身体を包んだ幼女は腕組みしながら見上げてくると、まずアリシアに尋ねた。


「アリシア、やっぱり?」


 そして目線だけこちらに向けてくる。


「はい、魔女の言うとおり記憶を失っているようです」


「ふんっ、まぁそやろな。ウチを見ても反応おかしかったし」


 どうやら大変不機嫌な様子だ。

 そしてこちらを睨みつけたまま押し黙ってしまった。

 これ、何か言った方がいいのかな?

 とりあえず、さっきの謝るか。


「えぇと、さっきはゴメンね。着替え覗いちゃって」


 軽く頭を上げて先程の失態を詫びると、何故か幼女の機嫌が更に悪くなった。


「いや、つい部屋を間違えちゃって。本当にゴメン」


 思わず言い訳を挟みつつ更に謝ってしまった。

 だって、目つき怖いんだもん。

 狐みたいに釣りあがった目に、心を射抜くような深紅の瞳。

 それが容姿以上にプレッシャーを与えてくる。


「御主人様の仰っていることは本当です。単純に間違えただけなので、許してはくれませんか?」


 固まる空気に対し、アリシアがフォローを入れてくれる。

 あぁ、ありがとうアリシア。

 その甲斐あってか、幼女は大きな溜め息をつくと、


「はぁ、もうええわ。にしてもアリシア、ホンマに御主人様って呼ぶようにしてんな」


 呆れるような目でアリシアを見た。


「えぇ、そう決めていましたから」


「まぁいつもいつも口癖みたいに恩返しを口にしてたんやし、ええんかもしれんけどな」


 そして諦めたように、再び大きな溜め息をついた。


「んで、アンタはホンマにウチのこと見ても何も思い出さへんのか?」


 幼女が強い目線を送ってくる。


「うん、ゴメン。本当に何も覚えていないんだ」


「なんも?」


「なにも」


 念を押されても、覚えてないものは覚えてない。


「本当に何も一切合切覚えていませんよ。私も魔女もですが、彼女のことも覚えてないんですから」


 彼女?

 いま非常に気になるワードが出た気がする。

 幼女も、それを聞いたことで観念した風でもある。

 アリシアはそれ以上話す気はないみたいで、口を開く様子はなかった。

 じゃあこちらから聞いてみるか、と思ったところで幼女がそれを遮るように口を開いた。


「じゃあ自己紹介からしよか。アンタ、名前は?」


 自己紹介って、切り出したほうから名乗るものなんじゃ。

 まぁいいけど。


「いや、名前はまだないよ。誰も教えてくれないし、自分でもまだ名付けられてない」


「そーか。やっぱそうやんな。まぁええわ。じゃあ、ウチの名前だけ言うとくわ」


 幼女は思わせぶりに呟くと、更に胸を張って(張るほどの胸はないけれど)、


「ウチはココノツ。月の狐と書いて狐々乃月や」


 高らかに名乗った。


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