30:異能の発現
アリシアは胸いっぱいに息を吸う。
ただでさえ細めの柱が胸の間をスラッシュしているのに、息を吸って胸が膨らんだことで、さらにその大きさが形が強調される。
まさかあれがアリシアの奥の手か!
確かにあんなことをされては目が釘付けになってしまい、こちらが無防備になってしまう。
例えどれほど警戒したとしても無意味。
その暴力的なまでの魅力を持った膨らみは、どんな覚悟を持ったとしても回避は不可能。
息を限界まで吸ったアリシアは、それを開放すべく大きく口を開けて、力いっぱいに叫んだ。
しかし、何も起こらなかった。
なんなら声も出てなかった。
叫んだポーズだけで、息だけが吐き出された。
「え、なんで?」
アリシアは何かをしようとして失敗したみたいで、かなり動揺している。
「私が対策とってないわけないでしょぉ?」
対してリリスは余裕の笑みで腕を組んでいる。
「えーと、何がどうなったの?」
こっちとしては頭っから分からないことばかりである。
「んーとねぇ、アリシアちゃんが切り札を使おうとしたんだけど、それがなぁんにも起こらなかった、いいえぇ、起こせなかったのよねぇ」
「何を、したんですか!」
「それを教えてあげるほど私はお人よしじゃないわよぉ。教えちゃったら対策練られちゃうじゃなぁい」
それは至極最もだ。
漫画やゲームで、こういったシーンでわざわざそのシステムを解説してくれる悪役がいるが、普通は教えないだろう。
まぁあれは読者や視聴者に説明してるんだけど、現実ではそんな相手なんていない。
それを説明してしまえば、相手が対処法を考えてしまうのだから、教えるデメリットはあってもメリットはない。
「くっ」
アリシアが平たい表面をした柱を見ながら悔しそうに呻く。
「さぁて、もういいかしらぁ? ほぅら、謝るお時間よぉ」
「だ、誰が!」
切り札が使えなくはなったけど、アリシアは頑として謝ろうとはいない。
いや、オバサンって言ったことくらい謝ればいいのに、と思わなくもない。
けそ、そういうことじゃないんだろう。
単純に、リリスに頭を下げるのが嫌なんだろうな。
かなり嫌ってたし。
「もう強情ねぇ。じゃあ仕方ないわねぇ、これでもまだ嫌って言えるかしらぁ」
リリスはそう言うと、身動きの取れないアリシアのスカートの中に手を突っ込んだ。
「えぇ!?」
「な、なにを!」
本当に何をする気だよ!
こっからはスカートの中はよく見えないけど、スカートの中に手を入れてすることが、まともなことであるはずがない。
今からでも移動して、スカートの中が見える位置に行くべきだろうか、って違う!
さすがに何をするにしても止めるべきだろう。
「別にぃ、ブーツを脱がせてあげるだけよぉ」
え、ブーツ?
「えっ、や、やめてっ」
珍しく、いや珍しくってのも失礼だけど、アリシアが嫌がった。
あれほどエロいことに積極的だったアリシアが素足を晒されることを嫌がる、むしろ怯えてさえいるようだった。
「んーふーふー、どぉしようかなぁ」
するするとブーツの紐が解かれていく、ようにこっから見える。
「や、やめなさい、この魔女!」
心なしかアリシアの抗議の声が弱い。
それは本当に怯えていると表現するにふさわしい声音だった。
しかし、リリスはその声に耳を傾けることなく紐を解いていく。
紐が解かれていくにつれ、アリシアの表情は泣きそうなものになっていく。
「リリス! もうその辺にしてくれないか? ほら、アリシアも嫌がってるし」
自然に声が出た。
さすがにあんな泣きそうな表情をされては、見てるだけだったこっちも相当に辛い。
リリスが手を止めてこちらを見る。
「嫌よぉ。折角だからぁ、力関係っていうのをぉ教えてあげるのよぉ」
リリスは性悪な笑みで口元を上げると、もう一度ブーツに手を伸ばした。
もう紐はほとんど解けていて、あとはブーツを引っ張れば脱げてしまいそうだ。
アリシアは涙を溜めた目ででこちらを見て、
「いやぁ、見ないで、御主人様……」
涙交じりの声で懇願した。
その言葉を聞いた瞬間に駆け出した。
そして、叫ぶ。
先程、アリシアがしたように目一杯息を吸い込んで、腹の底から搾り出すように叫んだ。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
すると、なにがどう作用したのか、自分を始点に地面に亀裂が入り、凄まじい勢いでリリスに襲い掛かった。
亀裂が到達すると同時、リリスは弾かれたように吹っ飛び、アリシアを拘束していた柱も粉々に砕け散った。




