37:鈍感でいこう
どうにかこうにか自分の中に生まれつつあった勘違いという名の暴走機関車を止めることに成功した。
自身への極めつけの一言は「アリシアの好意は過去の自分から」である。
さすがに今はアリシアの厚意を疑ってはいないけれど、好意となれば別だ。
初対面で好感度ゲージ振り切ってるとか有り得ない。
前の自分とアリシアは恋人かもしくは片思いか、多分それくらいの関係ではあったんだろう。それが今も尾を引いている。
そう、フィルターがかかっているのだ。
なので、決してその好意を受け入れてはいけない。
いま受け入れるのは厚意だけ。
自分の心に念を押して言い聞かせる。
「ふぅ」
落ち着いた。
まったく、手こずらせてくれるよ。
しかし、これにて精神的なレベルは急上昇したはずだ。
レベル1くらいだったのが、いまの経験値でレベル5くらいになったんじゃないだろうか。
これなら、大丈夫。安心安全だ。
もう何も怖くない!
「えぇと、大丈夫ですか、御主人様?」
アリシアの心配そうな上目遣い!
勘違いメーターに999のダメージ!
「ぐはっ」
息が掛かるような距離まで迫ってきたアリシアによって、精神に大きなダメージを受けてしまった。
効果は抜群だ!
くそっ、誰だよもう大丈夫とか言ったの!
一気に持っていかれそうになったじゃないか!
でも、あれは卑怯だ!
想像して欲しい。美少女の顔がすぐ近くまで来て、心配そうな目線が重なり合う様を。
こんな超威力の攻撃をされたらたまったもんじゃない。
なんなら勘違い列車が暴走して抱きしめるくらいしてしまいかねない。
さすがにキスは出来ない。そんな度胸はない。
だが、レベルが上がったばかりなのが幸いした。
もはや精神力は虫の息だけど、まだ撃沈まではされていない。攻略ともいう。
まだ勘違いせずに済んでいる。
ビバ鉄の意志。
思春期男子のチョロさと疑心っぷりを舐めるなよ!
いま自分が何歳だか知らないけど!
「どうされたんですか、御主人様?」
硬直したままなことを不思議に思ったんだろう。
アリシアが再度尋ねてくる。
「う、うん、なんでもないよ。大丈夫。本当になんでもないんだ」
完全になんでもなくない口調だったけど、アリシアはそれ以上は追及しないでくれた。
「と、とりあえず部屋に戻ろうか」
心を落ち着かせつつ、アリシアに背を向けて歩き出す。
ちょっと手足の挙動がぎこちない気がする。
この時、手足を左右同時に前に出して歩いていたのだけれど、余裕を失っていたせいで全然気が付かなかった。
「あ、御主人様――」
ついでに言うと、アリシアが何か言っていたのもよく聞き取れていなかった。
早く部屋に戻って一息つこう、それが脳の大半を占めていた。
「――。――っ」
アリシアが慌てたように声を上げ近寄ってくる。
なんあんだろう?
とりあえず、部屋に入ってからちゃんと聞くとしよう。
そう思って、目の前の扉を勢いよく開けた。
その時、ようやくこの役立たずの耳は機能を取り戻した。
「御主人様! そこは違う部屋です!」
「へ?」
驚きの間抜け声を出した先、扉の開け放たれた病室の中には、
半裸の幼女が立っていた。
※この作品に登場する人物は全て18歳以j(ry




